【ココヘル762】踊るセラピー(5)|恋愛ドクターの遺産第四話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 762号 2017.2.17
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
 
★3/4・5@東京  4/1・2@広島(←広島も開催決定)
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
https://www.556health.com/sp/bestpartnerwsnov/
(東京・広島ともに、受付開始しました!)
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、作品を書いています。
フィクションですが、症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて創作し、
プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、解説を「ココヘル+」の方で書いていますので、
そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
(今回の登場人物)
 小宮山英子 彼との関係で苦しい 言葉が出ないクライアント
 高田和義 英子の恋人。義務感が強く「べき」で英子を縛る傾向がある。
 
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第四話 踊るセラピー
 
第三幕 つづき
 
 
「なつを君、なぜ踊ってもらったか、それは分かりますか?」
「えっ!? そこに目的というか、意図なんてあったんですか?」
「ありますよ。もちろん。」
「お願いします。教えてください。」
 
やはり、先生には意図があったのだ。踊るという方向に持っていった
意図が。なつをはまた、自分と先生の経験の深さに、あまりに大きな
隔たりがあることを感じ、愕然としていた。
 
 そんななつをの様子にはお構いなしに、ドクターは語り始めた。
 
「なつを君、VAKって知っていますか?」
「はい。人には得意なチャンネルがある。VがVisual、視覚。
AがAuditory、聴覚。Kがキネ・・・なんでしたっけ?」
「KはKinesthetic、通常は『体感覚』と訳しますが、
触覚や運動の感覚のことです。」
「あぁ、そうでした。」
「英子さんは、ヨガやダンスをしているとのことでした。このような、
体を使う趣味を持っている人は、大抵、VAKのK、体感覚が
優位のことが多いのです。」
「そうなんですね!」
 
「えぇ。そして、体感覚派の人は、自分の感情を体の感覚として
感じてみる、といったときに、非常に豊かな感覚を持っているわけです。」
 
「なるほど・・・」
「そして、一方で、その豊かな感覚を、十分に言葉で表現できるか、
といったら、必ずしもそうではない。」
「英子さんは、言葉による表現は苦手、ということなんですね。」
「いや、そのニュアンスは、少し違います。」
「えっ・・・?」
 
なつをはだんだん分からなくなってきた。いま先生は、英子さんは
VAKのKだと言った。一方でそれを十分に言葉で表現できない、
とも言った。だがしかし、言葉による表現は苦手、ではないと言う。
禅問答のようだ。
 
ドクターは続けた。
「言葉による表現は『苦手』なのではなく『人並み』なのだと、
私は思いますよ。但し、感情の感じ方、体の感覚の感じ方が、
人一倍繊細で豊かなので、その豊かな感覚を表現するには、
語彙が足りない、ということが起こるのではないかと思います。」
 
「あぁなるほど、体感覚が豊かすぎるから言葉に出来ない、
ということなのですね。」
「えぇ、そうだと考えました。」
 
「それで・・・?」なつをは先が知りたかった。
「そう、それで、踊って表現してもらおうというのは、私のその場の
思いつきなんですが、」ドクターはさらりと言いのけた。
(えっ!あんな大事な展開が「その場の思いつき」とは・・・この人、
真面目なんだかイイカゲンなんだか、理詰めで考える人なんだか、
直感で突っ走る人なんだか・・・分からなくなってきた)
 
なつをが当惑するのをよそに、ドクターは話を続けた。
「実際にダンスをやったりして、自分で表現をしているわけです。
英子さんは。だったら、その、いつも使っている『ダンス』という
チャンネルを使って、表現してもらったら、何か面白い表現が
出てくるかもしれない、まあそう考えたわけです。」
 
なるほど、聞いてみれば納得の説明だ。なつをは思った。
それにしても先生、それをその場で思いついて実践できるのがスゴイ。
 
 そういえば、なつをはもうひとつ思い出していることがあった。
何年か前、先生が「自分の感情が分からない」と主張する
クライアントのセッションをしているときだった。
そのクライアントは公認会計士で、日頃は企業の「健康」を
会計の数字で診断していく、そんな仕事をしている人だった。
 
頭に偏った仕事をしているからなのか、自分の気持ちを感じる、
ということについては、からっきし苦手なクライアントだった。
そして、やや無理をして元気を取り繕う、そんな傾向があった。
 
 そのクライアントに対して先生は、
「自己資本比率ってありますよね?」と切り出したのだった。
当然相手は企業会計の超専門家、知らないはずはない。
 
釈迦に説法のような話を始めて大丈夫なのかとなつをがヒヤヒヤ
しながら聞いていると、先生は平然とこう続けた。
 
「それと同じように、『自己元気比率』を考えてみてはいかが
でしょう。いま、あなたが表面的に持っている元気が、資産の部
だと思って下さい。企業会計でも、流動資産・固定資産、と表面的に
持っている資産がありますよね。そして、一方で、負債の部も
ありますね。短期借入金があって、長期借入金があって、
そして本当に自分の持ち物になっている分が、資本ですよね
 
・・・と、会計の細かい話はいいんですが、それと同じように、
今アナタが表面的に持っている元気を、借入金みたいな「カラ元気」
と、資本に相当する「自己元気」に分けてみて下さい。直感で、
このぐらいかなぁ、と判定すればそれでOKです。」
 
「なるほど。自分がいま持っている元気を、仮の、いや、借りの
元気と、自己資本の元気に分けて考えてみる、ということですね。
企業会計で、自己資本比率を月次でチェックするように、
自分の元気を・・・」
「毎日チェックして下さい。」
「なるほど、毎日ですね。」
なつをには、会計の話はイマイチピンと来なかったが、
そのクライアントには響いたようだった。そして、数回のセッションの
後、そのクライアントは自分の気持ちをちゃんと感じる習慣を
身につけたのだった!
 
 そのとき先生はこう言っていた。
「彼は、日頃から企業会計について考えるという頭の使い方を
しています。自分の気持ちを探る、という頭の使い方には、
慣れていないのです。慣れていないことを『とにかくやれ』と
やらせるのも、ひとつの考え方ですし、それが間違っているとは
思いません。ただ、彼が日頃から「会計頭」を使っているのなら、
同じ「会計頭」を自分の気持ちを探るためにうまく活用できれば、
少ない労力で、今直面している問題を解決できるのです。」
 
「そういうものですか?」
なつをはあまりに明確な方針を先生が立て、堂々と語るので、
圧倒されてしまった。
 
 その当時から、先生の方針は一貫している。相談者の持って
いるものを如何に上手に引き出して問題解決に当たるか。
使えるものは何でも使う、という方針だ。ただ、踊るセラピーは
インパクトがありすぎた。
 
なつをは「このセッションは一生忘れないだろうな」と思った。
 
 
(つづく)
 
 
↑この物語はフィクションですけどね、
でもね、私が実際に行ったセッションなどを参考にして、
書いています。セッションの流れや、考え方、
そして、実際に出した行動課題など。
クライアントの変化も、実際に起きた変化を参考にして、
物語として再構成しています。
(悩みの中身などは守秘義務があるので創作ですが。)
 
適当に読むなよ〜
ホントにガチだから〜
 
と、たまには本音を書いてみる・・・
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
あづまやすしのサイコロジーな毎日
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 心のデトックスマニュアル
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◆編集後記
 
バレンタインデー以来、チョコレート作りを続けている・・・
というこだわると止まらない私・・・
それで、とうとう、まあ、いいんじゃないかな、というレベルの
タンパク質が摂れて低糖質のチョコレートが完成したわけ。
いやー、やったぜ。でもホント面倒くさい。チョコレート。
だってね、amazonで乳鉢買ったから。あの、実験で使うような、
ゴリゴリ粉をすりつぶす、あの、乳鉢よ。それでエリスリトール
などの粉を15分ゴリゴリ擦って、ようやくギリギリ許容範囲、
て感じ。なめらかさを出すのはほんと大変なんです。
 
自分で作ってみて思ったけど、これを高校生の女子とかが、
作るって、本当に出来るのか? って思った。
ホントにちゃんと作ろうとしたら、相当高度だから!
化学系の大学院レベルの知識がいるから!(そこまでこだわる
のは私だけ?)いやホントマジで。

ふつうはすでにチョコになっているものを溶かして固める
だけだろうけど。カカオマス(砂糖を入れる前のチョコの原料)
から作ると途端に面倒になる・・・
 
なので、生チョコのような、水分多い系だったり、
チョコパウンドケーキみたいな、他の混ぜ物入れて焼いちゃえ
系だったり、そういうのを手作りした方がいいと思う。

粉砂糖にしてもエリスリトールにしても水分が多いと、
溶けてくれるので楽なんです。ジャリッとしないので。
 
ザ・チョコレートは大変だからマジで。
この意見、来年手作りする人は参考にしてね(爆)
 
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【ココヘル761】踊るセラピー(4)|恋愛ドクターの遺産第四話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 761号 2017.2.15
 
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現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
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ココヘル+
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【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
(今回の登場人物)
 小宮山英子 彼との関係で苦しい 言葉が出ないクライアント
 高田和義 英子の恋人。義務感が強く「べき」で英子を縛る傾向がある。
 
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第四話 踊るセラピー
 
第三幕 つづき
 
「なるほどね。では、ちょっとセッションのやり方を変えてみましょう。」
「はい・・・」
「私は、先ほどと同じ質問をします。でも、英子さん、あなたは、言葉で
答える代わりに、答えを体の動きで表現してください。」
「えっ!? あ、はい、分かりました。」
 
