私は、多くの女性がブライダルエステを利用してきれいになってから結婚するのと同じように、多くの男女が結婚前に心のエステをして、心の中をきれいにしてから結婚する習慣ができたら素敵だろうな、と思っています。マリッジブルーになったときなど、実はむしろ心の浄化をするのに最適なときです。
私たちは、過去の感情をいろいろ溜め込んで生きています。たとえば、職場でケアレスミスから大きな失敗をして、上司ともども大恥をかいたとすると、書類のチェックとか予定のチェックにはとても神経質になるかもしれません。それが「学び」と「成長」ならよいのですが、ショックが大きすぎると「傷」になってしまい、その後の仕事や生活でミスを非常に恐れるようになります。
ここまでなら、自分だけの話ですが、こういう心を持っている場合、結婚相手のどんぶり勘定ぶり、チェックの甘さが目に付いてしまいます。本当は自分の心の中にある不安が原因なのですが、相手の行動が常に自分の心の傷に触れるので、しまいには相手に対して怒りを覚えるのです。
自分がどんな心の傷を持っていて、それに蓋をしているかは、普通に生活しているとほとんど気づきません。ですので、具体例を少し挙げてみたいと思います。
◆時間厳守。時間にルーズな人には腹が立つ。
私はこれでした。元々のんびりやだったのですが、親に叱られて時間厳守を身につけたため、その怖さ、怒りが、時間にルーズな人を見るたびに呼び起こされました。当時は、のんびりするためのデートでも、遅れた来た彼女に腹を立てていました。今は自分の心のクセに気づき、自分にのんびりすることを許可できたので、腹が立たなくなりました。
◆ぐうたらしている人を見ると、腹が立つ。
本当は休みたいときにも、無理して頑張らなければいけないという状況や、親の教えがあり、自分を偽って、頑張ることが大事、と無理に思いこんだ可能性があります。すると、自分がこんなに頑張っているのだからと、他人にも同じルールを押しつけてしまいます。
◆他人を利用している人を見ると、腹が立つ。
かつて、自分や親が、誰かに利用されて損をした経験があったり、逆に、損をしてはいけないという思いこみが強かったりした場合、あるいは、親が他人を利用していて、それを見ていてすごく嫌な気持ちを感じて育ったなど。確かに他人を利用するのはよくない行いですが、激しく感情が乱れる場合、あなた自身の心の傷が刺激されている可能性が高いのです。
◆声が大きい人を前にすると、萎縮してしまう。
これは、父親が大声で怒る人だったりすると、怖さが心に焼き付いていて、こうなることがあります。元々人間は大きな音に対して恐怖を感じるものですが、子供時代に何度も経験していると条件反射のように大声の人に対して恐怖が呼び起こされるようになってしまいます。
◆頼み事が苦手。
自分に自信がなかったり、人を頼ってはいけないという自分ルールを持っていると、こうなります。子供時代に家族にゆとりがなく、何でも自分でやらなければならなかったりすると、頼み事をすることに対して罪悪感を感じてしまう人間に育つことがあります。あるいは、母親がそういうパターンで頼み事のできない人だった場合、母親の考えや感じ方をそのまま受け継いでいることもあります。この場合はきっかけとなった傷は母親の中にあるのですが、その傷を引き継いだことになります。
◆休めない。
これも、頼み事が苦手、というのと似ています。休んではいけない。常に自分が頑張っていなければいけないという気持ちが強いとこうなります。休むことに対して、罪悪感を感じる出来事が、おそらくは子供時代にあったのでしょう。
◆他人が自分の元を去っていくのが怖い。
子供時代に孤独だったり、あるいは、親が罰を与えるときに「閉め出し」のような、孤独の恐怖を与えるような罰を与えてしつけ、温かく受け入れることをあまりしないと、このような恐怖を心に抱えたまま大人になることがあります。典型的な子供時代の傷です。
◆高い買い物をすることができない。
子供時代に家が貧乏だったり、激しくお金に苦労したことがあると、お金を使うことに対して罪悪感や不安が湧いてくることがあります。また、親がお金に苦労して、このような心の傷を持っていると、その傷を子供が引き継ぐことがあります。
◆お金を稼ぐことに、抵抗がある。
これも、高い買い物をすることができないのと根っこは似ています。但し、お金がなかったことが「悲しい出来事」だったら、上のようになるのですが、自分を正当化するために「お金は悪だ。うちは悪いものが少ないからよい」のような自分ルールを作ってしまうと、今度は自分がお金を稼ぐことに罪悪感を感じてしまいます。これも、本人の傷の場合と、親の傷を引き継ぐ場合があります。
◆その他、他人の行動を見て、不安になったり、腹が立ったりする。
どんなものであっても、他人の行動を見て、不安になったり腹が立ったりしたら、そこに心の傷があると考えてみることが役立ちます。いきなり殴られた、みたいな直接的な被害を受けるケース以外、他人の行動はあなたに大した害を及ぼしていないはず。でも、腹が立ったり不安になるとしたら、あなた自身の心の中に原因があるのです。それを探ってみる方が、相手を非難するよりもよほど自分の成長につながります。
このように、例を挙げればきりがないぐらい、私たちは傷ついた心を放置して、その傷に触れる出来事があると他人に腹を立てたりしています。当然ながら、結婚したパートナーは同じ傷を持つわけではありませんから、あなたにとって腹が立つ行為を平気でします。相手にとっては、それは何でもない行動だからです。
私が結婚前の心のブライダルエステとして、恋愛セラピーを受けたり、心理療法を学ぶことを勧める理由は、自分の心の傷に気づき、癒すことができれば、相手に腹を立てることや、相手を傷つける言動を減らせるからです。
手前味噌ではありましたが、願望を書いてみました。結婚前にお肌だけでなく、心の中もキレイにする習慣ができれば、幸せなカップルがもっともっと増えるのではないかと思っています。