人生相談は、多くの人の興味のあるテーマですので、テレビでもみのもんたさんなどが、電話で人生相談をされていたりします。良いアドバイスもあるでしょうし、悩んでいる人にも目を向けるという番組としての姿勢も大切なものだと思います。
ただし、カウンセリングは、あのようなものとは違います。もちろん、この知識があればこの人は前に進めそうだと思えば、具体的なアドバイスをすることもあります。
でも、カウンセリングでは説教をしたり、叱ったり、諭したりはしないのです。まあ、私は少なくともやりません。一般的にはこうやるとうまく行くことが多いですよ、という話はしますが、それを採用するかどうかは、あくまで本人が決めることです。
カウンセリングでは、カウンセラーは話を聴く側です。とりとめのない話や、あちこちに話題が飛ぶ話、中々本題に入らない話など、色々ありますが、とにかく聴きます。それが必要なプロセスであるからです。
あと、常識を教えるみたいなことは絶対にしません。暴力的な彼氏がいたとして、彼との関係に悩んでいた方が相談に見えたとします。「そんな彼やめた方がいいよ」「そういう人は絶対に変わらないから」こういう言葉は、友達や身の回りの人に言われているに決まっているんです。カウンセラーがそれと同レベルの対応をしていては、プロとは言えません。
私の場合は、どうしているかというと、まず、「この人は、『そんな彼やめた方がいいかも』と心のどこかで思っているはずなのに、それでも別れないのは、どんな気持ちがあるからだろう」と自問します。そして、興味を持って話を聴くのです。
いきなりアドバイスをする人の陥っている間違いは、こうして悩んでいる人の心の底にある気持ちを分かってあげていないことです。少なくとも、悩んでいる本人が「分かってもらえない」と感じてしまっています。たとえ今は暴力的かもしれないけれど、一度は好きになった相手のことを「やめたほうがいいよ」「変わらないよ」と悪く言われる辛さを、一緒に分かってあげることが必要なのだと思います。
早急な結果を求めれば、結局「別れた方がいいよ」というアドバイスになります。結論としてはそれで正しいかもしれません。実際私も「一般的には、そういう人とうまくやるのは難しいんですよね」と、それとなく難しい方向に進んでいることを伝えることはしています。
でも、本人が心から納得して前に進まない限り、本人の心が置き去りになります。
私のカウンセリングの事例では、暴力的な彼や、浮気性の彼に悩む女性の「どうやったらうまくいくか」という相談に対して、カウンセリングの時間いっぱい、どうやったらうまく行くかを一緒に考えたという事例がいくつかあります。別れなさいとは一切言いません。でも、結局後日、「別れました」という報告が来たりするのですが。
みんな、常識を教えることから入るから、本人が「私の気持ちを分かってもらえた」と思わないんです。すると、前に進めない。カウンセリングは、そうではなくて、「私が今まで頑張ってきたし、悩んできたことを分かってもらえた」そう感じて前に進む心の元気が出ること、それが大事だと思っています。
私の相談事例の中では、このスタイルはなかなかうまく行った例に入りますし、気に入っています。
何より、本人が、自分で納得して決めたことですから、一番いいんです。
それが、テレビの人生相談と、カウンセリングの大きな違いだと思います。