「では行きますよ。今の彼との関係を、どう感じていますか?
 体の動きで表現してください。」
「はい。」
英子は椅子から立ち上がり、直立不動、かなり力の入った
「気をつけ」の姿勢になった。
「ああなるほど、こうね。」ドクターも、着席したままだったが、
「気をつけ」の真似をして体に力を入れた。
「なんか、とても緊張して、苦しい感じが伝わってきますね。」
「そう!そうです!緊張するんです!」
英子は今日一番大きな声を出してそう答えた。
声も先ほどよりずいぶん明るい。
 
「では、彼との関係が、どうなったらいいと思いますか?
 また、体の動きで表現してください。」
「はい。こんな感じに。」
今度は、英子は体の力を抜き、腕をだらんと下げ、
そして体を左右にぐにゃりぐにゃりと曲げた。
「なるほど、ナイスなたこ踊りだ。」ドクターは笑いながらそう言い、
今度は椅子から立ち上がって、自らも同じ「たこ踊り」を踊った。
「あははは、そう、そういう感じです!」
「あはははは、こういう感じですね!よく分かりますよ!」
なつをもつられて笑ってしまった。
 
「もう一回やってみましょう。こんな感じ!」ドクターは、
今度は自らたこ踊りを踊った。
「あははははは、こんな感じです!」英子も踊った。
「あははははは」なつをもつられて、大笑いしてしまった。
 
「はい、では、なつをさんもやってください!こうです!」
ドクターは今度は、なつをにもたこ踊りをやるよう指示した。
「はい。」なつをは少し遠慮がちに体を左右に揺すった。
「いや、まだまだです。こうです!」ドクターはさらに大げさに
体を左右に揺すって、ぐにゃりぐにゃりとたこ踊りを踊った。
「えーっ!」そう言いながらも、なつをは今度は思い切って、
ぐにゃりぐにゃりと体をくねらせて、今日一番のたこ踊りを踊った。
「わははははは。」
「わははははは。」
「わははははは。」
三人とも、腹の底から笑った。
 
「さて。」少し落ち着いてきて、着席しながらドクターが言った。
「つまり、力が抜けて、自然体の自分で居られるようになりたい、
そういうことですね?」
「はい!そう、そうなんです!その言葉が出てきませんでした。
私、英語の先生なのに、うまく言葉が出てこないんですよ。」
「そうなんですね。楽しい先生ですね。」
「えっ?そうですか?」
「いいじゃないですか。体で表現すれば。生徒もついてきますって。」
「あ、そうですね。そういえば、それ、よくやっています。」
「でしょう? では、本題に戻りますが、さっきやった、こんな感じ」
そう言いながら、ドクターは少し体を左右に揺すって、続けた
「その感じになるには、具体的には、彼との関係で、何が出来たら
いいですか? あるいはどうなったらいいですか?」
 
「そうですね・・・思っていること、言いたいことが言えたらいいな、
と思います。」
「あぁなるほどね。もしかして、今日この場で起きたみたいな、
言えなくて沈黙、みたいなことが、彼との間でも起こることがある、
ということですか?」
「そう!そうなんです!」
 
「じゃあ簡単だ。彼にも、踊って伝えればいいんですよ。」
英子となつをは同時に吹き出してしまった。
 
その後、このセッションでは、英子が彼に自分の気持ちを伝える際、
踊って伝えてみるという行動課題が設定され、とくに、今日話した
「今の二人の関係は息苦しい」「自然体になりたい」というポイントを
(もちろん踊って)伝えることにチャレンジする、という重点課題も決まった。
 
「重点課題を決める」と言いながら、完全に楽しそうに作戦会議を
している英子とドクターを見て、なつをも一緒に楽しい気分になった。
そして、自分が学んだ「カウンセリングの基礎」などの真面目な方法論が、
カウンセリングのほんの入口に過ぎないことを改めて痛感したのだった。
 
(奥が深いなぁ)なつをは心の中でそう言った。
 
・・・
 
例によって控え室では、なつをがまた、ドクターを質問責めにしていた。
「先生、なんでセッションの時間に、踊るみたいなことを始めたんですか?」
「え? まあ、それで先に進んだじゃないですか。何か問題でも?」
 
「いや、先に進んだという点では、異論はありませんけど・・・
でも、そんなの、カウンセリングの教科書にも書いてないし、
あまりに変じゃないですか?」
「あぁ、確かに『あまりに変』ですね。」ドクターはニヤニヤしながら
答えている。「でも、『あまりに変』なやりかたが、結果的に停滞していた
セッションを動かしたのですから、結果オーライじゃないですかね?」
 
なつをは、自分の「常識」からあまりにかけ離れたセッションで
「うまくやった」ドクターに対して、何と説明していいか分からない、
混乱した気持ちを持っていた。だから、質問も的を射ていない。
 
「なつを君、なぜ踊ってもらったか、それは分かりますか?」
「えっ!? そこに目的というか、意図なんてあったんですか?」
「ありますよ。もちろん。」
「お願いします。教えてください。」
 
やはり、先生には意図があったのだ。踊るという方向に持っていった意図が。
なつをはまた、自分と先生の経験の深さに、あまりに大きな隔たりがある
ことを感じ、愕然としていた。
 
 そんななつをの様子にはお構いなしに、ドクターは語り始めた。
 
 
(つづく)
 
 
 
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★自習型のセルフセラピー教材
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◆編集後記
 
わが家のバレンタインデーは、今年は、私がチョコケーキを
(もちろん低糖質高タンパクで)作る展開に。
ま、ゆりか(学級閉鎖で自宅待機)と一緒にケーキ作りが
できたので、楽しかったけど♪
 
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【ココヘル760】踊るセラピー(3)|恋愛ドクターの遺産第四話

 

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恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第四話 踊るセラピー
 
第二幕 つづき
 
(ああ、先生もうやめて!)心の中でなつをは叫んでいた。
でも、この重苦しい沈黙を、自らが声を上げて破る勇気もまた、
なかった。
 
 もう、先生が何を質問したかも、いま、クライアントが何を
答えるべきなのかも、なつをの頭の中からは、完全に飛んでいた。
早くこの沈黙を終わらせてほしい。早く解放してほしい・・・
解放してほしいのが誰なのか・・・クライアントを解放してほしい
のか、私なつをを解放してほしいのかも、もう分からなくなっていた。
 
 なつをが、もう耐えられない。先生もうやめてください、
と言おうと思ったその時、ドクターが口を開いた。
「一旦休憩を挟みましょう。」
 
 
・・・
 
「先生! これではクライアントがかわいそうです!
詰問になっているじゃないですか!」
なつをはドクターに食ってかかった。
 
 沈黙が続き、セッションが進まないという判断から、
今日のセッションは異例の「中断」となったのだった。そして、
クライアントの英子はいま暫く休憩中、恋愛ドクターと助手のなつをは、
恒例の、控え室での大議論を演じているのだった。
 
「そうですね。私もそう思ったから、一旦休憩を入れたんですが。
ここまで言葉が出てこない方だとは想像していませんでした。」
 
「今まで、こんな方は、いらっしゃらなかったんですか?」
「そうですね・・・始めは、緊張などでなかなか言葉が出ないのかな、
と思っていたんですが・・・そういうクライアントさんは時々いらっ
しゃるので。ただ、ここまで時間が経っても、やはり言葉が出ない
というのは、クライアントの個性、というか現状というか、とにかく、
時間をかければなんとかなる、ということではないのは確かだと
思います。」
 
「でも、セッション自体がクライアントのストレスになって
しまってますよ!先生。」
「なつを君、キミは何か勘違いをしているようですが、セッションが
何のストレスにもならないのであれば、毒にも薬にもならない、
ということです。何か感情が動くときは、必ずストレスもかかる
ものなのです。優れた傾聴のカウンセラーは、お互いじっと黙って
いるようなセッションであっても、クライアントの心の中で何かが
動いているなら、じっと待つことが出来ます。沈黙に耐えられるのも、
カウンセラーとしての重要な資質です。」
 
なつをは「沈黙に耐えられない」とは自分のことを言われたような
気がしてどきりとした。ただ実際、クライアントに多大なるストレスが
かかっていたのもまた、事実ではあったので、どうしても自分の意見は
ゆずれなかった。そしてまたドクターに反論をするのだった。
 
「そう、そうですけど・・・でも・・・」
「セッションがストレスを生んだら即ダメ、沈黙していて言葉が
出なければ即ダメ、という単純な判断はおかしい、ということが
言いたかっただけです。今回のことに関しては、私も、
このまま進んでも、実りは多くないと判断しました。」
ドクターも今回のセッションは、このまま押していってもいい結果には
ならないという点で、なつをと同意見なのだった。
 
「では、どうするんですか?」
「そうですね。少し、周りから攻めてみますかね。」
 
「周りから・・・?」
「まあ、見ていてください。このぐらいでいちいちへこたれてたら、
カウンセラーはやっていけませんよ。」
 
 
 
第三幕 踊るセラピー
 
30分弱の中断後、再びセッション再開。
ドクターは、質問の焦点を少し変えたようだ。
 
「ところで、英子さんは、オフの日はどんなことをして過ごされるのですか?」
「えぇと、映画を見たりとか。最近はダンスを習っています。」
「なるほど。ヨガとかは?」
「あ、ヨガもときどき、全然熱心じゃないですけど、やっています。」
「マッサージとか、好きですか?」
「えぇと・・・まあ好きかと聞かれたら好きな方かな、とは思います。
以前はよくマッサージをしてもらいに行っていましたが・・・
最近はそれほど行かなくなりました。」
 
