★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 740号 2016.12.29
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
★あづまの個人セッション
起きている現象をよく観察し、それにより問題を「見立て」、
適切な解決の指針を立てる。個人セッションならではのメリット。
プロの目が入ることの「キレ味」と「安心感」を体験して下さい。
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現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
本作品は、フィクションですが、
症状、問題の原因、解決の指針および、
セッション内のやりとりは、実際に行われたセッションを
元にし、ディテールは全て(プライバシーに配慮して)
入れ替えて制作しております。作品ですので、多少の
デフォルメはございます。
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
ココヘル+
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【登場人物】
(現在の人物)
ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
なつを ドクターの助手
まいくん 今回のクライアント ある性癖の持ち主
今回までのあらすじ
ゆり子は、祖父のノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を
読んで、心が軽くなったなど、効果を感じたので、父に送って
もらった残りのノート(箱入り)のうち、また一冊を開いた。
そこには、女性の鎖骨にほくろがある女性にしか興奮しない、
という性癖の男性のセッションが記録されていた・・・
そんなもの、治せるのか?といぶかるなつををよそに、
恋愛ドクターは、淡々とセッションを進め・・・
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
第二話 性癖を直す
第三幕 今ここ
「まいくんが、鎖骨のほくろに興奮するときの感覚を、
できるだけ詳しく、言葉にしてみてほしいんです。」
ドクターは言った。
「えぇと・・・」五十代半ばのまいくんが、
少し恥ずかしそうにした。
ドクターはその変化を見逃さず、すかさずこう付け加えた。
「もし・・・不倫相手とか、そうですね、一般的には
不適切な関係のことをどうしても扱わなければならない
場合でも、この場では「何を言ってもいい」というルール
でやりますし、守秘義務は守りますので、ぜひ、心に一番
正直になって、話して下さい。」
「はい。実は、そうなんです。最近ほくろに興奮したのが、
その相手なので・・・」
「このセッションの中では、何さんとお呼びすればよい
ですか? イニシャルなどでも構いませんが。」
「みちこ・・・なのでMでお願いします。」
「では、Mさんですね。いままいくんは何を思い浮かべて
いましたか?Mさんの鎖骨のあたり?」
「はい。そうです。そこにほくろがあって・・・
手を触れて・・・」
「そう、そのときに、どんな感覚がありますか?
今度はまいくん自身の感覚を探って下さい。」
まいくんは、目を閉じて、自分の感覚を探っている
ようだった。
「まず、意識がほくろのところに『ぎゅーっ』と
吸い込まれるような、引き込まれるような感じです。
そこに吸い付きたくて、食いつきたくて、居ても立っても
いられないような感じ・・・あ、この感じは、遠足の
前の日にそわそわしてしまうときの感じを100倍
ぐらいにしたみたいな感じです。」
「その、そわそわする感じは、
体のどの辺で一番強く感じますか?」
「ええと・・・胸のあたりかな・・・ですね。あっ、
それと、腰のあたりというか下腹というか、この骨盤の
中のあたりなんですけど、じわーっと、独特の気持ち
よさというか温かさを感じます。言うのはお恥ずかしい
ですが『勃ってくる』ときに感じる感覚と言いますか・・・」
「なるほど。結構頑張りましたね。なかなか、
上手に表現したと思いますよ。」
「ありがとうございます。」
(でも結局、ほくろに興奮する、という話じゃないの)
なつをは思った。ほくろに興奮するのが彼の性癖なの
だったら、もうそれは、変えられないものではないのか。
先生は細かく色々訊いているけれど、それを訊いたから
といって、何かが解決できるとは思えなかった。でも、
先生が考えている道筋は、今まで、大抵の場合正しかっ
た。つまり今も、先生は何か考えているはずなのだ。
それが何なのか、なつをには想像もつかなかった。
自分と先生の観察力、洞察力の差があまりに大きい
ことに、なつを愕然とした。
「ちょっと5分ぐらい休憩しましょう。」ドクターが
言った。
珍しいな。なつをは思った。セッション中に先生が休憩を
提案することは珍しい。先生は思考能力が高い人だし、
根性も持続力もある。先生自身が疲れて休憩する、
