「男を立てる」という言葉がありますね。
結果論から言えば、これは必要だと考えています。
しかしまた、誤解が多いのも事実。
そこでこのコラムでは、男を立てるという意味の誤解について心理学的見地から書いていきたいと思います。
「男を立てる」の誤解1:「どんな男でも、立てなければならない」
ひとつ目の誤解は、「どんな男でも、立てなければならない」というものです。
これは、明確に否定しておきます。完全なる誤解です。
ところで、一つの真実があります。
「どんな男でも、自分を尊重してほしい、尊敬して持ち上げてほしいと思っている」
一見上の言葉と似ていますが、全く違うものです。
「どんな男でも、自分を立ててほしいと思っている」
のに、
「どんな男でも、(妻が)立てなければならない、わけではない」
ということは、つまり、論理的に、
「相手の期待に、必ずしも応えなくてよい」
ということと同じです。
「男を立てる」の誤解2:「相手の言動にかかわらず、常に褒め称えなければならない」
ふたつ目の誤解は「相手の言動にかかわらず、常に褒め称えなければならない」というものです。女性の中には、愛は無条件のもの、と考えがちな方が少なからずいらっしゃいますが、これはダメんずを作りやすい危険思想です。
これは、女性は、無条件に自分の存在を受け入れてほしいという気持ちが強いから、きっと相手も自分と同じだろうと考えるからだと思います。
ところが、男性は、自分が成果を上げたときに、その成果をこそ認めて褒め称えて欲しいものなのです。逆に、何もしていないのに認められてしまうと、それでいいのだと誤解してしまったり、そういう認められ方では満足できないと思ってしまったり。あまり、いい男になっていかないのです。
とは言え、女性の期待通りに行動したときに褒め称えて、そうでないときにはキツイダメ出しをする、というのでは、お互いにあまり気分のよくない関係になってしまいます。
だから、本当にしてほしいことをしてくれたときには心から喜び、それを表現し、
一生懸命やってくれたけれど、イマイチずれていたときには、社交辞令的にありがとうを言い、
何もしてくれていないときには、淡々と接する。
そんな風に、マイナスのリアクションは少なくするけれども、プラスのリアクションにちゃんと差をつけて、メッセージを伝えた方がよいのです。
そうです。
「相手の言動にかかわらず、常に褒め称えなければならない」
のではなく、
「相手の言動が、自分の期待通りだったときにこそ、心から褒め称えるべき」
なのです。
「男を立てる」の誤解3:「男を立てるとは、ほめることである」
みっつ目の誤解は「男を立てるとは、ほめることである」です。
もちろん、結婚したからには、うまく行くように最大限努力すべきですし、恋愛の段階でも、長続きするよう努力することは大事です。
但しそれが、関係が壊れることや、相手に嫌われることを怖れるあまり、本当に言うべきことを言わないという、風通しの悪い関係になってしまうのであれば、一度よく二人の関係やコミュニケーションを考え直すべきです。
たとえば、彼が、倫理観の欠如した職場で働いていて、上司が不正に手を染めていたとします。彼もそれに荷担しなくてはいけない状況になってきて、実際何度か不正に手を染めてしまっていて、悩んでいた。彼女はそんなことは絶対しないでほしいと考えています。
そんなとき、彼女の言うべき言葉は「あなたは、そんなことに手を染めるような人間じゃない」です。
これは苦言であり、決してほめ言葉ではありません。
しかし、彼の現状を肯定することよりも、
彼の存在そのものを、高潔な存在であると信じて「今やっていることは、本来のあなたらしくない。もったいない。本来の高潔なあなたにもどるべき。」という苦言を言うことの方が、より「相手を立てている」と言えるのではないでしょうか。
「男を立てる」について、本当の理解をしましょう
先ほどまでの話と、一見逆に感じられるかもしれませんが、私は「男を立てることができないとしたら、そこに何か問題がある」と考えています。
バロメーターというか、気づくためのポイント、と言ってもいいでしょう。
どこに問題があるのか。
それは、ケースバイケースです。
まず、確実に間違った対応を書いておきます。
それは、「無理をして男を立てようとする」ことです。まあこれは、ほとんどの場合で、効果がないというか、下手をすると逆効果にすらなると思います。