やっぱり先生、行き詰まったのかな。完全に違う話題だし、脱線だよね、
なつをはそう思った。ただ、脱線に見えて核心を突いていることが、
これまでも時々あったから、そう決めつけてはいけないな、
なつをはそう思い直した。
 
「なるほどね。では、ちょっとセッションのやり方を変えてみましょう。」
「はい・・・」
「私は、先ほどと同じ質問をします。でも、英子さん、あなたは、
言葉で答える代わりに、答えを体の動きで表現してください。」
「えっ!? あ、はい、分かりました。」
 
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
あづまやすしのサイコロジーな毎日
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 個別に丁寧に、問題を紐解き、解決策を提案しております。
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◆編集後記
 
今日はあるウェブサービスの(どう考えても相手側のミスで)
対応をしてもらうことになったのですが、
さらっとかわして、議論などはせず、さくっと解決♪
(大人になったなー、笑)
 
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 ・お名前はイニシャルにします。
 ・メール相談は行っていません。また、多数のメールを頂くた
  め、個別の返信はできないことがございます。
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 をするのが本誌の目的です。ご自身の責任にてご活用下さい。
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“【ココヘル760】踊るセラピー(3)|恋愛ドクターの遺産第四話” の続きを読む

【ココヘル759】踊るセラピー(2)|恋愛ドクターの遺産第四話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 759号 2017.2.10
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
 
★3/4・5@東京  4/1・2@広島(←広島も開催決定)
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
受付開始は本日の予定!ちょっと待って!
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、作品を書いています。
フィクションですが、症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて創作し、
プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、解説を「ココヘル+」の方で書いていますので、
そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
(今回の登場人物)
 小宮山英子 彼との関係で苦しい 言葉が出ないクライアント
 高田和義 英子の恋人。義務感が強く「べき」で英子を縛る傾向がある。
 
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第四話 踊るセラピー
 
 
第一幕(つづき)
 
「で、おまえは、どうしたいの?」早速「基本方針」の
確認をしてくる幸雄。しかし、会社の事業計画じゃあるまいし、
こんな突き放した言い方をされて、まともな答えが言えるわけがない。
 
(あぁ、やっぱり今まで通り。そもそも「話し合い」のやり方自体が、
関係を悪くしている気がする)ゆり子はそう思ったが、それを言ったら
さらにこじれそうで言えなかった。
 
「私は、もっと、通じ合って、安心できる関係ができたらな、
って思うんだけど。」
「オレに、何をしろ、と言っているのか、ハッキリ言ってくれ。」
(はぁ・・・またこの展開・・・)ゆり子はさらに暗い気分になってきた。
 
「あのね、私の気持ちを分かってもらえない、といつも感じていて、
それをあなたは、自分は悪くないみたいに言うから、ますます言えなく
なって・・・」
「あのさあ、オレの質問に対して、ちゃんと答えてないよね? 
『何をしてほしいか』の質問の答えは、『何々をしてほしい』でしょうが。
おまえこそ、オレの話をちゃんと分かっていないんじゃないか? 
こっちのセリフだよ。『分かってもらえない』てのは。」
 
「あのね、そういうことじゃなくて・・・」
幸雄がイライラしているように、ゆり子には見えた。
そして、それ以上何も言えなくなってしまった。
 
結局その日の「話し合い」は、幸雄の「お前は結局離婚したいのか?」
という質問責めに対して、ゆり子がかろうじて「結論を保留する」
ことで終わった。
帰りの電車の中で、精神的な疲労なのか、
ゆり子は、全身が震えて止まらなかった。
 
 
・・・
 
帰宅後、ゆり子は、また例のノート「恋愛ドクターの遺産」に頼って
みることにした。これまで何度も、このノートが、友達に相談する
よりも、本を読むよりも、良いアドバイスをくれた。ゆり子の父が言った
「適当に一冊選ぶんだ。すると、なぜか、その時に一番必要な
アドバイスが書いてある。」という言葉を、ゆり子も信じるようになっていた。
 
「えいっ」ノートは、段ボール箱に入っている。その中から一冊を、
ランダムに抜き出した。そして、またノートを開いて読み始めた。
 
 
・・・
 
 
第二幕 沈黙のセラピー
 
もう5分ぐらい沈黙が続いている。ドクターは落ち着いた表情で
じっと待っている。相談者の女性も、考え込んだふうで、黙ったまま
時間だけが過ぎていく。
 
「はぁ。」女性がため息をついた。「うーん、うまく言葉にできません。」
 
今日の相談者は小宮山英子。彼氏との関係が息苦しい、と相談に来た。
 
(別に皮肉を言うわけじゃないけど、彼氏との関係より、このセッション
の方が息苦しい)なつをはそんなことを思った。
とにかく、このセッションは沈黙が重たいのだ。先生がいつも通り、
大事なポイントを掘り起こす質問を投げると、いつも通りクライアントが
何か大事な答えを返す、のではなく、沈黙したまま場が固まってしまう。
ずっとその繰り返しだ。
 
「なんだか、うまく言葉に出来ないようですね。」ドクターが言った。
「はい。すみません。」英子が答えた。
 
「いや、気にすることはありません。すんなり答えられるようなら、
それほど大きな悩みではないということですから。『答えに詰まる』
というのも、ひとつのヒントです。こちらはそうやって受け取って
いますので、私に気を使う必要は、全くありませんよ。」
「ありがとうございます。」英子はそう言ったが、恐縮、いやむしろ、
いくぶん萎縮しているようにも見えた。
 
「でも、もう一度質問してみますね。
『今の彼との関係を、どう感じていますか?』」
英子は視線を下に落として考えている・・・考えている・・・
のだろうか? ただ黙ったまま、静かに時間が過ぎていく。
 
一分ほどたって、ようやく彼女が口を開いた。「苦しいです。」
 
苦しいのは今の気持ちだろうか、それとも、彼との関係が苦しいと
言ったのだろうか、なつをは思った。
しかし、先生はそんなことお構いなしのようだ。
 
「苦しいのですね。」
「はい。」
 
「では、その関係が、どうなったらいいと思いますか?」
 
再び場の空気が重くなる。英子は視線を下に落とし、再び沈黙し
始めた。十秒、二十秒、三十秒・・・一分、こんどは一分ほど
経っても、返答はなかった。
 
ドクターが何か言おうとするようなそぶりで息を吸ったとき、
ようやく英子が口を開いたのだが、その言葉は
「うまく言えません。」だった。
 
「なるほど。やっぱりなかなか言葉に出来ないようですね。」
ドクターは言った。
「すみません。」
 
 なつをは、この展開にやきもきし、口を挟みたくて仕方がなくなった。
先生の質問にクライアントがうまく答えられない、もどかしさ。
にもかかわらず、質問を引っ込めない先生。まるで意地の張り合い
みたいだ。なつをはこういう展開が苦手だ。
 
(ああ、先生もうやめて!)心の中でなつをは叫んでいた。でも、
この重苦しい沈黙を、自らが声を上げて破る勇気もまた、なかった。
 
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
あづまやすしのサイコロジーな毎日
https://556health.com/consultant/
 
 
 
 
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 セラピースキル満載の恋愛パターンの改善プログラムです。
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ご相談のご用命は、こちらから。
 
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◆編集後記
 
明日は「性格は食事が決める」セミナー。
新しいテーマのチャレンジなので、色々緊張します・・・
準備も・・・できているけど、ちょっと自信なし、みたいな。
 
こういうの、ある意味懐かしいなぁ。
最近、恋愛心理の分野では大体のことは対応できるように
なったので、守りに入っていたかもしれません。
 
たまには、こうやって完全に新しい分野にチャレンジする、
そうやって、自分の幅を広げることが大事ですね。
 
まあこのテーマが、今後の柱になるかどうかは、
まだ分かりませんが。
趣味から始まって仕事へ。このパターン、わりと好きです。
 
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 ◆自己紹介はこちらです↓(声の自己紹介があります!)
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【ココヘル758】踊るセラピー(1)|恋愛ドクターの遺産第四話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 758号 2017.2.9
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
 
★3/4
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
受付開始は少しお待ち下さい。
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、作品を書いています。
フィクションですが、症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて創作し、
プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、解説を「ココヘル+」の方で書いていますので、
そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
今回から新しいシリーズに入ります。
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 
 小宮山英子 彼との関係で苦しい 言葉が出ないクライアント
 高田和義 英子の恋人。義務感が強く「べき」で英子を縛る傾向がある。
 
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第四話 踊るセラピー
 
 
第一幕
 
(どうして幸雄さんとは通じ合えないのだろう。)
ゆり子は、まだ悩んでいた。
 
これまで、色々悩んで、本も読んで、そして、
「恋愛ドクターの遺産」のノートも読んで、色々勉強になったし、
色々気づきもあった。けれど、やっぱり、問題が解決する
ようには思えなかった。
 
(とにかく、話が通じないんだけどなぁ)
ゆり子はそんなことを考えていた。
 
心理学系の本を読むと、アダルトチルドレンの夫、みたいな話が
書いてあったりする。確かに、彼の実家の様子を見ると、少し
「私は私、あなたはあなた」的な空気を感じて、それと、夫の
個人主義的なものの考え方は、関係あるようには思う。
 
ただ、子供時代に、のびのびと子どもらしく過ごすことが
できなくて、周りに気を使いすぎる心理的傾向のまま、大人になって
しまって、という説明には、相当の違和感があった。
 
