親が離婚すると子も離婚する!?ー不幸の世代間連鎖の本質

 

見世物小屋の口上で「親の因果が子に報い」なんて言葉もありますが、
親がした悪行の報いが子供に…というのは、ストーリーを盛り上げるための因果論の曲解だとしても、親から子へと、何かが伝わっているという感覚は、多くの人が持っていると思います。
 
実際、アメリカではアルコール依存症の家庭で育った子供が、大人になってまたアルコール依存になる率が高いなど、親から子へと「何かが伝わっている」と思われる現象について、まじめに研究がなされています。
 
交流分析の研究者であるクロード・スタイナー博士によると、親から子へと「ストローク経済の法則」と言われる、コミュニケーションの方式が伝わっていて、その方式に従うと、ストローク飢餓(いわゆる愛情不足)に陥りやすく、何かに依存しやすい心の状態が作り出されやすい、のです。
 
この法則こそ、私あづまが知る限り、親から子へと伝わる「何か」を最も明快に説明しているものです。
 
アルコール依存症などが親子間で連鎖する場合、親から子へと、次のようなルールが伝承されているとされています。原文は若干固いので、かみ砕いた表現にしてあります。
 
1.人に承認を与えられるときにも、与えてはいけません。
2.承認がほしいときにも、求めてはいけません。
3.人が認めてくれても、それを受け入れてはいけません。
4.他人からの否定や批判を、受け入れたくないときも、拒絶してはいけません。
5.自分で自分のことを認めてはいけません。
 
これは、親が自分の子をコントロールするために無意識に行っている方法によって、子供の心に、このようなルールが出来上がると考えられています。
 
その、コントロールの方法というのは、簡単に言うとこういう方法です。
 
まず、無条件の承認を与えることを極端に制限します。
笑顔であいさつする、抱きしめる、泣いたりわがまま言ったりしても受け止める、など、相手の存在そのものを認める行動が「無条件の承認」です。これを無くすわけです。
 
加えて、子供が親のお手伝いをしたとか、親の望む行動をしたときに「ほめる」というようなーこちらは条件付きの承認と言われるものですがーそれも減らします。
 
そうすると、子供は自分が認めてもらえる機会が極端に少なくなるので、親が与える、数少ないほめ言葉などを必死で求めるようになります。親の与える承認を、きわめて希少価値の高いものにすることに、親はこれで成功したわけです。
 
子供は親に認めてもらいたい気持ちでいっぱいですから、親にとってみるとこれで「よく言うことを聞く、扱いやすい子」が出来上がります。
 
 
・・・というコントロールの方法、親なら少しは誰でもやっていると思いますが、それが極端になっていくと、子供の心に、上に書いたような、承認を与えない・求めない・受け取らない・嫌な言葉でも拒否しない・自分を認めない、というようなルールが育ってしまうわけです。
 
 
親が離婚すると子も離婚する、であるとか、
親の悪行の報いが子に降りかかるとか、
そういう表面的な理解は、必ずしも正しくないわけですが、
 
逆にこのような、承認を与えない・求めない・受け取らない・嫌な言葉でも拒否しない・自分を認めない、というような行動習慣(ストローク経済の法則)が親子間で伝承されてしまう現象は、きちんと心理学的に検証されたものです。
 
そして、こういう習慣に基づいて行動していると、承認不足から心理的に不安定になりやすくなります。結果として恋愛依存になりやすかったり、結婚生活が破綻しやすかったりするであろうことは、容易に想像できます。
 
この法則から私たちが学ぶべき事は、こういうことです。
「離婚すると子どもがかわいそう」という表面的なこと、現実的なことだけを考えるのではなくて、「愛情飢餓になりやすい行動習慣である、承認を与えない・求めない・受け取らない・嫌な言葉でも拒否しない・自分を認めない、という習慣(ストローク経済の法則)を親子間で伝承してしまうことこそ、かわいそう」と考える、ということです。
 
