ある程度長いこと生きていれば、人にはあまり言いにくい、輝かしいとは言えない過去の経験の一つや二つはあるものです。かく言う私も、離婚歴がありますし。
ある人から質問を受けました。
「不倫して妊娠して、中絶した過去があったら男性は引きますか?」
(細部は若干違いますが、質問の主旨はそういうことでした)
結婚相手に、自分の過去を打ち明けた方がいいかどうか、という話です。
私が答えた答えはこれです。
「その人の背景を理解しきれない男性は、引くかもしれない。それは彼の課題です。」
「私は、そういう過去があったというだけで引いたりはしない。」
「但し、その経験から、あなたが何を学んで、今はどうなっているのか言えることが大事。」
つまり、こういうことです。
言い方や、捉え方は色々あるので、あくまで一例ですが、
乗りこえていないので、引かれる可能性が高い言い方
・私は過去に、不倫して妊娠して、中絶したことがある。
↑
このことに対する自分の気持ちも、解釈も、学びも、何もナシ。
乗りこえているので、成熟した男性なら受け入れてくれる可能性のある言い方
理解力のない人には引かれるかもしれないが、それは相手の問題。
骨子だけ示します。言い方は自分の言葉にすることが大事だと思います。
・私は過去に、不倫して妊娠して、中絶したことがある。
・そのことはとても辛かったし、後悔もしている。
・もちろん、不倫はいけないこと。でも当時の私はどうしても
自分を抑えられずに、そこに踏み込んでしまった。
・不倫に至った遠因は、幼少時に家庭内から父親の影が薄くて、
どこか、父親を求めるような気持ちが、大人になっても残っていたこと。
・当時の私は「好きになった人は大抵既婚者」「独身者には興味が持てない」
という、「恋愛感情」「感じ方」に問題があり、感じ方を変えるなんて、
普通にはなかなか出来ることではなく、解決がとても難しかった。
・しかし、求めていたのが「父親」だと分かってから、子供時代を再現する
心理学的なワークや、身近な男性から、恋愛関係にならずに父親的な
愛情を受け取る心がけなどを通じて、今はずいぶん心が癒された。
・だから、あなた(独身男性)を好きになれたし、私自身ずいぶん成長
できたと思っている。
・時々まだ、中絶したことの罪悪感がよみがえってきたり、子供を見ると
辛い気持ちになることが、最近はずいぶん減ったが、ある。
・そのことも、私の課題で、ここまで頑張ってきたが、まだ完全に
乗りこえたとは言えない。
・今後もとり組んでいきたいと思っているけれど、ときどき、過去のことで、
あなたとは関係ない理由で落ち込むことがあるかもしれない。
・そのときは、あまり問い詰めたりせずに、ただ抱きしめていてほしい。
話のポイントですが、
過去の出来事を話し、
そのことについて、自分がどう思っているか(後悔しているなど)を話し、
なぜそうなったのか、原因を話し、
その原因は、努力をしてほぼ取り除かれ、再発の可能性が低いことを話し、
まだ未解決の部分があることを伝えて、
その問題が出てきたときに、相手にどう協力してほしいかを伝える。
ということなのです。
こういうことは、必ず言うべきなのか?
解決済みなら、私は必ずしも言うべきだとは思いません。
墓場まで持っていくつもりで秘密にしてもいいと思います。
不動産取引の時には、自殺者が出た部屋を告知せずに貸してはいけないように、重要事項は告知すべし、というルールがありますが、そういうものと、自分の過去は違うと思います。
言うべきか、言わないでおくか。それは、相手の問題と言うより、あなた自身が、言った方が楽になるか、言わない方が楽か、によるのだと思います。
絆というのは、自分の良いところや楽しい話が出来て、なおかつ、自分の弱いところ、痛いところ、情けないところや辛い話もできるという安心感から生まれるものです。
自分が秘密を抱えていて、その結果として、「こんな自分じゃ、本当の自分を知られたら嫌われるに違いない」と怖れ続け、仮面をかぶり続けて、相手との真の絆が出来ない。そういう結果になるのなら、勇気を出して話した方がいい、ということです。
但し、再発する可能性があること、相手に影響があることについては、一生を共にするつもりの相手には、言っておく方が誠実な態度だと思います。
100%受け入れてもらえる言い方があるわけではないと思います。
相手側の理解度の問題もあるわけですから。そこはある程度達観するしかない。
でも、受け入れてもらえる可能性の高い言い方もあれば、受け入れてもらえる可能性が低い言い方もあるのです。そこは、自分の責任で、しっかりと考えておく方がよいと思います。
過去の経験を自己開示することが、大事な局面もあるわけですが(特に婚約者に、とか)、その際には、過去に何を経験したかではなく、そこから何を学んだか、それを伝えられることが大事なのです。