(むしろ、相手の気持ちを考えない、悪い意味での子供っぽさを
持ったまま、大人になってしまったように思えるんだけどなぁ)
ゆり子はいつも、そう思うのだった。
 
現在別居中の夫と、今日は久しぶりに「話し合い」のために
会うことになっていた。
お互い、感情的にならないため、という理由で、外で話し合う
ことにしている。今日はファミレスだ。ファミレスなんて、
まわりの人の耳があるから、大事な話が出来ないと思うかも
しれないが、一度やってみて分かった。周りの人の耳が一切ない
「密室」で話すより、よほどマシだと。
 
ゆり子は、一度誰かの講座で聞いたことがあった。
その講師はこんな風に言っていた。
「夫婦関係がこじれたときは、少し距離のある『他人』が聞いて
いる、そんな場所で話し合うといいですよ。人は、誰も見張って
いないと思うと、傍若無人になるものです。感情的になったり、
自分の主張ばかり押しつけて、相手の立場に一切立たない、などの
行動に出たり。」
 
その意見を思い出して、話し合いの場所をファミレスに決めたの
だった。そして、その講師はこうも言っていた。
「本来、人は生きる上で、自分の中に、たとえ誰かに見張られて
いなくても、曲がったことはしない、というような正義感、もう少し
大げさに言うならば心の中に『神』を持って生きるべきだと思います。
その『神』は、自分にだけ都合が良いルールを作ったりもせず、
逆に、他人にだけ都合が良いルールを作って自己卑下したりもせず、
上から、公平に人を見ている。そんな感覚であるべきです。しかし、
そういう『神』を持っている同士が夫婦になったのだったら、自分の
ことも、相手のことも公平に見ているわけですから、お互いに不満が
あることは、当然あるでしょうが、話し合いがこじれるほどには
ならないはずです。つまり、こじれた夫婦の場合、自らを律することが
できない、そう考えて、対応策を考えるべきなのです。」
 
そうなのだ。私にも反省すべき点はあるけれど、幸雄さんは、かなり
独善的で、彼に都合が良いルールを押しつけてくることが多かった。
あの講師の先生の言葉を借りて言うならば、
「自分の中に公平な『神』が育っていない」
ということになる。もちろん、その先生は、こうも言って釘を刺して
いた。「この話を聞いて、あなたの夫(または妻)が、自分の中に
公平な『神』を育てていない人だと感じた方も、多いと思います。
しかし、その結論を出すのは、完全に夫婦修復、または離婚の
どちらかが成立して、1年以上たってからにしてください。」
 
どうしてですか、という受講生の質問に対してさらに「それは、
そのような『話の通じない夫』も、職場ではしっかり
コミュニケーションが取れていて、仕事はきちんとこなしている、
というケースもよくありますし、一方的に相手だけの問題、
というよりは、二人で問題を作っている、という要素が、かなり
大きいことが分かっているからです。」そう答えていた。
 
質問者はぐうの音も出ない感じだったのを、ゆり子は今でも鮮明に
覚えている。もう2、3年も前に受講した講座のことなのに。
 
・・・
 
ゆり子は約束の時間よりも10分ほど早くファミレスに着いていた。
席に着き、おかわり自由のコーヒーを注文してから、周りを見ると、
20代前半ぐらいの恋人同士、作業服を着た仕事の休憩時間と
見受けられる数人の男性、小さい子どもを連れた母親、女性の数人の
グループ、という感じに、様々な人が利用している。幸いすぐ隣の
ボックス席には誰も居ない。
(今日はちゃんと「話し合い」になるのかな・・・)
ゆり子はそんなことを漠然と心配しながらコーヒーをすすった。
あまり味がしなかった。そんなことをしているうちに、幸雄がやってきた。
 
「おう。元気だったか。」
幸雄は相変わらず、感情のこもっていない挨拶をした。
「まあ、ふつう。」ゆり子は、あのお馴染みの、
気持ちがしぼんでいくような感覚を感じながら淡々と答えた。
 
この日の話し合いは、それぞれが離婚に向けて動きたいのか、
それとも、修復に向けて動きたいのか、そんな、これからの「基本方針」
について話す、ということになっていた。この「基本方針」という
言葉は幸雄が言った言葉だ。
「で、おまえは、どうしたいの?」早速「基本方針」の確認をして
くる幸雄。しかし、会社の事業計画じゃあるまいし、
こんな突き放した言い方をされて、まともな答えが言えるわけがない。
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
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◆編集後記
 
仕事のモチベーションを高めるために、何か良い案は、
と考えていって、結局mac関係の何かを買うのをごほうび
にするといい、ということに。
さらに具体的に、Appleの店員まで巻き込んで計画を立て、
(こんなAppleの立場としてはしょーもない相談に乗って
 くれる店員さんに感謝!まあmacを買うとテンションが
 上がるというお客さんに悪い対応はしないでしょうが)
結局、高解像度の純正ディスプレイをmacにプレゼント
するのが一番だという結論に・・・
 
オチがない駄話で失礼しました・・・
 
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【ココヘル757】婚難(10)|恋愛ドクターの遺産第三話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 757号 2017.2.7
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
★2/11 
 「性格は食事が決める」
 
 えーと。元生化学系のあづまが、
 低糖質ダイエットなど、最近はやりの「低糖質」に
 ついて、そして積極摂取すべき栄養素「タンパク質」
 について語ります。
 性格とは感情のクセや思考のクセのこと。
 そして、感情のクセや思考のクセと、不足した栄養素は
 関係があります!つまり栄養面から性格を変えられる
 可能性があるってこと。そんな話をします。
 ちなみに、血糖値の安定と感情の安定は関係するよ!
 http://bit.ly/2koH8KK
 
★3/4
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
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現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
 
本作品は、フィクションですが、
症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて
創作し、プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 かおり 相談者。彼氏いない歴7年 個性派の女性
 
第三話、ここまでのあらすじ
ゆり子はすでに別居中の夫、幸雄の「気持ちが分からない」ことに
悩んで例のノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を開いた。
そこでは、相談者のかおりが助手のなつをに、そしてドクターに
話をしているカウンセリング風景が展開している。ドクターは
かおりが恋人が出来ない理由を「美人だから」と喝破。さらに、
解決策として「出会いがある場で」「オッサンを出す」という課題。
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第三話 婚難(こんなん)
 
 
第六幕
 
「なつを君、かおりさんからメールが来ていますよ。」
「えっ!? 何ておっしゃっているんですか?」
「恋人候補が現れたそうです。」
「えーっ!すごい!どんな人なんですか?」
「読んでみてください。」
 
なつをは文面を読んだ。かなり長く、詳しく書いてある。
曰く、あのあと、ラフな服装で、気楽な居酒屋飲み会に参加する
ということを数回行ったのだそうだ。飲みものも食事も安いお店
での飲み会なので、参加する男性も、今まで出会うタイプとは
だいぶ違う人が混ざっていた。その中に、イラストレーターを
している、という男性がいた。収入の波があるので、良いときは
いいが、底の時が大変だと。だから自分の仕事に必要なものには
お金を掛けるが、飲み会も含め、生活は質素にしている、と。
 
正直、彼以外の参加者男性には興味が湧かなかった。彼は自分の
意思で居酒屋を選んでいるが、他の男性たちは、言葉は悪いが、
仕方なくそのランクのお店に行っている感じだった。
もう少し別の言葉で言うと、彼は自分の仕事に誇りを持っていた。
私は彼のそういうところに惹かれた、ということだった。
 
まだ、交際には至っていないそうだ。ただ、出会いの流れが良く
なったのは確かなようだ。かおりさんが、その彼と結ばれるのか、
それとも、また別のご縁を引き寄せるのか、それはまだ分からない。
でも、いずれにしても、幸せに向かいそうな雰囲気がすごく感じられた。
 
「先生、すごいですね!」
「何が?」
「何が、って、先生のセッションの効果ですよ!」
「あぁ、まあ、かおりさんがちゃんと行動した結果ですよ。」
「そうですけど・・・今までずっと恋人ができなかったのに、
一気に可能性が拓けた感じですよ?」
「そうですね。こういう展開は面白いですね。」
 
でた!「面白い」発言。先生がよく言う言葉だ。先生の言う「面白い」
には明確な定義がある。会話で使う言葉に、定義があるというのも
ヘンな言い方だが、とにかく、定義があるのだ。それで、その
「面白い」の定義だが、それは
(1)問題が目の前にある 
(2)それを解決する力(や環境)がある 
この(1)(2)の両方が揃っていることを「面白い」と言うのだそうだ。
 
(1)が足りない場合は、解決力はあるのに問題がなくて「退屈」
になるし、(2)が足りない場合は、問題があるのに解決力がなくて
「苦しい」となる。目の前に問題があり、その問題をちょうど解決
できるほどの、問題解決力、問題への対応力を持っている。
それが先生の言う「面白い」の定義だそうだ。確かに、かおりさん
なら、この問題もじきに解決してしまうだろう。
 
 
・・・
 
ゆり子はノートを閉じた。
はぁ、とため息が出た。
(私は、幸雄さんとの問題を解決する「解決力」が足りないのかな
・・・今目の前に横たわっている問題が解決できなくて「苦しい」
もの・・・)
 
ゆり子は考えていた。私は本当に、相手のコックピットに座るように、
相手の体験を想像できていただろうか、と。私は結局なつをさんの
ように、相手の「立場」には立ったが、自分の感じ方で理解したつもり
になっていたのではないか。
「でも、幸雄さんを理解することなんて、できるのかな・・・」
 