 
この法則を逆にすると、こうなります。
1.人に承認を与えられるときには、ケチらず与えます。
2.承認がほしいときには、率直に求めます。
3.人が認めてくれたら、それを素直に受け取ります。
4.他人からの否定や批判が不当であるときには、受けとりません。
5.自分で自分をほめたり、認めたりします。
 
つまり、
他人に笑顔を向け、人の話を聞き、積極的にほめる、という、他人への承認をケチらずに与え、
自分が認めてほしいときには「ちょっと自慢させて〜」「ほめてほしくて言うんだけどさ…」「話を聞いてほしいんだけど…」など、率直(そっちょく)に相手に求めることができて、
他人が笑顔を向けてくれたり、話を聞いてくれたり、ほめてくれたことは、「自分はそれに値しない…」などと考えず、素直(すなお)に受け取って温かい気持ちを味わい、
生まれ、容姿、人格、性格、感情を否定されたり、あまりにキツイ言い方をされたなど、不当な批判を受けたときには、それを受け入れないという選択が心の中で出来て(もしくは実際に「その言葉は受け取れません」と表現できて)、
誰も認めてくれる人がいないときでも、自分で自分をほめたり、認めたりできる。
 
そのような行動習慣でいるように、心がける、ということです。
こうした行動習慣を持っていなければ、持つように努力することが大事です。
 
親子間で不幸が連鎖するように見えるのは、主に、愛情飢餓によるネガティブな感情が伝承することと(これはこの記事の主眼とは違うので詳しくは書きません)、愛情飢餓に陥りやすい行動習慣が伝承することであると、あづまは考えています。
 
前者は、過去の感情をはき出して整理することが効果的な解決方法です。
後者は、この記事の主眼ですが、愛情飢餓に陥りやすい行動習慣を、自分が満たされやすく、他人との関係もうまくいきやすい、うまくいく行動習慣に置き換えていくことが、効果的な解決方法です。
 
くれぐれも、離婚したとかしないとか、そういった表面的なことだけで考えないようにしてください。本質をきちんと捉えれば、不幸の世代間連鎖は断ち切ることが出来るのですから。


 

「親が離婚すると子も離婚する!?ー不幸の世代間連鎖の本質」への5件のフィードバック

  1. あづま先生、はじめまして。
    1ヵ月ほど前にこちらのHPを知り読ませていただいてます。
     
    もっと早く知っていたら、自分の人生の重要な決断も違っていたのではないかと感じるほど、節目節目に示唆を与えてくださる記事ばかりです。
     
    私は「自分で幸せになる努力をしない、いつも不機嫌な母」に育てられました。母が嫌いで、そう思う自分に罪悪感を持っていました。母から逃れるように結婚をしましたが夫に選んだ人は回避依存症そのものの浮気男でした。
     
    女性に対してだけでなく仕事に対してもお尻の落ち着かない人で、まるで成功する事を避けているかのように転職しました。
    結婚するまではそれは熱心なアプローチをされましたが、家庭を持ったとたんに目線が外を向いてしまい、子供ができてもそれは変わりませんでした。
    終いには「家族なんて重い。」と言われ、「お前はいつも2番目か3番目に好きな女だった。」とも言われました。
    婚外恋愛を自由にさせてくれるなら離婚しなくていいようなこと言われましたが、それって私にとってはなんの意味もない事でしたので、家族という形にこだわりが強かったのですが、自分で決断して6年前に離婚しました。
     
    それなのに、子供が結婚する年頃になって「親が離婚すると子供も離婚する」って言葉に恐れを抱くようになりました。
    幸せになることに罪悪感というのか、居心地悪くなってしまうことは自覚していました。
    それは母から「~してはいけない」というメッセージを受け続けていたからなんですね。
    私の幸せを素直に受け入れない習慣が離婚の原因だったのかも知れません。
    自分が母にされていた事が普通でなかったことには気がついていたので、それをしないようにしようと思っていたのに、落ち着かないイライラした気持ちで子育てしてしまいました。
     
    離婚してから、まるでそんな事がなかったみたいに普通に学校に行って頑張って就職もした子供らには、なんだかどっちが親だかわからないくらいに偉かったなぁと頭が下がります。
    今はなるべく素直に「尊敬するわ」「頑張っているね」「楽しそうで良かったね」「頼りにされているんだね」と良いところを口にするようにしています。また子供も大人ですけど素直に嬉しそうにしているのですが・・・。
    子供の頃に、安心して子供らしく無邪気に親に甘える事をさせてあげなかった。
    もっと愛しんで子育てしたかったと後悔ばかりしています。
    もう自立した大人になった子供らにしてあげられることはありますか?