ということは見たことがない。(もしかすると、
クライアントの負担を考えたのかもしれない)
なつをはそう思った。
休憩時間は、皆、無言だった。なつをが持ってきた温かい
麦茶をすする音だけが聞こえていた。
休憩後、再びセッションが始まった。ここでなつをは、
なぜ休憩を挟んだのか、その意味がよく分かった。
やはり先生はクライアントの負担を考えたのだ。
「あの、先ほどのお話の中で思ったんですが、ほくろの
ある女性を『好き』というのとは、何か違うな・・・
と感じたんですよね・・・」
「えぇ、言われてみるとそうかもしれません。ステキだな、
好きだな、という感覚とは、確かに違っています。
なんと言うか・・・引き込まれる、吸い込まれる、
あ、そうそう、視界が狭くなる感じもあります。」
「へぇ、そこに引き込まれて、吸い込まれて、
視界が狭くなる・・・と。」
「はい。」
まいくんは、しばらく天井の方に目を向けていた。
そして、こう言った。
「カミサンと出会ったときも、少しだけそういう感覚が
ありました。今関係を持って・・・いや、今はもう別れて
いるんですが・・・その女性との時は、この感覚です。
かなり吸い込まれる感じでした。」
「何か気になりますね、その感覚。」
そう言いながらドクターは、ホワイトボードに一コママンガ
を描いた。マンガ、というには絵は下手だったが、
セッション用に使う分には十分分かりやすかった。
そして、説明と質問を始めた。
「ここに、先ほどの、まいくんが居ると思って下さい。」
てるてる坊主のような形の線画で「人」を描き、それを
指さしながらドクターは言った。
「そして、目の前には」と言いながら同様の「人」を描いた。
こちらの人は女性らしく、髪の毛が簡単に描かれた。
そして、肩のしたのあたりに、点も描かれた。ほくろらしい。
「鎖骨のあたりにほくろがある女性がいます。このとき、
まいくんは、どんな気持ちになるでしょうか。どんな心の声が
湧いてくるでしょうか。このほわっほわっほわっ、と広がる、
心の声の吹き出しの中に、ピッタリの言葉を入れるとしたら、
どんな言葉が入りますか?」
ドクターはそう言いながら、心の声を表す、丸い吹き出しを
図に書き加えた。
「えぇと・・・」まいくんは口ごもり、深刻なまなざしで
ドクターの描いた図をじっと見続けていた。
「『わぁ』でも『うぉー』でも、何でもいいので、
何か言葉にしてみましょう。」ドクターが促した。
「あぁ、そうですね。『うぉー』とか。」
ドクターは自分の描いたマンガの吹き出しの中に
「うぉー」と書き加えた。
「あ、ちょっと違いますね。『うぉー』というよりも、
『うわー』かもしれません。」まいくんが訂正した。
「なるほど、『うわー』ですね。」ドクターは先ほどの
言葉を消して、「うわー」と書き直し、
そして、続けて言った。
「『うわー』ですと、内なる衝動の言葉というよりは、
何だか、外敵がやってきてびっくりしているというか、
むしろ逃げたい感じに聞こえますね。では、ほくろを前に
しているところを想像しながら『うわー』と言ってみて
下さい。」
「うわー」
「もう一度、『うわー』」
「うわー」
その瞬間、まいくんの表情が急にゆがんだ。
「あぁ、逃げたい、逃げたい、うわー!」
ドクターは落ち着き払って、さらに続けて質問をしていく。
「何が思い浮かんだんですか? 何から逃げたい?」
まいくんは、ハッと我に返って、「あぁ、すみません」
とひと言謝った。そして続けた。
「実は、私の初めての女性体験というか、実際、性行為
までしたわけではないんですけど、その体験がよみがえって
きました。」
「そうですか。なにか、現在の悩みと、重要な関係が
ありそうですね。」
ついに先生が「食いついた」なつをは思った。どうやら
先生は、この瞬間にまいくんが思い出した過去の出来事が、
まいくんのほくろフェチと深く関係があるに違いないと
睨んでいるようだ。
(しかし、いったいどんな体験なのだろう?)なつをは興味を
持った。大体、先生はいつも、クライアントの過去の体験の
詳細を聞く前に、その体験が「重要である」ことを知っている。
これがいつも神がかっているように感じる理由だ。
いったいなぜ、先生は、体験の具体的な内容を聴く前に、
その体験が現在の悩みと深く関係していることを見抜くの
だろう・・・
しかも今まで、先生の直感は、ほぼ外していないのだ。
「その体験は、今この場で話せますか?大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫だと思います。」
(つづく)
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
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◆編集後記
今年も一年、ありがとうございました。
あと1号くらい、配信しようかと考えています。
まあ、読みものですので、気楽にお付き合い下さいませ(*^_^*)
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