人生脚本の書き換え方(提案)

 

 人生脚本は、私の経験から言うと、書き換えられる場合があります。たとえ100%確実でなくても、「幼少時に既に決まってしまって書き換えられない」という決定論的な考え方をするよりも、「人生脚本を書き直して、より幸せな人生を歩むことができる」という前向きな考え方の方が役に立つのではないでしょうか。
 そこで、このコラムでは人生脚本を書き換える方法について提案を書いてみたいと思います。
 

人生脚本とは

 
 まず、人生脚本とは何か、ということですが、人は幼少時に、自分で自分の人生の脚本を無意識に書くと考えられています。交流分析の創始者のエリック・バーンが提唱した理論です。
 この人生脚本に(無意識に)従って生きていくため、脚本が幸せでないものの場合、本人が意識的にどんなに努力しても不幸な人生脚本通りの人生になってしまう、という考えが「人生脚本」の基本的な考え方です。
 心理学用語集の記事人生脚本 【じんせいきゃくほん】も参照のこと。
 
 

人生脚本の書き換え

 
 人生脚本は潜在意識の中にあると考えられていますので、意識的に行動を変えるだけでは、なかなか書き換わるものではありません。人生脚本は「努力しても努力しても報われない」「成功しそうになるとトラブルに見舞われてどん底に落ちる」「大事なときになると病気になる」など、「意識的に頑張っているのに、うまく行かない」という形で具現化することもあります。
 この人生脚本を書き換えるためには、潜在意識にアクセスすることが必要になると私は考えています。いくつか、私が効果があると考えている方針を提案したいと思います。
 
 

物語を使ったセラピー手法

 
 人生脚本は物語です。ですので、セラピーの手法も物語を使うものを選ぶのは自然な発想です。たとえば、前世イメージ療法。前世が実在するかどうかは、ここでは脇に置いておきますが、前世誘導すると、潜在意識の中にある物語が前世として現れる傾向にあります。
 この物語を意識化することによって、風化させることもできます(カタルシス)し、もう手放すと宣言することもできます。
 別の方法としては、どうしても気になる物語(映画やマンガ、小説、ノンフィクションなど何でも良い)の登場人物をあげてもらい、自分の人生を重ね合わせていないかどうか考えてみるというもの。ある人物に無意識のうちに感情移入し、自分を重ね合わせていると、その人のような人生を歩むことは十分に考えられます。これも、意識化することによって手放すと宣言することができます。
 
 

感情を癒す

 
 人生脚本が物語だとしても、その物語が生々しく心の奥底で生き続ける背景には、手放すことのできない「感情」の存在があります。怒り、罪悪感、寂しさ、不安、悲しみなどの感情が十分に癒されていないとき、人は前進・成長できないものです。フォーカシングやカウンセリング(傾聴)などで、しっかりと感情を吐き出し、整理することで、人生脚本の書き換えも起こりやすくなると考えています。もちろん、根っこの感情を癒さなければ意味がありません。良くある例として、怒りは二次的な感情で、たとえば寂しさが高じて現れることがありますが、この場合は寂しさの方を癒す必要があります。
 但し、感情の整理だけでは、人生脚本が書き換わりやすくはなるものの、完全に人生脚本を書き換えることはできないかもしれません。
 
 

過去に退行するイメージワーク

 
 人は、辛い体験であっても、子供時代に経験したトラウマ体験を人生の中で「再現しようとする」と言われています。過去の出来事の中に戻ってゆく退行催眠的なイメージワークを行うことで、潜在意識の中からそのトラウマ体験自体を実質的に消してしまうことができます。
 その結果、もうその体験は人生の足を引っ張ることがなくなります。
 原因となっている出来事が思い出せれば、これほど強力な方法は他にありません。
 
 

罪悪感の癒し、許し

 
 人生脚本が出来上がったトラウマ体験が明確でない場合、あるいは、とても多くのハートブレイクを経験してしまい、どれが決定的だったかすら分からない場合、退行催眠的なワークでひとつひとつつぶしてゆくことが難しい場合もあります。
 そのような場合、私はよく、椅子を並べて家族の距離感を表現してもらいます。お父さんはいつも遠くにいて、背を向けている感じ。お母さんは近くにいるけれど、なんだか怒りっぽくて嫌だった。弟は母親から逃げるのがうまくて、それが腹立たしかった、など、当時の印象を元に、椅子を並べて家族の状況を表現してもらいます。
 今度は、現在の自分の目で、その椅子の配置をよく眺めて、客観的に状況を見てみます。人は、他人に優しくできなかった自分を無意識に責めていたりするものですが、こうやってよく眺めてみると、「この家庭環境の中では、仕方なかったかな」と思えるものです。そうやって過去の自分をゆるしてゆきます。
 
 

禁止令を解く(インナーチャイルドの癒し)

 
 自分の人生を縛る「脚本」といっても、明確な物語があるわけではないと私は考えています。子供時代に「決めた」行動パターンや、考え方のクセが、人間関係や仕事、恋愛などのパターンを決め、それが人生を決めてゆくので、人によってはまるで同じパターンを繰り返しているように見えるのだと思います。
 考え方のクセのうち、重要なものは「禁止令」と言われるものです。13個あげられており、「存在するな」「自分自身であるな」「自分の性であるな」「子供であるな」「成長するな」「成功するな」「重要であるな」「所属するな」「近づくな」「健康であるな」「考えるな」「感じるな」「(なにかを)するな」である。
 これらの禁止令を持ったインナーチャイルド(子ども心)に「?してもよい」と許可を与える形でインナーチャイルドの癒しのワークを行うことは、直接脚本を書き換える作業ではないけれど、結果的に考え方のクセや行動パターンが変化するので、無限ループのように同じパターンにはまっていた人生が、変化し始める効果があると考えています。
 
 

書き換えは可能か?

 
 結局、子供時代に書かれた人生脚本の書き換えは可能なのでしょうか。
 私は、人により難易度の差はあるけれど、書き換えてゆくことは可能だと考えています。そのためのポイントが、「物語を使ったセラピー手法」「感情を癒す」「過去に退行するイメージワーク」「罪悪感の癒し、許し」「禁止令を解く(インナーチャイルドの癒し)」という五つの方針です。
 人によってどのやり方がぴったりかは変わってくるので、できれば専門家の立ち会いのもとでとり組まれることをお勧めいたします。
 
 
参考記事:
友達に「もう別れなよ」と言われる恋愛パターンの、交流分析的説明【禁止令と人生脚本】
人生がパターン化するとき(禁止令と人生脚本、つづき)
人生脚本 【じんせいきゃくほん】