人を動かそうというときに、知っておくべきことのひとつに、
何も言わない、何もしないことも、自分の選択のひとつで、
その選択にも責任を持つことが必要だという考えがあります。
暴言を吐いて問題を起こしたら、その人の責任だというのは分かりやすいですが、問題が起きているときに、事なかれ主義で黙っていたことにも、責任を負うという考え方が大事です。
つまり、言いたいことがあるのなら、その場できちんと発言する。
もしも、言わなかったのなら、あとから相手のせいにしない。
これが、「黙っていたこと、何もしなかったことにも責任を持つ」という意味です。
これは、なかなか厳しい基準です。たとえば、ついぼうっとしていて、大事なことを言いそびれたら、それも自分の責任と考えなくてはならないわけですから。
しかし、困った相手を動かそうと思うなら、この「行動しなかったことにも責任を持つ」という考え方はとても大事です。
なぜなら、自己中心的な人は、キッパリと言い返す人と一緒にいると居心地が悪いのです。そのため、自己主張しない人を見つけて、その人のそばにいることを選びます。
だから、もしもあなたのパートナーが「困った人」で、自己中心的な場合、あなたは自己主張しない役割を担っている可能性が高いのです。
問題を起こしているのは、あなたの目の前にいる「困った人」かもしれないけれど、あなた自身も、「困った人」が問題を起こすのを、「行動しない、Noと言わない、要求をしない」ことで間接的に助けているかもしれない、ということです。
・感情的になって、人間関係を悪化させたことも、自分の選択。
・感情を飲み込んで、無気力になったり、爆発したことも、自分の選択。
・自己中心的に振る舞って、人から疎まれたことも、自分の選択。
・他人に合わせ続けて、自分が何をしたいのか分からなくなったことも自分の選択。
・自己主張をして、相手が去っていったことも、自分の選択。
・自己主張をしないで、面倒な相手と腐れ縁になっているのも、自分の選択。
・嫌なことを「イヤ」と言わなかったために、そのあと延々我慢する羽目になった。
それも、自分の選択。
このように、何かを「した」「言った」ことも自分の選択だし、自分の責任ですが、何かを「しなかった」「言わなかった」ことも自分の選択だし、自分の責任と捉えることが、とても大切なのです。
これは、何でも自分を責めなさいという意味ではありません。むしろ逆です。
自分を責めるとき私たちは、「自分を心の中で責めて終わりにし、行動は変えない」ことをしがちです。現実を動かすために知恵を絞ることをしていないのです。これでは、人を動かし、現状を変えてゆくことはできません。
そうではなくて、自分に選択権がある、変えてゆく力がある。そして、現状を変えるために自分には何ができるかを考えることから、本当に人を動かして現状を変える道がスタートするのです。
実際に人を動かしてゆくのは、魔法のような方法があるわけではなく、継続的で、コツコツ努力を要する道です。心の基礎体力が必要です。
そのための第一歩として、自己責任のあり方について、捉え方を変えてみることが大事です。
「自分が言わなかったこと」
「自分がしなかったこと」
も自分の選択であり、自分の責任だと考えてみることが自己責任の原則です。
そして、そんなこと、とてもできないと考えるあなた。もしそうなら、あなたはまだ、人を動かすだけの心の体力が整っていないのです。まずは、人を動かす前に、自分の心を強くする取り組みをしっかり行うことを強くお勧めします。
あづま先生、初めまして。
いつもサイトを楽しく拝見しております。
先生のコラムを拝見し、対人関係の考え方が良いほうに変わりました。
ありがとうございます。
このコラムが夫に当てはまってる気がするのでコメントさせて頂きます。
夫はあまり自己主張をしないタイプで、あとになって不満をぶつけてくることがあるので少し困っていました。
・自分で車を選んだのに後になって「結婚したから好きな車を買えなかった」
・夫が欲しいものの購入を一度だけダメと言ったらその後の説得もしてくれず後になって「あんな便利なものを禁止するなんて信じられない」
・誘ってもくれなかった映画の上映期間が終わってから「一緒に観てくれなかった」
などです。
今までなら『夫の性格』で片付けてたのですが、あづま先生のコラムを読んで「ひょっとして私の態度が問題なのかな?」と思うようになりました。
上記の実例は夫なりに私を気遣って黙っていた主張なのもわかっています。
これから夫が主張を我慢しなくても良い関係を作りたいです、もしヒントがあったら教えて頂けたらと思います。
まいさん
コメントありがとうございます。
コメントの内容の印象ですが、確かに面倒な感じですね。
このコラムは、自己主張できない自分に気づくこと、を目的として書いています。
自己主張できない相手を変えるのは、10倍以上難しいと覚悟すべきです。
それを前提として…
まず、会話をしているときに、会話の空気を誰の感情が作り出しているか、それを観察してみてください。別の言葉で言えば、まいさんの話したい話ばかりしていないか、チェックする、ということです。
質問を上手に使うことも大事です。「どう思うの?」「どう感じる?」「何したい?」「何がほしい?」などの相手の気持ちや考えを引き出す質問をするのは、自己主張できない人の意見を引き出すときに大事なことです。
その際に、相手が「自由に答えていいんだ」という印象を持っていることが大事です。
まいさんが質問をしておきながら、彼が言ってもいい答えと、言ったら(まいさんが)不機嫌になる答えがあるとしたら、相手に、自由に考えたり感じたりする機会を、本当の意味では与えていないのです。
自己主張できない人は、人一倍、他人の顔色を読んでいたりしますので、意見を引き出すときには、聞く側の度量が人一倍問われるわけです。
そしてもしも、「女性は不機嫌になるし、面倒で怖い存在だ」という印象を、彼が子供時代から持っていた場合、その問題は結構根の深い問題です。
恋愛セラピーの場で、一緒にご主人さんを動かすための作戦を立て、実践し、うまくいった方法は続け、そうでない方法は変えていく。それを半年ぐらいは続けてみる必要があるでしょう。
ご主人さんのその行動パターンがどの程度「根の深い」ものなのか、コメントだけでは測りかねますので、色々書いてみました。
このぐらいの構想を持って、解決方法を考えること。
相手を変えようというときには、それが、必要になると思います。
大変かもしれませんが、頑張ってくださいね。