人を動かすのが上手な人と、下手な人の大きな違いのひとつとして、
「相手と自分が同意できる、共通の土台から話を始める」
ことができるか、できないか、があると思います。
これは要するに、人間を深く理解しているかどうか、ということです。
自分の感じたことを検証なしにぶつけてしまうのではなく、相手がどう感じているのか、それもよくよく考えた上で、相手に伝えるということです。
とくにこれは、相手が問題意識を持っていないことについて、こちらが問題意識を持っているようなときに有効です。
たとえば、仕事ばかりで家のことを顧みてくれない旦那さんに、家のことを考えてほしい、ときには手伝ってほしいこともあるということを伝えたけれど、仕事の責任がどうのこうのという理由を言われて、受け入れてもらえなかった(自分は専業主婦)。
そういう状況を想定してみます。
この旦那さんは、仕事面での危機意識が強くて、仕事を手抜きしたら自分が干されるとか、あるいは仕事に没頭するのは当然とか、考えているのです(という設定です)。
だとすると、いきなり「仕事ばかりしていないで、家のこともやって!」という苦情を言っても、
妻:「夫に家のことをやってほしい」
夫:「仕事上で『もっと頑張らなければ』という危機意識があるのに、妻に邪魔された」
という対立関係になってしまいます。
お互いが自分の問題意識だけを主張し合っていても、絶対に解決はありません。
そして、相手が歩み寄ってくれるのを待っていても、いつになるか分かりません。
だから、自分から動くことが大事です。
まず、二人が共通に「そうだね」と言える土台から話を始めます。
これを探るのは、自分都合でものを考えがちな人には、始めは難しいかもしれません。
しかしそこは、トレーニングあるのみ、です。
上の例で言えば、夫婦共に、生活を良くすることに意識が向いています。
但し夫の方は、最重要課題が仕事の安定だと考えています。
妻の方は、家の中のことに、意識が向いています。
まずは、相手が「そうだね」と言える部分から話を始めます。
「私たち、結婚して3年間、一緒に頑張ってきたよね。 (←問題点ではないが、共通の土台)
一緒に、生活を良くしようとしてるよね。 (←問題点に少し関連した、共通の土台)
それでね。ちょっと困っていることがあるんだけど…」
という流れで、家のことでやって欲しい点について話せばよいのです。
今度は、話のロジック(論理)が、
妻:「目的は、生活を良くすること。 手段として、夫に家のことをやってほしい」
夫:「目的は、生活を良くすること。 手段として、仕事の安定が最重要」
と、なっています。
だから、きっとこのあと、夫からの反論があるはずですが、その反論も、
「生活を良くしたいということは分かってる。
でも、今一番重要なのは、仕事がいつ無くなるか分からない状況を、安定させることだと思う。」
という、論理的で建設的なものになっているはずです。
考え方の違いは、一回の話し合いで埋まるものではないですし、結論はすぐには出ないかもしれないけれど、少なくとも話し合いを二回三回と継続することは出来ます。
いきなり対立関係になってしまったら、話し合い自体にうんざりしてしまいます。
相手が「確かにそうだね」と言える、共通の土台から話を始める。
地味で地道な取り組みですが、長い目で見ると本当に大事なのです。