  2. しあさん
     
    コメントありがとうございます。
     
    「愛もお金やものと同じ。自分が持っていないと他人に与えることはできない。」
    私の先生である、矢野惣一さんの言葉です。
     
    まず、自分の内面を充実させること。
    これこそが、一番大事なことなんです。
     
    何歳になってからでも、自分のネガティブな心のクセを治し、幸せを自家発電できる人間になるよう努力する。
     
    自己犠牲からではなく、自分が幸せになり、幸せのおすそ分けの気持ちから、他人に優しくする。
     
    そういう理想に向けて、努力し続けること。
    それこそが、一番大事なことだと思います。
     
    つまり、何かを教えてあげようとか、何かをしてあげようというのではなく、
    自分の生き方を見せて、背中で教える、ということ。
     
     
    その上で、しあさんが、自分のメンタルな課題の解決を、どうやって取り組んで、どうやって良くなったか。
    それをお子さん方に話してあげることができたら、最初から恵まれた家庭環境で育った子どもたちよりも、ある面ではむしろ、とても貴重な、よい教育を授けることができたと言えると思います。
     
     
    もしかすると、私がここに書いたようなこと、既に取り組まれているかもしれませんね。その場合、これでよかったと胸を張って生きて下さい。それ以上何も必要ないと思います。
     
     
    なお、私見ですが、メンタルな課題があると、恋愛や結婚生活で問題が起きるという理解をされている方が多いですが、私はそれは物事全体の20%ぐらいだと考えています。
    80%は、出会いの時に起きる、と考えています。つまり、未熟な心、依存的な心、過度に自己犠牲的な心を持っていると、幸せになれない相手と引き合って、気づかずに恋愛を続けてしまうのです。
     
    だから、
    >幸せを素直に受け入れない習慣が離婚の原因だったのかも知れません。
    そうではなくて、こういう習慣の影響は、その相手と引き合って、問題に気づかずに恋愛を続けてしまうというところに出ていたんです。
     
    「家族なんて重い。」「お前はいつも2番目か3番目に好きな女だった。」「婚外恋愛を自由にさせてくれるなら離婚しなくていい」という言動をするメンタリティーが結婚生活の中で育ったとはとても考えられません。結婚前から彼が持っていた内面的問題だった可能性が高いです。
    かれがそうなったのは、あなたのせいじゃないんです。
     
    こうした、人間関係に関する、物ごとの正確な見方を学ぶこともまた、いまから取り組んでいく価値のあることだと思います。
     
    いろいろ、やるべきことがありますね!
    頑張って下さいね。

  3. あづま先生、こんばんは。
     
    温かく深い丁寧なお返事をいただき、ありがとうございます。
     
    元夫の別れの際の数々の放言の中でも、一番傷となって心を苛んだのは「お前といるとダメになる。お前じゃダメだ。」という言葉です。
    私って人から見たらどんな人間なんだろう?そんなに腐ったミカンみたいに言われるほど駄目人間なのか?と、自分を知りたくて占い依存のようになったり、いつまでも傷は痛んでジクジクして、苦しむ事の繰り返しでした。
     
    でも、去年の誕生日に娘がメールでメッセージをくれたんです。「お母さんのパワフルなところにいつも励まされる。」って。
    私の心のうちを知っていたわけではないのに、その言葉は元夫に刺されてできた傷をふさいでくれる、効果抜群の薬のようなものでした。
    先生がおっしゃってくださったように、母親のようにならないようにしようとしていた姿が、子供に伝わっていたのかと感動しました。
     