もちろん、女性が変わるべきケースもあります。父親との関係が悪かった女性が、男性に嫌悪感を持っていて、結果的に男性に対してものすごく基準を厳しくしてしまい、夫の言動に常にダメ出しばかりしていて、夫はうんざりしている。こういうケースなら、妻の側が自分の内面的な課題に取り組むべきです。
でも、そういうケースばかりではありません。
夫が妻の気持ちを分かっていなくて、夫が妻の気持ちをちゃんと分かる男に成長すべき、と言うケースもあります。
こういうケースでは、夫の方がある程度まともなら、関係を継続できる可能性があります。そのような場合、女性の側の努力としては、我慢して相手に合わせるのをやめて、自分の望みをきちんと言葉にして相手に伝えることが大事です。女性の側も変わるべきですが、変わり方が、我慢する方向ではなく、きちんと自己主張できる方向なのです。
また、夫が尊敬に値しない行動を繰り返している場合もあります。
そういう場合は、「それはあなたらしくない。本来のあなたはもっと尊敬に値する存在のはず。」という意識で、苦言を言うことが「男を立てる」ということだと思います。
内面的な動機はやっぱり重要で、「やっぱりコイツはダメだ、怒られないとまともに行動できない。だから私が言わないといけない。」という意識を持っていると、苦言というより見下しになっています。そんな意識で相手を見ていたら、相手は成長するどころか下手をしたら、女性が見なしたとおりのダメな男に堕落していきます。
そしてまた、夫の態度があまりに酷い場合は、別れるという対応も考えるべきです。
このように、男を立てることが出来ない状態というのは、何かの問題があるわけですが、その問題がどこにあるかは、ケースバイケース。解決策もケースバイケース。よくよく現状を見つめないと見えてこないものなのです。
くれぐれも、短絡的に「だから男を立てるように私が我慢して頑張ればいいんだ」と考えないで下さいね。
犬を躾ける時とすごく似ています(マジメな意見です)
Tさん
コメントありがとうございます。
確かに、条件付けをしていくという意味ではすごく似ていますね。
犬のしつけと大きく違うのは、どういう方向に条件付けをするのか、そこに女性の人間性が大きく関わる点です(犬はどう躾けるかは大体決まっている)。
たとえば、夫に、尊敬すべき行動の出来る人でいて欲しければ、妻としての利益が多少減っても、京セラの稲盛さんの奥さんのように、夫から一緒に乗っていかないかと誘われたときに公私混同をいさめて、「会社の車には乗りません」と言うでしょう。
一方で、「あなたの会社の車なんだから、なんで私を乗せてくれないの?」という奥さんもいるでしょう。
長年、ずっと夫に対する条件付けをしていった先に、夫がどんな人になっていくのか。それは妻の人間性や見識にも関係があると思います。
私などは、正義の意識や、善い生き方を追求しているかどうか、といった点が生きる上で結構重要な方なので、後者のような奥さんだったらすぐ嫌になってしまって離婚でしょうね。でも離婚せずに、モラルの低い男に「育って」いく夫もいると思うのです。
そのぐらい、妻の人間性の影響力は大きいものだと思います。
そこが、犬をしつけるのと、人間を条件付けするのと、根本的に違うところだと思います(まじめに答えてみました)。
男の人の気持ちを知りたくて、読ませていただきました。
「男を立てる」というフレーズは、ほかのサイトでもよく出てくるのですが、
危うく誤解するところでした。
なにがなんでも、ではなく、時には苦言を呈することも必要だと、それも
あなたらしくない、という傷つけない言い方が参考になりました。
私は、もともとダメ出しが多い方なので、これを改善するために
自分が我慢しないといけないと思っていた矢先です。
波風の多いので結婚生活をしてきましたが、今後はなるべくうまく
やっていくために自分が変わらないといけないと考えているところです。
秋桜さん
コメントありがとうございます。
そうですね。
うまくいかないことが続くときにはきっと、根本的な部分、つまり自分が常識と考えて疑わないような部分で、考え方を変えることが必要なのだと思います。
短絡的に、何でもいいから変わろう、ではなく、自分は何を大事にしていて、どんな理由でダメ出ししたくなっているのか、よくよく考えて、変わるべきなら変わる、というように、
まずは自分を知るところから始められることを、心からオススメいたします。
幸せの道に進まれることを、心よりお祈り申し上げます。