セットしていたアラームが鳴った。ぐるぐる思考タイムに、ゴングが
鳴って終了、といった感じにはなったが、そのまま続けていても
生産的ではなかっただろうから、丁度良かった。幼稚園のお迎え、
夕食の支度など、忙しく過ごすうちに、ノートのことはゆり子の
意識の端に追いやられていった。
 
 
・・・
 
(あ、この人、過剰に相手のコックピットに座ってしまう人なんだ)
ゆり子はそう思った。テレビを見ていたら、匿名で、姿も隠して
DV経験者という女性がインタビューに答えていたのだが、
それを何気なく眺めていたら、そんな風に思ったのだ。
 
相手が暴力を振るうときの、その相手の苦しい気持ちに共感して
しまうので「やめて」「つらい」という、自分の側の気持ちと
一緒に居られなかったのだと、その女性は語っていた。解説役の
心理カウンセラーが「ここまで自分の気持ちや、自分の傾向を
客観的に語ることができるようになったからこそ、彼女はDVを
抜け出せたのです。渦中にいるときは相手の気持ちしか考えず、
自分の気持ちを感じることができなかった」と説明していた。
 
彼女の話を聴きながら、ゆり子はぼんやりと、幸雄のことを
思い出していた。共感力のない会話、そしてときに「キレる」とも
言える言葉。確かにゆり子にとっては辛いことばかりだったが、
そのときに幸雄はどんな気持ち、どんな感覚でいたのだろう?
とゆり子は想像していた。
 
(・・・なんだか、苦しそう・・・)ゆり子は思った。思い出して
みると、声を荒げたり、無視するような冷たい態度を取るときの
幸雄は大抵、苦虫をかみつぶしたような、渋い顔をしていることが
多かった。おまけに・・・これは考えすぎかもしれないが・・・
長年そういう心を持ち続けて生きてきたために、渋い顔をするときの、
顔のしわが、顔に刻まれて消えなくなっているようにも思えた。
 
そんな幸雄の、心のコックピットに座るように想像してみると、
自分が何かすると、妻(つまりゆり子だ)からダメ出しをされ、
本当は愛されたいのに、そして愛したいのに、どうしていいか
分からない。自分なりに工夫をしてみると、裏目に出る。その無力感、
悔しさ、寂しさ、悲しみが、自分事のようにありありと感じられた。
 
(あぁ、これが、相手のコックピットに座る、ということなのね)
ゆり子は思った。相手の立場に自分を置いてみただけだったら、
「私ならそういう行動はしない」と思うだけで終わりだっただろう。
 
事実、ゆり子は共感力のある方だし、滅多に声を荒げたりしない。
ゆり子の思考回路・行動パターンからすれば、幸雄は「理解不能」
だったのだ。いま初めて、幸雄の気持ちの中に入れた気がした。
理解不能な夫が、少し理解できた・・・気がした。
 
「でもやっぱり、一緒にやっていく自信はないなぁ・・・」
ゆり子はつぶやいた。
 
 
第三話 終
 
第四話に続く
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
あづまやすしのサイコロジーな毎日
https://556health.com/consultant/
 
 
 
 
★自習型のセルフセラピー教材
 幸せな恋愛・結婚・人間関係のための
 心のデトックスマニュアル
 https://www.556health.com/selfcare/
 
★「阿妻式恋愛眼力トレーニングDVD」
 21日間のトレーニングで学ぶ 潜在意識レベルの変容を目指した、
 セラピースキル満載の恋愛パターンの改善プログラムです。
http://bit.ly/12X06ZC 
 
 
 
ご相談のご用命は、こちらから。
 
★恋愛・人間関係コンサルティング(旧名称:恋愛セラピー)はこちら。
 
 個別に丁寧に、問題を紐解き、解決策を提案しております。
 https://www.556health.com/consulting.html
 
 
 
◆ココヘル主催のワークショップ・セミナー一覧はこちら
 https://www.556health.com/work.html
 
 
◆編集後記
 
最近、朝食べるタンパク質の種類を「散らす」ことにしました。
同じ種類のタンパク質に偏ると、自覚できないぐらいの微妙な
アレルギーになる(アトピーとかはでなくても、眠くなるとか)
ことがあるそうで、曜日によって変えるようにしました。
 
そのせいか、調子が良い気がします。
 
そういう話も、このセミナーではお話しします。
2/11「性格は食事が決める」  http://bit.ly/2koH8KK
 
 
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 ◆女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学
 祝!TBS・日テレ・フジテレビ出演(目指せNHK!)
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 ・お名前はイニシャルにします。
 ・メール相談は行っていません。また、多数のメールを頂くた
  め、個別の返信はできないことがございます。
 もっと幸せな恋愛・結婚生活・人間関係を求める方に情報提供
 をするのが本誌の目的です。ご自身の責任にてご活用下さい。
 ◆制作:阿妻靖史(あづま やすし 恋愛セラピスト)
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  https://www.556health.com/archives/2005/07/post_5.html
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【ココヘル756】婚難(9)|恋愛ドクターの遺産第三話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 756号 2017.2.6
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
★2/11 (内容を吟味し、タイトル変わりました)
 「性格は食事が決める」
 えーと。心理学と直接関係ないのですが、
 低糖質ダイエットなど、最近はやりの「低糖質」に
 ついて、そして積極摂取すべき栄養素「タンパク質」
 について、あづまが語ります。
 ま、こう見えても元化学系。大学は生化学系でした。
 ちなみに、血糖値の安定と感情の安定は関係するよ!
 http://bit.ly/2koH8KK
 
★3/4
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
受付開始は少しお待ち下さい。
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
 
本作品は、フィクションですが、
症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて
創作し、プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 かおり 相談者。彼氏いない歴7年 個性派の女性
 
第三話、ここまでのあらすじ
ゆり子はすでに別居中の夫、幸雄の「気持ちが分からない」ことに
悩んで例のノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を開いた。
そこでは、相談者のかおりが助手のなつをに、そしてドクターに
話をしているカウンセリング風景が展開している。ドクターは
かおりが恋人が出来ない理由を「美人だから」と喝破。
そして、仕事ができることも、引き寄せに悪影響を与えるとも。
ドクターは一体、これらをどう解決するのだろうか。
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第三話 婚難(こんなん)
 
第五幕
 
セッションが終わって、なつをはひとりで、
セッションを振り返っていた。
(先生は、かおりさんと、あっという間に打ち解けていた。
先生がかおりさんに無理して合わせたという感じはなかった。
私は少し無理して合わせていたのに・・・)なつをは、
そんな風に振り返っていた。
 
そして、以前先生が言っていた「他人のコックピットに座る」という
話を思い出していた。かおりさんはきっと、先生が自分の立場に立って
一緒に考えてくれているという安心感を感じていたに違いない。
その大事な秘訣が、他人のコックピットに座る、ということなのだ。
 
以前のセッションで、こんなことがあった。
その相談者は、変わった性癖の持ち主だったので、なぜそこにそれほど
執着するのか、自分の感覚を基準に考えたら、なつをにはまったく
分からなかった。しかし、先生は、その相談者に寄り添い、相談者の
感覚を少しずつ理解していった。
 
セッションが終わったあと、なつをは先生に質問した。
「そんなものに執着しても、男女関係が面倒になるだけですよね?
 なぜ、そんなにこだわるのでしょうか?」
「なつを君、君は、自分の感覚を基準に相談者を見ていませんか?」
 
「えっ?」なつをは、何を言われているのか、よく分からなかった。
「先生、私は彼の立場に立って見て、そして、自分だったらどう考えるか、
想像してみたのですが、それではダメだということでしょうか?」
 
「では少し、基本から説明しましょう。」先生はそう言って、基本から
教えてくれたのだった。「まず、彼の立場に立たずに、『奥さんがいる
のに、そこに興奮するからと言って、別の女性に手を出したらダメ
でしょう。』なんて言うようでは、これは、カウンセラーとして完全に
アウト。これでは、相談者はお金を払って、自分のことを全く分かって
くれない人に話をしに来てしまった、こんなところに来るんじゃ
なかった、と思って、もう、セッションの信頼関係はおしまいです。」
「それは分かります。」
「次の段階として、彼の立場に立ってみる、というのがあります。私も、
このポジションから話をすることは、よくあります。だから、彼の立場
に立ってみて『私だったら、そこに執着しても、男女関係が面倒になる
だけ、と感じました。』と発言してみるのは、これは、カウンセリング
として、アリだと思います。」
「なるほど。先ほどの私の意見は、アリなんですね?」
 
