許せない気持ちの中には、許さなくていい部分もある。

 

夫の浮気が発覚。
なんと10年もの間、その相手と不貞行為をしていた。
夫はばれたのでしぶしぶ別れた。
もう別れたからいいじゃないかと言っている。
 
しかし、何か釈然としないし、許せない気持ちがあって、もやもやしている。
 
 
まあ典型的には、こういうケースがあるわけですが、
 
こういうとき、私は、次の話をすることが多いです。
 
 
「ゆるす」には三種類の意味があるんですよ、と。
 
ひとつめの「ゆるす」は、行動に関すること。
相手をいつまでもぐちぐち責めたりしない、ということ。
法律家や合理的な思考の持ち主の「ゆるす」はこの意味です。
 
ふたつめの「ゆるす」は、感情に関すること。
「ゆるすことにした」と決めて、責めない、という行動は選んだけれど、
心の中ではネガティブな感情が渦巻いている。
これでは、本当の意味で、解決していません。解消していません。
本人も楽にはなりませんし、怒りの感情が周りに移る(逆転移)など、悪影響が広がります。
 
ですから、ネガティブな感情を、自分の責任で、整理すること。
これが、ふたつめの「ゆるす」です。
心理学の専門家が言う「ゆるす」は大抵この意味です。
 
 
そして、大事なのが、みっつめの「ゆるす」。
一度「ゆるして」しまったら、今後また再発したとして、ずるずると容認するようなことにならないか…これは、とても重要な問いです。
 
実は、みっつめの「ゆるす」は正義感、倫理観に関することです。
やはり、問題行動は、自分の心のあり方として言うなら、ゆるさなくていい、いや、もっとはっきり言えば、ゆるすべきでない、のだと思います。
 
 
一番目の「ゆるす」に関しては、いつまでも、有効でない愚痴や相手への文句を言い続けるべきでない、つまり、「ゆるすべき」である、という方向が大事。
 
二番目の「ゆるす」に関しても、行動だけ取り繕っても、腹の底に持っている感情は、夫婦のような近い関係では絶対に伝わってしまいますから、きちんと自分で整理をつけるべき、つまり「ゆるすべき」である、という方向が大事。
 
しかし、三番目の「ゆるす」に関しては、問題行動を、「それは正義に反している」「それは倫理にかなっていない」という、自分の中の基準をしっかり持って、「ゆるさない」ことが大事だと思います。
 
 
浮気をされた側の精神的成長という観点で見ても、この方向は大事です。
特に、自分の基準をしっかり持つという、三番目の視点がちゃんと持てるというのは、大事なことです。
 
一方、意外に思うかもしれませんが、浮気をした側の精神的成長という観点で見ても、実は同じ結論が出てくるはずだ、と私は考えています。
 
というのは、浮気に流れてしまう人は、やはりどこか、倫理的なこと、正義に関することを軽く見ているからこそ、そうなるわけで、精神的成長のために、ある種の厳しさは必要だと思うからです。
 
 
但し…
 
これは、妻の側の覚悟が問われる話です。
つまり、今回は、二人でよく話し合って、再発防止を考える。
という方向を出したとしても、もしまた、再発するようであったら、自分はどうするのか、それを明確に宣言し、一度言ったからには絶対に自分の言葉を守る、そういう芯の強い態度が求められるからです。
 
つぎやったら、別れます。
○○万円の財産分与と、○○万円の慰謝料請求をします。
(上記はあくまで典型例です。ここで何を言うかは、相手の状態などを総合的に考えて決めなければなりません)
 
たとえば、一度そう言ったら、絶対に守らなければなりません。
そうでないと、「ああこの人の言葉は、軽いんだ」と思われてしまいます。
 
言葉に覚悟がこもっていない人は、相手に「説得したり、ごねたりすれば何とかなるんじゃないか」と思われてしまいます。
 
 
一度言ったからには、絶対にその言葉を守る「覚悟」が問われます。
 
もちろん、別れますという言葉を言うのは覚悟がいるからと言って、「言わない」という選択をするのも結局、相手を動かす力のない態度です。
 
私も本気で修復に向かう努力をします。
しかし、あなたが本気になってくれないのであれば、
夫婦を続けていくことは出来ません。
そのときは、すべき手続きを踏んで、離婚します。
 
こういう、【感情的ではない】、【覚悟の決まった】、【本気の姿勢】で相手と対峙できるかどうか、それが、三番目の「ゆるす」に関しての、「ゆるさない」という姿勢なのだと思います。
 
