シングルを卒業(12)|恋愛ドクターの遺産第5話

「では、この緑色のひんやりずっしりて、モチモチしたエネルギーをこうして両手に持ったまま、」そう言いながらドクターは「その世界」の方へと近づいていき、さらに言った。「その世界に入っていったとイメージしてみてください。」
「はい。」意を決したような表情で、みさおも、そのエネルギーを両手に持って、さきほど「過去の世界」とドクターが示した方に近づいていく。イメージの中では本当に過去の世界に入っているのだろう。表情が少しだけこわばっている。しかし、一回目とは明らかに違う。目つきにも、表情にも、どこか強さがある。
「そして。」ドクターが言った。「このエネルギーを、過去のみさおちゃんに、こうしてあげてください。こんなふうにして、エネルギーをかぶせてあげます。」そう言いながら、手のひらに乗っているエネルギーを「ふわーっ」と広げて目の前にいる何かにやわらかくかぶせるようなしぐさをした。
「はい。」みさおも、真似をして手のひらに載っている「エネルギー」を「ふわーっ」とかぶせるしぐさをした。その瞬間、少し固かった表情が安心感にあふれ、涙が一筋流れた。
「過去のみさおちゃんに、何か言ってあげたいことや、やってあげたいことはありますか?」ドクターが質問をした。
「ええと・・・これが欲しかったものだと思います。この安心感をあげられたのが嬉しい・・・よかったです。」
「そうですか。では、その、安心感に包まれた子どものみさおちゃんがどんな風に感じているのか、いま実際になってみて、体験してみたいと思いますか?」
「ええと・・・すでに何だか体験したみたいな感じです。」
「なるほどそうですか。今から『みさおちゃんになってみる』というワークはとくに必要ない、ということですかね?」
「はい、大丈夫です。」
「では、元の世界に戻ってきてください。」そう言いながら、ドクターも、場所を移動して(いま『過去の世界』に近づいていたのだ)、元の自分の椅子に戻って座った。
「はい。」みさおも『過去の世界』から離れて、元の自分の椅子に戻って座った。
「おつかれさまでした。」
「はい、ありがとうございました。」
ふう。と一息ついてからドクターは最後の仕上げに入った。確認作業だ。「では、もういちど、過去の世界に近づいてみてください。」先ほどと同じようにのぞき込むようなしぐさをした。
「はい。」みさおも過去の世界に近づいた。
「どんな感じがしますか?さきほどは、とても緊張した、重苦しくて痛い世界でしたよね?」
「まだ、その感じは残っています。でも、始めと比べて、全然よくなりました。全然楽です。」
「それはよかった。取り組みを続けていけば、さらに良くなっていきますよ、きっと。」
「そうなんですね。」急に声が明るくなって、みさおは言った。

もう一度自身で深呼吸してからドクターは言った。「このワークは、じわじわ効くものです。まあ初回は大きく変化した感じがするかもしれませんが。」
「はい。びっくりしました。」
「できれば毎日、こうやって過去のみさおちゃんにエネルギーを届けてあげてほしいのです。」
「はい、やってみます。」
「毎回同じエネルギーだと、次第に変化が小さくなっていきますので、エネルギー源を探す方もやってみると、効果がさらに高まります。」
「どうやって探すのですか?」
「職場でもいいし、友達でもいいですから、人を大切にしていて公正さ、公平さを持っているような、そんな人をよく観察してください。そして、そのような人を見ているとどんな感じがするか、感情をしっかり感じて覚えておくこと。それが『エネルギー源の開拓』です。」
「なるほど・・・観察するのですね。」
「そうです。」
ドクターは椅子から立ち上がりながら言った。「では、今日はここまでとしたいと思います。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」

(つづく)

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