先生は少し天井を見るように目を動かして、それからこう言った。
「但し、その場合、あくまで『私は』という言葉を入れて、私の感じ方、
私の価値観で言えば、ということを明確にすることが前提です。
なつを君がもし、私は、という言葉を入れずに『そこに執着しても、
男女関係が面倒になるだけですよね。』と言えば、
それは、一般論として、という意味になります。相談者よりも偉い
カウンセラーの私が、世界を代表してものを言います、という
ニュアンスになる危険性があるのです。」
「そうなんですか?」
「それはそうでしょう。だって、ご本人だって、どこか、その性癖を
恥じていらっしゃったりして、そこに傷口に塩を塗られるように否定
されたら、どう思うのか、想像すれば分かるじゃないですか。」
「あぁ、そうか。そうですね。」でも私は、まだ釈然としないものを
感じていた。
それを察したのか、先生は、続けて次のことを言った。
「もしここに、繊細なA子さんと、剛胆なB男君が居たとします。
ふたりは道を歩いていました。目の前に、ちょっと気持ち悪い何かの
動物の死骸があったとします。それはちょうどA子さんの真ん前に
ありました。で、A子さんは『ぎゃっ』といって飛び退くわけです。」
「・・・はあ、なるほど。」
「それに対して、B男君が、
『A子さんの立場に立って』『自分のことのように』想像してみた
とします。B男君、ちょっと頑張りました。」
「はい。」
「しかし、B男君は、A子さんほど敏感でも繊細でもないので、
そんなに驚かないわけです。『あ、ちょっとびっくりするよね。』
ぐらいの感じでしょうか。」
「そうでしょうね。」
「では、これで、B男君は、A子さんの体験を理解したことになる
でしょうか?」
「あぁ、A子さんの身に起きた『出来事』は理解したことになると
思います。」
「そうですね。A子さんの身に起きた、外側の出来事は、理解しました。
でも、A子さんの内側で起きた反応、ものすごくびっくりした感情の
動きなどは、B男さんは体験していないことになります。」
「それは、仕方ないことなんじゃないですか?」
「もちろん、その相手に、完全になることは無理ですから、仕方ないと
言えば仕方ないことです。でも、『立場に立つ』だけでは、不十分だ
ということは、分かりますか?」
「・・・分かります。でも、では、どうやって・・・」
「それが、私が言っている『相手のコックピットに座る』想像をする、
ということなのです。相手がどんなところで反応し、どんなことを喜び、
どんなことに恐怖し、何を不満に思うのか。そういうことを色々聞いて
いくうちに、ある程度までは、相手の感情的な反応まで、想像することが
可能になります。」
「そんなものですか・・・」
「たとえば、剛胆なB男君も、あるとき、自動車を運転していて
『あわや大惨事』という場面に遭遇して肝を冷やした経験があった、
とします。さすがのB男君も、ちょっと怖かったわけです。」
「・・・はい・・・?」
「そういう経験を思い出してみて、『あぁ、A子さんは、動物の死骸を
見ただけでも、自分が事故のニアミスを経験したときぐらいの衝撃を
受けるのかもしれないな。』と想像することは、できるはずです。
自分より何倍も感情の振れ幅が大きいと想定すればいいわけですから。」
 
「あぁ!なるほど!じゃあ、私の場合、剛胆な人の『コックピットに座る』
場合、自分より何分の一しか、感情が振れないと想像してみればいい
わけですね?」
「そういうこと。」
 
そう、先生は、こんな風に、相手の内面で起きている事も含めて、
できるだけ理解するように努めることが大事、ということをいつも
教えてくれた。
そしてそれを「他人のコックピットに座る」と表現していた。
 
それをなぜか、私なつをは思い出していた。きっと、私にとって、
感じ方や考え方がずいぶん違うと感じる、かおりさんのセッションを
理解するに当たって、「かおりさんのコックピットに座る」想像が必要
だったからだろう。ほんと、カウンセリングは脳味噌フル回転だなあ、
なつをはいつもながら、そう思った。
 
 
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
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ご相談のご用命は、こちらから。
 
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 個別に丁寧に、問題を紐解き、解決策を提案しております。
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◆編集後記
 
次なる高タンパクスイーツはたい焼きがいいかも!
 
あ、でも、2/11のセミナーのあとのお茶会には、
チョコパウンドケーキ(レシピ付き)が登場する予定。
 
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【ココヘル755】婚難(8)|恋愛ドクターの遺産第三話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 755号 2017.2.2
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
★2/11 (内容を吟味し、タイトル変わりました)
 「性格は食事が決める」
 えーと。心理学と直接関係ないのですが、
 低糖質ダイエットなど、最近はやりの「低糖質」に
 ついて、そして積極摂取すべき栄養素「タンパク質」
 について、あづまが語ります。
 ま、こう見えても元化学系。大学は生化学系でした。
 ちなみに、血糖値の安定と感情の安定は関係するよ!
 明日受付開始予定です。
 
★3/4
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
受付開始は少しお待ち下さい。
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
 
本作品は、フィクションですが、
症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて
創作し、プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 かおり 相談者。彼氏いない歴7年 個性派の女性
 
第三話、ここまでのあらすじ
ゆり子はすでに別居中の夫、幸雄の「気持ちが分からない」ことに
悩んで例のノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を開いた。
そこでは、相談者のかおりが助手のなつをに、そしてドクターに
話をしているカウンセリング風景が展開している。ドクターは
かおりが恋人が出来ない理由を「美人だから」と喝破。
そして、仕事ができることも、引き寄せに悪影響を与えるとも。
ドクターは一体、これらをどう解決するのだろうか。
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第三話 婚難(こんなん)
 
第四幕ー3
 
 
「それから。」ドクターは続けた。「美人問題があると、
自然体の自分で居るかどうか、という条件が、より厳しくなります。」
「そうなんですね? 美人って、それほど得していないような・・・」
苦笑しながらかおりは言った。
 
「まあ、苦労もありますよね。ただ、うまく舵取りできれば、
印象が何倍にもなる、という特性は、人によっては喉から手が出るほど
ほしい「素質」になると思います。」
「そうなんですね。私はいままでうまく舵取りできていなかった、
ということなんですか?」
「恋愛に関しては、そうだと思います。」
「先生、はっきりおっしゃって下さるところがイイです。」
「はは。ありがとうございます。思っていないことは言えないタチなので。」
 
ドクターは少しの間黙っていて、そして、もうひとつ質問した。
「ところで、オッサンぽいところは、家に居るときも発揮されていますか?」
「それが、自分ではよく分からないんですが、友達に言わせると、
家では意外なほど女性っぽいらしいです。」
「へぇ。それはどんなところを見て、お友達はそうおっしゃるのですか?」
「忙しいときはできないんですが、料理をしたり、家の中をキレイに
片付けていたり。豪快な飲みっぷりとは裏腹に部屋が女っぽい、
と友達に言われました。」そう言ってかおりはくすっと笑った。
 
「それも、何かの機会に表現するといいですよ。」ドクターは言って、
しばらく考えた後、さらに続けて聞いた。
「そう、部屋汚す人、いやでしょ?」
「あぁ、まあ、使えば汚れるものですけど、極端に部屋が汚い人は嫌ですね。
自分で使ったものぐらいは自分でゴミ箱に入れられるぐらいでないと・・・」
「そういうことも、話題に出すといいですよ。」
「・・・どんな風に?」
「たとえば、居酒屋でデート、あるいはその前の段階で、何人かで集まって
飲み会をしたとしますね。そのときに、『部屋をきれいにするのが趣味で』
『趣味の合う人がいい』って言ってみるわけです。」
 
「私、以前、男の人の部屋を見ないと信用できないとか思って、何かと口実を
作って部屋に上がり込んで観察する、ということをしてみたことがあるん
ですが・・・」
「それ、結構煙たがられたんじゃ?」
「はい。あるとき、相手の男性から『かおりさんは、何だか私のことを
見張りにうちに来たみたいです。とても嫌な感じですよ。』とハッキリ
言われたことがあって。それで、やめました。」そういいながら、
かおりは少し暗い表情になった。
「ですよね。相手を『見よう』『見よう』とすると、パートナー選びの行動
パターンが悪趣味になりがちなんですよね。」
「確かに、他人の部屋を勝手に「査定」するために上がり込むなんて、
今考えるとかなり失礼な行動だったと思います。」
「そうなんです。だから、相手を見て査定するのではなくて、
自分を見てもらう、という姿勢が有効なんです。この場合ですと部屋ですから、
部屋を見てもらう、というのが一番直接的ですが、さすがにまだ交際して
いない男性を家に入れるのは、抵抗があるかと思いますので、飲み会の場で、
部屋の写真などを見せて、相手がその話題に食いついてくるかどうかを見る、
その方がスマートなやり方です。」
「なるほど・・・」
 
「たとえて言うなら、『お部屋きれいにする人この指とまれ♪』という風に
言って仲間を集めるようなものです。その『指』にとまってくれる人とは、
『お部屋をきれいにする』という面では通じ合う可能性が高いです。
相手を見よう、見よう、とするよりもよい結果をもたらすと思いますよ。」
「なるほど・・・自分を見てもらうという発想はありませんでした。
私、相手を『見よう』『見よう』としていました。」
「ひとつ気づいたわけですから、これからはきっと、パターンが変わって
いきますよ。それに、仕事の時、外に出ているときの『オッサン』の部分、
男性っぽい部分も正直に出すけれど、家に居るときの女性らしい部分も、
正直に出してみると、きっとバランスが取れるし、魅力が増すと思いますよ。」
 
「ありがとうございます。なんだか、方針を最後まで聞いてみたら、
ああ、自分を全部出していけばいいんだ、自然体の自分でいいんだ、
って思えて、肩の力が抜けた気がします。」かおりは、くすっと笑った。
 
(なんか、このセッションの時間の中でも、かおりさん、色っぽく変化
したなぁ)なつをは思った。以前、先生から「良いセッションは、
セッション後の行動課題などで起きてほしい変化が、セッション中にも
起きるものなのです。」と言われたのを思いだした。きっと、かおりさんは、
素の自分を出して、現実の出会いにも変化を生み出していくのだろう。
 