 
但し、再度、念を押しておきますが、
「ゆるさない」のはあくまで三番目の「ゆるす」に関してのみであって、
 
 
相手に行動面の改善を求めたり、夫婦で一緒にメンタルな課題の解決に取り組んだりすることは、もちろんOKですが、
 
自分の感情が解消しないからといって、いつまでもグチグチ言ったり、(一番目のゆるすができていない状態)
 
自分の感情を自分の責任で解消する努力をしないで、自分の気が晴れるまで、全部相手に償ってもらおうとしたり(何度も何度も謝らせるとか…たぶん解決しないですその方法じゃ)、不機嫌な状態を続けたり…まあこれは、言い換えると、感情的に相手に依存している状態であって、二番目のゆるすができていない状態です、
 
 
こんな風に、本来全く違う三つの概念を、「ゆるすか、ゆるさないか」みたいな、粗くて浅い考えで、ごちゃっ、と一緒くたにして、
本来ゆるすべきものまでゆるさなかったり、
本来許すまじきものまでゆるしてしまったり、
 
ということになると、解決が一気に遠のいてしまうのです。
 
 
この機会に、「ゆるす」ということに関して、一度よく考えてみて頂きたいと思います。


 

「許せない気持ちの中には、許さなくていい部分もある。」への7件のフィードバック

  1. はじめまして。川津と申します。
     
    先日、あづま先生の本、あなたの恋愛がうまくいかない本当の理由を購入しました。
     
    是非とも彼女にも読んでもらいたいのですがどう切り出したらいいのか悩んでいます。
     
    本を読んで気付いたのですが、私の彼女は依存タイプです。
     
    すぐ感情的になるうえ、頑固なのでこの本を渡したら、キレられそうなのですが
     
    彼女自身、依存タイプになった原因がわかれば彼女も楽になるかなと
     
    考えています。ですので、当たり障りのないように薦めたいのですが、
     
    どうしたらいいと思いますか?

  2.  
    どの記事もとても興味深く、つい読みふけってしまいました。
     
    ところで今私には片思いをしている人がいます。
    その人とはかれこれ出会って一年ほどになりますが、とある美術予備校で科が同じだったのがなれそめです。
     
    実は彼のことをまだあまり知らなかった頃、(気になってはいましたが)彼がなぜか私と目が合うたび微笑んで見つめてきたりすることがありました。
    ですが私は当時まだ彼のことをよく知らなかったし、あまりまともに会話もしたことがなかったので、自分が彼のことが好きかどうか自信が持てず、また、彼の笑顔がどういったものかもわからないまま、もし、勘違いだったら嫌だな、という気持ちから、(分かりにくかったらごめんなさい)ある日思わず彼の笑顔から目をそらしてしまいました。
     
    そしてその時から彼は私を避けるような行動をし、目を合わせることすらできなくなりました。(もちろん話す機会もなくなりました。)
     
    私はこのとき、これは単に私から興味がなくなっただけなのかな、やっぱり遊びかなにかだったのかな、とおもいました。
    ですが、そのほとぼりが冷めた頃、ひょんなきっかけから彼が私に話しかけてくるようになりました。(ちなみにそのとき私は彼を好きになりかけてました。)
    それからはじゃれ合うような関係になり、好きという気持ちは胸にしまう形になりました。
    私はその関係が発展することを期待していましたが、
    彼の気持ちが他の女の子(すごい美人の女の子でした。)に向かっているのも同時にうすうす勘づいてもいました。
    そしてそうしているうちに、ひょんなことから彼の愚痴や、昔の話を二人きりですることになり、わたしはこのとき自分が彼のことが好きだということを自覚しました。
    そして彼が無理な生活をしている様が心配になり、うちでとれた野菜を思わずあげたり(ささやかではありましたが、)したのですが、素直になれず、つんけんしたり、自分の中でもがいているうちに彼に彼女ができてしまいました。(先ほどの美人さんです)
    それを知ったのが、その彼の彼女が私に嫉妬して、(彼から聞かされました。)彼に牽制したために、私を避けるような行動(私はさほどきにしていませんでした。)をとっていた彼が、その理由を話して、それまでの行動を謝ってきたときなのですが、私はいちいちそういったことを話してくれる彼になんとなくもやもやを抱えずにいられませんでした。
    その後、二人は3ヶ月ほどで別れましたが、私と彼は微妙な距離感のまま、私は大学に進学し、彼は浪人で、会えなくなってしまいました。
    私にとって彼は大切な人です。でも、彼にとって私はなんなんでしょう。
    遊びだったのでしょうか。信じたいのですが、彼女が居たことを考えるとわからなくなってしまいます。
    別れたとはいえそういった関係の女性がいたことはやはり引っかかりますし、自分が全くの無関係ならいいのですが、そうでもないような気がするので、彼への不安は募るばかりです。
    彼の心理が知りたいです。
    でも浪人中の彼にそんな話を持ちかける気にはなれません。
    そこで資料が少ないかもしれませんが、彼の心理を客観的に推測してほしいのです。
    無理なお願いかもしれませんが、ひとつ、お願いいたします。