    そしてまた先生に「あなたのせいじゃないんです。」と言っていただいた事に、とってもとっても救われました。
     
    これからもコラムを読ませていただき、「人間関係に関する、物事の正確な捉え方」を学んで、豊かな人間になるべく努力していきます。
    沢山幸せを自家発電して、人におすそ分けできるほどになればいいなと思います。
     
    ありがとうございました。

  4. こんにちは。
    以前、「浮気男の真理」でも、コメントいたしました。
     
    さて、私の両親は離婚しておりませんし、
    夫婦仲も一般的だったと思います。
     
    しかし、三人兄弟の中で、下の兄と私は離婚を経験しております。
    私には、思い当たることがありました。
    下の兄と私には、共通点があったからです。
     
    上の兄は勉強が出来、現役で地元の国立大学に合格しました。
    それと比べると、下の兄と私は高校受験から今ひとつでした。
    偏差値65くらいの高校へ合格した下の兄でさえ、
    父からはこう言われていました。
    「〇〇高校は、ぐんと落ちるねー。レベル低いねー。」
    このように認めてもらえず、馬鹿にされました。
    下の兄は、ヘラヘラ笑っていましたが、私は父を憎んでいました。
    母も、「勉強が出来る人」=「内面に比例して優れている人」
    というような発言が多々ありました。
     
    地元で1番良い高校へ行った先輩に、
    高1の時、私の知識不足のために強姦されそうになった経験があることを、
    大人になってから母に話した時、
    「あなたがレベルの低い高校に行ったから、してもいい子と軽く見られたのよ」
    などと言われたことからも、学歴崇拝者であることが伺えます。
     
    私の息子にまでそのように吹き込まれとても嫌でしたので、学歴と人柄は別物で、
    何を幸せの基準にするかなどの価値観は、本人が決めればよいことなので、
    自分の価値観ではないからといって否定しないでほしいと伝えています。
     
    身の回りの様々な「結果」を心で理解できるようになってからは、
    息子に自己否定感がないかが、少々気がかりではあります。

  5. 空(流星)さん
     
    コメントありがとうございます。
     
    なるほどね。記事に書いたように、離婚そのものが影響するわけじゃないですよね。
     
    >まず、無条件の承認を与えることを極端に制限します。
    >加えて、(中略)条件付きの承認と言われるものですがーそれも減らします。
     
    >そうすると、子供は(中略)、親が与える、数少ないほめ言葉などを必死で求めるようになります。
    >(中略)「よく言うことを聞く、扱いやすい子」が出来上がります。
     
    >・・・というコントロールの方法、親なら少しは誰でもやっていると思いますが、それが極端になっていくと、子供の心に、上に書いたような、承認を与えない・求めない・受け取らない・嫌な言葉でも拒否しない・自分を認めない、というようなルールが育ってしまうわけです。
     
    >親が離婚すると子も離婚する、であるとか、
    >親の悪行の報いが子に降りかかるとか、
    >そういう表面的な理解は、必ずしも正しくないわけですが、
     
    >逆にこのような、承認を与えない・求めない・受け取らない・嫌な言葉でも拒否しない・自分を認めない、というような行動習慣(ストローク経済の法則)が親子間で伝承されてしまう現象は、きちんと心理学的に検証されたものです。
     
    ということが起きていると、やっぱり言えるのではないでしょうか。
     
     
    空(流星)さんの中に、親から十分に承認されなかった、むしろ否定された、という気持ちが強いのでしたら、自分で自分を承認することを、一生懸命やって下さいね。自分で自分をほめるとか。
    そういうとりくみを一生懸命積み重ねることこそが、この、世代間連鎖を断ち切る一番の方法なのですから。
     
    しんどい日もあるかもしれませんが、ぜひ、頑張って下さいね。
     
    大丈夫、親(である空(流星)さん)が気づいていれば、お子さんへの影響は断ち切れますって。
    100%できなくても、あとは、お子さん自身がつづきをやって、完成させてくれますよ。

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