「というわけで」ドクターは続けた。
「居酒屋デートにGパンとTシャツで参加する、という「オッサンぽい」
ところをアピールする行動課題と、主にそういう場面で、意外に片付いた
お部屋の写真を見せるなどして、「家では女性らしい」ところをそっと
アピールする、というふたつの、対極の自分を見せるという課題を、
今回の課題としたいと思います。」
 
「はい。よく分かりました。」
 
かおりさんは、すでに、ニコニコしている。これはきっと、
自分で「できる」と思っているんだろうな、なつをはそう感じた。
 
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
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★自習型のセルフセラピー教材
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 心のデトックスマニュアル
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★「阿妻式恋愛眼力トレーニングDVD」
 21日間のトレーニングで学ぶ 潜在意識レベルの変容を目指した、
 セラピースキル満載の恋愛パターンの改善プログラムです。
http://bit.ly/12X06ZC 
 
 
 
ご相談のご用命は、こちらから。
 
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◆編集後記
 
カカオマスとココアバターからチョコを作ってみたんですね。
もちろん、砂糖を使わずに、そして折角なので、
ホエイプロテインを入れて。ミルクチョコも売っているぐらい
だから、ミルク系の風味が入るのは問題ないはず・・・
 
で、結果は・・・代替甘味料のエリスリトールを予めミルで
細かくしたんですが、それでも少しジャリッとする感じが残り。
 
これをなめらかにするのは、ふつうのキッチンの道具だと、
ちょっと無理かも。
 
チョコの風味は本物のカカオマスから作ったから良かったし、
チョコ自体の食感も、パキッと割れる固い感じ(結晶化が
うまくいったということ)で、以前横浜で習ったとおり、
ちゃんと出来たので・・・
 
少しの「ジャリッ」が惜しかった・・・
 
ま、また名案を思いついたら再チャレンジするかもです。
 
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【ココヘル754】婚難(7)|恋愛ドクターの遺産第三話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 754号 2017.1.31
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
★2/11
 「混ぜるな危険!? 低糖質健康法の真実」
 えーと。心理学と直接関係ないのですが、
 低糖質ダイエットなど、最近はやりの「低糖質」に
 ついてあづまが語ります。
 ま、こう見えても元化学系。大学は生化学系でした。
 ちなみに、血糖値の安定と感情の安定は関係するよ!
 
★3/4
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
受付開始は少しお待ち下さい。
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
 
本作品は、フィクションですが、
症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて
創作し、プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 かおり 相談者。彼氏いない歴7年 個性派の女性
 
第三話、ここまでのあらすじ
ゆり子はすでに別居中の夫、幸雄の「気持ちが分からない」ことに
悩んで例のノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を開いた。
そこでは、相談者のかおりが助手のなつをに、そしてドクターに
話をしているカウンセリング風景が展開している。ドクターは
かおりが恋人が出来ない理由を「美人だから」と喝破。
そして、仕事ができることも、引き寄せに悪影響を与えるとも。
ドクターは一体、これらをどう解決するのだろうか。
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第三話 婚難(こんなん)
 
第四幕
 
セッションは進み、終了時刻が迫ってきた。
そろそろ今日の行動課題を出して、まとめる段階だ。
 
「では、行動課題を考えましょう。」ドクターが言った。
「はい。」
 
「かおりさん、あなたの『オッサン』的な部分を、
『恋人と出会う可能性のある場所で』積極的に出してみよう、
というのが、今回の課題です。」
「少し抵抗ありますね。」かおりが苦笑しながら言った。
 
「ところで、『オッサン』ぽい、とは、
たとえばどんなことでしょう?」
「えぇと、たとえば、おしゃれなフレンチレストランよりも
居酒屋で日本酒にスルメ、みたいな飲み方が好き、とかですかね。」
 
「なるほど。居酒屋好き、と。ほかにはどんなところがありますか?」
「服装や、小物、文房具などを選ぶときに、周りの女性は「カワイイ」
という基準で選んだりするみたいですが、私は機能重視。
カワイイは二の次、という基準ですね。服装は最近は少し女性らしい
のを選ぶようにしていますが、他は相変わらずです。女性と文房具を
買いに行ったりすると、選ぶ基準の違いにびっくりします。」
 
「なるほど。カワイイ、という選択基準があまりない、と。
もうひとつぐらい行ってみましょう。」
「あの・・・これは、ちょっとヘンな言い方かもしれませんが、
私、体を触られることにあまり抵抗がないんです。」
「ほう、なるほど。触られることにあまり抵抗がないと。」
「はい。同僚の女性が、飲み会の席でひざ、というかももに手を
置かれて、とても嫌がっていました。実は私も、そういうことが
あったのですが、意外にも平気だったんですよね。同僚として
普通に仲良くしているぐらいの男性だったら、そんなに気になら
ないというか。かといって、その人と深い仲になろうと思うわけ
ではないんですけど。」
「確かに、感覚的には、男性っぽい感じがしますね。」
 
ドクターは続けた。
「さて、色々な点を挙げてくださいましたが、今おっしゃった
中で、一番気になっているところ、一番自分の『オッサンぽさ』
を際立たせているところはどれか、と考えてみると、どれですか?」
「やっぱり居酒屋にスルメ、ですかね。」
「なるほど。それですか。なら、行動課題は、それをオープンに
する、ということですね。」
「オープンに・・・みんなに言う、ということですか?
 それならもう、職場中に知れ渡っていますけど・・・」
 
「職場には、恋人になる可能性のある出会いはありますか?」
ドクターは尋ねた。
その瞬間、あっ、と言って、かおりははっとした表情になった。
 
やっぱり先生は、言葉の使い方が厳密だ。なつをは思った。
さきほど先生はなんと言ったか。それは
「出会いの可能性のある場所で」
「オッサンを出す」と言ったのだ。
 
出会いの可能性が薄い場所でどんなにオッサンしても、
この行動課題は意味がないのだ。そのあたり、かなりよく理解し、
深く読んで、言葉を発している。
 
かおりはしばらく考えて、言った。
「いや、職場は年配の男性が多くて、私の結婚相手、
という意味ではあまり出会いはないですね。」
「そうですか。では、職場以外で、出会いの可能性のある場所
・・・というか今回の場合場所は居酒屋になりそうなので・・・
出会いの可能性のある人間関係で、オッサンを出す、というのを
やってみたいんですけどね。そういう機会、作れますか?」
 
「居酒屋で適齢期の男女が集まって飲み会、みたいなことですかね?」
「まあ、そういう感じ、そういう方向性でしょうね。」
「そういえば、学生時代とか、まだ「普通の女性になる努力」をする
前には、よく居酒屋で飲んだりしていましたが、その後、出会いを
求めるときはおしゃれなお店で、出会いを求めないときは、たとえば
職場のおじさんたちと居酒屋、みたいな感じになっていましたね。」
「それを、ちょっと変えてみる。居酒屋でデート、という方向で。
服装はTシャツとGパンでもいいけど、Tシャツはちょっとカワイイ
とか、脱いだ靴が実はセクシーなハイヒールだったとか、女性らしさも
入ってる、というような感じでいくのが大事です。」
 
「あぁ、想像してみて、何となく分かってきました。
私が、自分らしく居る、ということなんですね?」
「そう、そうなんです。そこなんです。一度、男性受けする、
平均的な女性像を目指してみて、その要素をそれなりに身につけたら、
もう一度戻ってきて、自然体の自分で居るようにする。これがコツです。」
 
「私、こうして色々話をして、よく考えるまでは、何が自分にとって
自然体の自分なのか、よく分からなかったんだと思います。」
「そうですね。人は、少しずつ、周りの期待に合わせて自分を作って
いるものだと思います。そして、それが空気のようになっていて、
実は少し無理して合わせていたのか、それとも、実はそれが自然体の
自分なのか、なかなか分からないこと、あると思います。」
「そうですよね。私も分かっていませんでした。」
 
「それから。」ドクターは続けた。
「美人問題があると、自然体の自分で居るかどうか、
という条件が、より厳しくなります。」
 
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
あづまやすしのサイコロジーな毎日
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◆編集後記
 
幸恵ちゃんが低糖質のチョコを試作・・・
なるほど・・・
なんか、負けたくないぞ、と思ってしまった(笑)
まあそんなこと、張り合っても仕方ないんだけど・・・
美味しければいいんですけどね、美味しければ。
 
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“【ココヘル754】婚難(7)|恋愛ドクターの遺産第三話” の続きを読む

【ココヘル753】婚難(6)|恋愛ドクターの遺産第三話

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 753号 2017.1.30
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
今後のセミナー予定
★2/11
 「混ぜるな危険!? 低糖質健康法の真実」
 えーと。心理学と直接関係ないのですが、
 低糖質ダイエットなど、最近はやりの「低糖質」に
 ついてあづまが語ります。
 ま、こう見えても元化学系。大学は生化学系でした。
 ちなみに、血糖値の安定と感情の安定は関係するよ!
 