  3. 川津さん
     
    コメントありがとうございます。
     
    このコラムは、「ゆるす」に関するコラムですので、その点をまず指摘しておきます。
     
     
    さて、
    依存タイプの人は承認不足があるわけです。
    他人から承認してもらいたい、認めてもらいたい、が強いので依存的な行動が増えるわけですから。
     
    彼女さんが川津さんに期待しているのは、承認してもらうこと、ですよね?
    それを十分にしていますか?
     
    その自信があるのなら、本を渡してみてもいいんじゃないでしょうか。
    但し、承認を求めている人は、指摘・ダメ出し・批判を人一倍、心の深いところまで「ぐさっ」「がつーん」と受けてしまいます。
    (承認不足があるのかな、と彼女さんを「深く理解」してあげずに、川津さんが「頑固」「感情的」と判断してしまっているところが残念なところですが)
     
     
    今までそういう場面でキレた彼女さんならきっと、キレるでしょう。
     
    それでも、彼女のためになると信じるなら、どんなにキレられても、おどおどしたり、逃げたりせず、堂々と、それが大事なことなんだ、と主張してみたらいいんじゃないですか?
     
    但し、その結果別れに至ったとしても、それはそれ、全て想定の範囲内。そう言えるだけの強さが必要だと思いますよ。
     
     
    まあつまり、小手先のテクニックではなくて、
    本気と覚悟がありますか、という話になるのだと思います。
     
    その上で、アサーティブに関する書籍等をよく読み、勉強されることをお勧めいたします。(私は、言いにくいことを、上手に伝えるためのコミュニケーション講座に合計50時間ぐらいは出ました)
     
     
    頑張って下さい。

  4. まふまふさん
     
    コメントありがとうございます。
     
    まず、このコラムは「ゆるす」ということに関するものであることをお断りしておきます。
     
    せっかく書いて下さったので、簡単に回答しますが、
     
    とても残念なのが、彼がどういうつもりだったのか分かったところで、きっと何も解決しないのに、解決しないテーマに、まふまふさんがこだわって執着していることです。
     
    だってね、客観的に見たら、彼は、その美人の女性を好きになって付き合った、その後、別れた。まふまふさんはクラスメート的な関係。以上。て話でしょう?
     
     
    その状況に、勝手に振り回されている状態、なわけですよね?
     
     
    たぶん、こんなこと書かれたくないと思いますが、
    片想いで振り回されてしまうパターンの女性は、幼少期に父親との安定した関係が築けず、その年齢の時の承認不足がまだ解決していないことが多いです。
     
    恋愛がうまく行く女性は、そういう「淡い恋心的関係」を楽しみつつ、縁がなかったら上手に手放して、縁があって近づけば次第に心を開いて、という風に柔軟に対応しているものです。
     
     
    確かに彼も、思わせぶりなしぐさがあったのかもしれませんが、
    彼の気持ちを考えるよりも、そういう男性の態度に振り回されない自分を作る方を考えた方が、実りが多いと思いますよ。
     
    質問の答えになっていなくてすみませんが、このサイト及び私のポリシーはそういう方向性ですので。
     
    頑張って下さいね。

  5.  
    あづま先生、お返事ありがとうございます。
    場所をわきまえぬ発言、失礼いたしました。
     
    すこし時間をおいて、しょうもないことを言っていたなと反省中です。
    確かになんの解決にならないことをきいてました。
     
    >父親との安定した関係が築けず
    そうなんです。そこは重々自覚しているんですが、なかなか昔の傷を癒すのはむずかしいです。
    ついつい「無償の愛」を求めてしまいそうになります。もうとっくにあきらめたのに。。。
     
    幼い頃から「自分にはなにかが足りない」と感じていて、いろいろな事を犯し、小学生高学年から
    これ以上自分を傷つけないため、自信を保つため、
    色んな人を癒す事に尽力してきました。癒した人が巣立って行くたびに(そりゃうれしい気持ちもあるんですが)
    自分がもう一人いればいいのにと思い、悲しくなりました。人を支える度、そう思っている自分が心の隅にいます。
    自分を癒してくれる人はいないのかと。
    そう言う自分を誤摩化して生きてきました。
    電話相談もしました。親の目をかいくぐって施設に相談にも行きました。
    病院にも通っています。
    これでもかなり回復しました。
    でもやっぱり限界があるかな。。。とも感じます。
     
    こういう事は個別に相談するべきなのでしょうね。すいません。また長々と描いてしまいました。
    あづませんせいのコラム、ほんとうに面白いし、的を射ていると思います。
    応援しています!