初めまして、amです。
コラムをたくさん読ませていただきました。
とても勉強になりました。
ちょうど先日、私がたくさんのひどいこと(尊敬できてない、など)
を彼に言ってしまい、
1週間距離を取り、現在とりあえず別れずに仲直りしましたが、
彼の気持ちは今、「好きかどうかわからない」だそうです。
私がたくさんひどいことを言ってしまった理由は、自分への無価値感だったと
(自分が無価値→相手に価値を埋めて欲しい→ダメなことばっかり見える)、
先ほど気づき、涙を流して少し楽になりました。
男性を立てるとはほど遠い自分でした。
距離を取っている間に、自分の理想は愛情貯金をたくさんしてい状態とだと
気づいたのに、今まで自分がしていたことは「愛情のざる」状態でした。
彼はたくさん私に愛情をくれたのに、あまりに私が受け取らなかったため、
「好きかどうかわからない」になったんだと思います。
なんとか別れずにいるので、がんばって自分の傷を癒し、
彼との関係を修復していきたいです。
まだ間に合うでしょうか。
一度ひびが入った状態から元に戻し、さらに理想に近づくことは可能なのでしょうか。
彼は「今後の君次第」と言っています。
今後もぜひ参考にさせてください。
amさん
コメントありがとうございます。
そうですか。色々気づきがあったのですね。
とにかく、気づいたら前に進むことです。
彼との関係を何が何でも修復、という限定された狭い範囲で考えれば、それが可能かどうかは、分かりません。
お互いのメンタル体力と、お互いに傷つけ合った傷の深さ次第です。
逆に、彼との関係を修復することに限定しなければ、幸せな男女関係を手に入れる可能性は、ぐっと高くなります。彼とうまくやれるかどうかを、まずは考えるとしても。
可能性は広いのです。そして、うまく行くかどうかは、結局は自分次第。
自分も相手も大切に出来る、メンタル体力の高い状態を目指して、進んでいって下さいね。
応援しています。
これは男性に読んでほしいコラムですね。
どちらかというと、「男性をたてる=女は無条件に男に従う」と考えている人が多いように思います。恋愛面だけでなく、社会的にもそういった残念な場面に遭遇してしまいます。
たとえば担当が女性であった途端横柄になる男性、命令口調になる男性、セクハラをしようと考える男性、またそれを女性が喜ぶと勝手に肯定している男性。
一部ではありません。一般的です。
そうではない男性が一部です。
まめかまぼこさん
コメントありがとうございます。
>どちらかというと、「男性をたてる=女は無条件に男に従う」と考えている人が多いように思います。
うーん。どうなんでしょうか。
私が女性ではないので、そういう面を、自分の身で体験していないということはあるでしょうが、私がつきあいのある男性は、そうではないと感じています(但し、私は割と、つきあう相手を選ぶ人です)。
女は無条件に男に従うべき、と心底考えている男性がいたとしたら、彼は感情面でかなり未熟であると言えますね。
人間関係の法則として大事なものとして、
「精神的成熟度が同じぐらいの人が引き合う」というものがありますので、
身を守るためにも、女性の側も、自分の感情の責任を自分で持つなど、精神的に成熟することを、しっかりと心がけることが大事だと思います。
女性が気づきにくいポイントとして、自分が未熟で、依存的なとき、相手の行動に心から感謝できない(喜びを表現できない)状態になります。すると相手の男性は「何をしても反応が悪い。喜ばない。」と感じて承認不足(自分のがんばりの成果がでていない)に陥り、次第に態度を硬化させていく、というパターンがあります。
ですので、自分の心のケアをしっかりして、喜び上手、ほめ上手、受け取り上手になることを、まず心がけることが大事だと思います。
それでも、やっぱり、相手の行動が変わらないとき。それはもう、明らかに、その場を離れるべき時です(職場の場合、全体的に問題の多い職場というのもありますし)。
目の前の男性のインナーチャイルド(子供時代から未解決になっている承認不足)を癒すという「福祉」を、一個人として引き受ける義務はありませんから。
男性に読ませたいという欲求はあるでしょうが、
・成熟した男性つまり「いい男」ほど、こういう記事をちゃんと読む
・本当に必要な男性は、こういう記事を読まない
という傾向があると思いますので、簡単ではありません。
まずは、自分が自衛することです。