呪い(19)|恋愛ドクターの遺産第9話

「さて、ではここで、」改まった調子でドクターが言った。「本当のセッションでは、私はクライアントに推定原因として、何と伝えたかを発表したいと思います。それは・・・」
一同固唾を呑んで、発表を待った。

「それは、『呪い』です。」

「えっ?」
「えぇっ!?」
「ええええええええーーーーーーっ!?」
セラピストチームのメンバーはそれぞれに声を上げてしまった。最後に一番大きな声を上げたのはなつをだ。湯水ちゃんはおかしそうにクスクス笑っている。
ドクターは平然と話を続けていく。「ところで湯水ちゃん、のりこさんとして提案を訊いていましたよね。どう感じましたか?」
「ええと、やっぱり、呪いだと思ってきたのに、『偏頭痛』とか普通のことを言われて、自分の悩みを『大したことない』って言われたように感じました。」
「なるほどね。」
「あとは、解決方法が『頭痛薬を飲む』ということだったのですが、たったそれだけ?と感じました。呪いを解く方法を思いつかなかったので、仕方なく対症療法的に頭痛薬を飲むしかないよ、と言われているように感じました。」湯水ちゃんは、先ほどまで一生懸命セラピストを務めたなつをのほうをちらっと見ながらそう言った。
「なるほど・・・確かに、頭痛薬という提案が名案のようには聞こえなかったですね。」ドクターも意見に同調した。
「それと、色々質問するたびに、必死に答えてくれるのですが、一生懸命だからなのか、それとも何かを必死にごまかしているからなのか分からないな、と感じました。まあ、クライアントとの信頼関係が出来ていれば一生懸命だと解釈してもらえるとは思いますけど、必死な感じが出ているのは、あまりプラスにはならないと思いました。」
「だってそれは・・・」私なつをがそう言いかけたとき、ドクターが割って入ってきた。
「なつを君、伝える立場としては、どうでしたか?」
「ええと、とにかく緊張しました。呪いだと信じてきたクライアントに、違うと伝えなければならないので。それに、説明しなければならない内容がたくさんあって、間違えずに伝えなければ、というプレッシャーが非常に大きかったです。本当に汗びっしょりでした。」
「今回、セラピストチームは、原因として偏頭痛、そして呪いの症状と思われていた『紫色のぐるぐる』も『閃輝暗点』という偏頭痛の前兆として説明可能である、と推論したわけです。また、クライアントにも真実を告げるという方針で臨みましたね。」
「はい。結構大変でした。」
「では、私がセッションを実際に行ったときには、どんな風に進めたか、それを説明したいと思います。」

 

第五幕 告知

・・・5年前のドクターのオフィスにて・・・
「先生、こんにちは。」心なしか、前回より少し元気な様子で、のりこが入ってきた。
「のりこさん、こんにちは。今日もよろしくお願いします。」
「よろしくお願いいたします。」
のりこが着席すると、早速ドクターは本題に入った。
「実は、原因は頭痛ではないか、という線で調べていたのですが、その可能性もありそうではあるのですが、本当の呪いであるという可能性も、否定できなかったんですよね。」
「はぁ・・・やっぱりそうなのですか。」のりこはがっかりしつつも、どこか納得したような表情をしている。
「ですので、解決の方針も、両睨みで行きたいと思います。」
「両睨み・・・と言いますと・・・」
「ええ、つまり、もし、原因が頭痛であっても、呪いであっても、どちらでも通用する解決策、ということです。」
「そんな解決策、あるのですか?」のりこは驚いた様子だ。
「ええ、ありますよ。」ドクターは、突拍子もない提案をするときにはいつも、とても軽い調子で言う。今回もそうだった。まるでとても簡単であるかのような調子で言った。
しばらく沈黙があって、ドクターが口を開いた。「実は、頭痛や吐き気といった、身体症状が出てしまうと、精神力が弱ります。これは、身に覚えがありますね?」
「はい。なんだか伯母の呪いの力に入り込まれてしまうような感覚になります。」
「そうですよね。呪いと言っても、人間が起こすもの、そして受ける側も人間です。だから、精神状態をしっかり整えておくと、呪いの影響を軽くすることができるのです。」
「その方法を教えて下さい!」
「ええ、簡単です。予防的に頭痛薬を飲む。これだけです。」
「えっ?頭痛薬、ですか?飲んだことあるのですが、あまり効かなかったのです。」
「ええ、そうおっしゃると思いました。『予防的に飲む』ということが大事なのです。」
「予防的に・・・というのは、どういうことでしょうか?」
「頭痛が出る前に飲む、ということです。」
「でも、いつ出るかなんて・・・」そう言いかけてのりこは「あっ」と声を上げた。
「そう、いつ出るかなんて、前兆のない頭痛なら、分かりませんよね。でも、その『呪い』の症状があるおかげで、頭痛が来る前に知ることが出来ていますよね?」
「そうですね!」のりこは何だか嬉しそうに、力強く答えた。
「そうすると、予防的な頭痛薬の飲み方が出来ます。すると、呪いの攻撃の後、頭痛になって、さらに伯母様の負のエネルギーに入り込まれる、ということをブロックしやすくなります。」
「なるほど・・・呪いを頭痛の前触れとして利用するわけですね。なんだか面白くなってきました。」
「それに加えて、前回から使っている『けのろい』を活用して、実際の伯母様から受ける精神的ストレスを減らす、ということができれば、今ののりこさんでも、伯母様の呪いを跳ね返すだけの心の強さを持つことが出来ると思います。」
「はい、何だか希望が出てきました。予防的な頭痛薬、飲んで伯母に負けないようにします!」

 

・・・場面は戻って、合宿の会場・・・
「というわけでした。長ったらしい説明とか、怪しみたくなるほどの真剣さなどが一切なく、クライアントも説明をすっと受け入れていましたよね?そして結局、頭痛薬を飲ませることにも成功しています。」

(つづく)

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