  6. こんにちは。
    ゆるす、ゆるさないのコラムを読み共感致しました。
    最近の私にも彼氏へのゆるす、ゆるさないの問題がありましたので。。
    そのことを少しお話させてください。
    私には3年ほどおつきあいしている彼氏がいます。
    その彼とは、本当にいろんなことがあり、それでも今また歩み寄ろうとしています。
    私は、また2人でやっていくのなら、もう過去は振り返らない(要するにお互い言い分はあるけれど、それを許して)前だけ向いてやっていくのなら、付いて行くと言いました。
    そのことで彼は今、私とのこれからを考えているようです。
    私は回答待ちの状況ですが、こんな状況でも、彼は何か気に入らない事があると、
    嫌味や皮肉を私に言ってきます。
    私はその嫌味に腹が立ち言い返してしまい、
    そうすると、彼は過去のことをぐちぐち言っています。
    まだ昔の事を根に持っているのか、売り言葉に買い言葉で、言ってるのかはわかりませんが。。
    ちなみに私たちにあった過去の問題とは浮気とかではありません。
    言い争いが多かったのですが、それはお互いが相手に自分の事を理解してほしい故の喧嘩と、
    私は思っています。
    なぜ、嫌味を言うのでしょうか。
    なぜ、どうしようもない何年も前の過去の事をぐちぐち言ってくるのでしょうか。
    私は、彼との関係はもう終わりだと思っていますが、その嫌みには、どうしても腹が立ってしまい気持ちの収集がつきません。それを許すにはどうしたら良いのでしょうか。

  7. こんにちは。さん (お名前の欄にはお名前を書いて下さいね)
     
    コメントありがとうございます。
     
    まず、あなたの側のことを言えば、彼のイヤミを真に受けてしまうという、心のガードの甘さを改善する必要があるでしょう。
     
    真に受けておいて、傷ついておいて、それで、ゆるす、なんて、なんだか、容器に水をためたいのに、底に穴があいていて、ダダ漏れのところに水をくんでいるみたいな話です。
     
    そもそも、そういう不当な批判は受け付けない、しっかりした心を手に入れることが大事なんじゃないでしょうか。
     
     
    それから、あなたも彼も、だと思いますが、過去のことを本当の意味で水に流しているのではなく、関係が壊れるのが怖いから、フタをして言わないことにしているだけ、なのではありませんか?
     
    これは、このコラムの主旨で言うと、2番目の「ゆるす」が出来ていない状態です。
     
    過去のことを彼に言われても、動じないぐらい、あなたの中で過去の問題が完全解決している、そういう状態になっていないから、いちいち傷つくのではないでしょうか。
     
     
    なお、彼はきっと、根っこの部分で人間不信を持っているのでしょう。
    その根っこはもしかしたら母親などの養育者との関係から、作られたものではないかと推測しますが。
     
    彼の、あなたが首をかしげてしまうほどのイヤミはつまり、9割方はその根っこの感情によるものだと思うのです。
     
     
    セラピーを利用しながら、このような人間不信系のパートナーと、なんとかやっていく方法を見つけようと努力されている相談者さんも、確かにいらっしゃいますが、
     
    このようなケースでは、早めに「私には荷が重すぎました」と離れる方が、賢い選択であることが、多いですし、実際、別れを選ぶ方の方が多いです(賢いことばかりがよいとは限りませんが)。
     
     
    現在の問題行動を放置していて、それをゆるすという道は、ありえませんから、
    そもそも、あなたの問い、
    「彼にイヤミを言わせる状況は放置しておいて、自分が傷ついてもゆるす方法はありますか?」
    という問い自体が、意味がないのです。
     
    問題行動には、断固として、「それはしないでください。これ以上続けるなら別れます」と言わなければなりません。このコラムではこれを3番目の「ゆるす」であると表現し、この「ゆるす」はしなくていいと書きました。
     
    あなたは、3番目の「ゆるす」をしないこと、つまり、きちんと要求したり、筋を通したり、相手がそれでも態度を変えないなら、最終的に別れも含めて断固として行動することを学ぶ必要があるのだと思います(まあ、すでに彼との関係は終わりだと思っていらっしゃるようですから、私が改めて言うまでもないかもしれませんが)。
     
     
    まあ、ひと言でまとめると、
    あなたの課題は、どうゆるすか、じゃないよ。
    3番目の「ゆるす」について、「ゆるさない」という姿勢をとれる自分に成長することだよ。
     
    と、なります。

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