★3/4
 運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ
 ベストパートナーと出会うための、
 現在あづまが信じる「ベスト」の方法。
 個性に合わせたセミオーダーメイド的な、
 方針を作ります。
 
受付開始は少しお待ち下さい。
 
 
 
現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
 
本作品は、フィクションですが、
症状、問題の原因、解決の指針などは、
実際に行われたセッションや、あづまの考えを元にし、
リアリティーを大切にして制作しております。
逆に悩みの内容などのディテールは全て入れ替えて
創作し、プライバシーに配慮しております。
作品ですので、ある程度の誇張・脚色がございます。
 
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 かおり 相談者。彼氏いない歴7年 個性派の女性
 
第三話、ここまでのあらすじ
ゆり子はすでに別居中の夫、幸雄の「気持ちが分からない」ことに
悩んで例のノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を開いた。
そこでは、相談者のかおりが助手のなつをに、そしてドクターに
話をしているカウンセリング風景が展開している。ドクターは
かおりが恋人が出来ない理由を「美人だから」と喝破。
そして、仕事ができることも、引き寄せに悪影響を与えるとも。
ドクターは一体、これらをどう解決するのだろうか。
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)
 
第三話 婚難(こんなん)
 
第四幕
 
次のセッションの日は、すぐにやってきた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「最近どうですか。」ドクターは尋ねた。
 
「えーと、まぁいつも通りですが、前回ご相談させて
いただいたおかげか、気持は少し楽になりました。」
ドクターが何かいいかけたところ、遮るようにかおりが言った。
 
「そう、前回の課題ですけど、男性って、頼み事をすると
結構助けてくださるんですね。なんだか少し申し訳ない
ような気持ちもしますが、ちょっと嬉しかったりもします。」
 
「いいですね。そうやって出来事を味わって過ごすことは、
とても大切です。すでに、いい流れを作ってるんじゃないかな。」
 
「ありがとうございます。それで、
先生、どうしたら解決するのでしょうか?」
 
ドクターは腕組みをしながら話を聞いていたが、
小さく深呼吸をした。そして腕をほどいて、身振りを交えて
説明をし始めた。
「かおりさんの課題について、前回『美人問題』と
『出来る人問題』だとお伝えしました。」
「はい。」
 
「そのせいで、出会いの質が悪くなっているとも、
申し上げました。」
「はい、そう理解しています。」
 
「まず、少し、その本質についてご説明いたします。」
「お願いします。」
 
「アッパークラス問題というのは・・・」
ドクターが説明を始めた。
 
そう、アッパークラス問題というのは、
前回「美人」「できる人」「セレブリティー(有名人)」を
まとめて「アッパークラス問題」と呼んだのだった。
なつをは思い出していた。普通に考えると、いい思いを
たくさんしていそうで、他人からうらやましがられる存在
なのだが、アッパークラスにはアッパークラス特有の悩みが
あるし、陥りやすい課題もある、先生の話は、そんな話だった。
 
「つまるところ、相手がファンタジーを持って
こちらのことを見てしまう問題、と言い換えることが出来ます。」
 
「ファンタジー、ですか。」
「つまり、平たくいえば誤解されやすいということです。」
 
「あぁ、それ、よく分かります。私、ずっと、本当の私を
見てもらえていない、と感じていました。相手が、
自分の憧れを私に重ねていたり、何か、見る人にとって
都合のいい部分だけを見ているんだな、という風に、
感じることが多かったです。」
 
「でも先生、それって、誰でもそうなんじゃないですか?」
なつをが口を挟んだ。
あ、しまった! なつをは思った。またあとで先生に叱られる
パターンだ。余計な口を挟んでしまった。
 
ドクターはなつをの方をちらっと見て、
またかおりに向き直って言った。
「確かに、程度の差こそあれ、誰でも私のことを分かって
もらえていない、と感じることはあると思うんですが、
アッパークラス問題の場合、そもそもマイノリティーなので、
その程度が大きいんですよね。しかも、悩むことを許されない
空気があるというか。」
「あぁ、分かります。『アンタはいいよね〜』みたいに
言われていました。」
「そう、それなんですよ。恵まれているから、悩むなんて
おかしい、みたいに思われやすい。」
「あぁ、なんか、今日は来てよかったです。こういう気持ち、
言ってはいけないことだとずっと思っていました。」
 
「言う場所、本当に、なかなかないですからね。」
「はい。」かおりは、すっかり楽しげな表情になってきた。
 
「美人、できる人、セレブリティーの問題がある人の場合、
自分と違うカテゴリーでもいいから、このどれかの悩みを
持った人とつながる。そして、アッパークラス特有の悩みを、
共有する、というのが問題解決に、とても大事な一歩になります。」
「へぇぇ、そうなんですね。」
 
「今日のこういう会話も、ずいぶん気持ちがほぐれたでしょう?」
「はい!そうですね。そういうことでいいんですね。」
「えぇ、そうです。初めの一歩としては。」
「では、次の一歩もあるんですか?」
 
かおりさんは、ほんと聡明な人だな、なつをは思った。
先生が少し匂わせたことを、ちゃんと拾って会話を続けていく。
だから話がブレないし、話の展開も早い。
 
「そうですね。では次の話をしましょう。」
「お願いします。」
「それは、『オッサン』を出す、ということです。」
ドクターは自信満々にそう言った。
 
「・・・はい?」苦笑いをしながら、かおりが言った。
 
「まあ聞いてください。前回ご自分でも『オッサン』っぽい
とおっしゃいましたよね?」
「はい。」
「それを、出すということです。」
「おっしゃっている意味は、分かりました。
でも、それでうまく行かなかったのですが。」
「そう思いたくなるのも、分かります。でも、信じてください。
ここからは、オッサンぽい部分も含めた、自分の全部をちゃんと
表現して生きていく、それが良い出会いにつながります。」
「そうなんですね。以前やっていたと思うのですが、
それは、何がいけなかったんでしょう。」
 
そう、TシャツにGパンにすっぴん、みたいな服装だったことも
前回聞いたし、女性らしさが足りないから、努力して今に至る、
という話だったはず。なつをは質問票をもう一度めくって確認
しながら、前回のセッションを思い出していた。
 
「良いポイントです。まさにそこが、理解しにくいし、説明も
しにくいところなのですが、実は、個性的な女性の場合、
一旦平均的な女性になる努力をして、その後、また自分の個性に
戻ってくるという手順が必要なのです。」
 
「あの・・・」かおりが訊こうとしたのを察して、
ドクターが続けて答えた。
「結局戻ってくるなら、最初から自分の個性ではダメなのか、
ということですか?」
「はい、そうです。」
「それが、ダメなんですよね。」ドクターはハッキリと言い放った。
 
かおりは少し残念そうな表情をした。
それを察したのか、ドクターは続けた。
「人間、面倒臭くできてますよね。一旦、たとえばかおりさん
の場合、女性らしくすること、つまり普通の人の方に合わせて
みて、その後また、自分の個性の方に戻ってくることが必要なん
です。同じように見えても、違いがあるんですよね。」
「あぁ、少し分かりかけてきました。」
 
「もし、いま、TシャツとGパンで出かける、ということが
あったら、あの当時と何が違いますか?」
「あ、実際そういう格好のこと、結構ありますけど、あの当時は
結構汚いスニーカーを履いていました。いまは、Tシャツも
可愛いのを選びますし、ハイヒールと合わせたりしますね。」
「それなら十分可愛いし、セクシーですよね。」
「ありがとうございます。」
「そういうことです。」
「あ、なんとなく分かってきました。同じようなTシャツと
Gパンでも、自分の中で女らしさを禁止している時と、禁止して
いない時とで、出る雰囲気が違う、という感じですかね。」
 
「お、さすが、理解が早い。そういうことです。女性らしい服装を
する、ということを、自分の世界の外側に置いていると、本当に、
そこに近づけない。ところが、一回そっちの経験をしてから戻って
くると、無理のない形で自分のスタイルに取り入れることができる。
だから、最後は自分の個性に戻ってくるのですが、平均的な女性に
なってみる努力は、一度は必要、ということなのです。」
 
そこまで聞いて、かおりは少し安心したような表情になり、言った。
「人間、面倒臭くできていますね。」そしてくすっ、と笑った。
「でしょう?」
 
 
 
(つづく)
 
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
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★自習型のセルフセラピー教材
 幸せな恋愛・結婚・人間関係のための
 心のデトックスマニュアル
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★「阿妻式恋愛眼力トレーニングDVD」
 21日間のトレーニングで学ぶ 潜在意識レベルの変容を目指した、
 セラピースキル満載の恋愛パターンの改善プログラムです。
http://bit.ly/12X06ZC 
 
 
 
ご相談のご用命は、こちらから。
 
★恋愛・人間関係コンサルティング(旧名称:恋愛セラピー)はこちら。
 
 個別に丁寧に、問題を紐解き、解決策を提案しております。
 https://www.556health.com/consulting.html
 
 
 
◆ココヘル主催のワークショップ・セミナー一覧はこちら
 https://www.556health.com/work.html
 
 
◆編集後記
 
人間、面倒臭く出来ているんですよ。
(名言だと思ってるのでもう一度書いてみただけです。
 下の↓内容とは関係ありません)
 
週末の講座は完全燃焼でした。(ちょっと疲れた)
伝えたいことがちゃんと伝わったようなので、よかった。
低糖質シフォンケーキも、好評でした。
ふふふ。私が人に出すからには、テキトーなものは出さない
のです。やるからには本気よ、本気。
 
┏━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━┓
 ◆女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学
 祝!TBS・日テレ・フジテレビ出演(目指せNHK!)
 ◆ご意見、ご感想お待ちしています。このまま返信!
 ・頂いたメールは、事前確認なく掲載することがあります。
 ・お名前はイニシャルにします。
 ・メール相談は行っていません。また、多数のメールを頂くた
  め、個別の返信はできないことがございます。
 もっと幸せな恋愛・結婚生活・人間関係を求める方に情報提供
 をするのが本誌の目的です。ご自身の責任にてご活用下さい。
 ◆制作:阿妻靖史(あづま やすし 恋愛セラピスト)
 ◆自己紹介はこちらです↓(声の自己紹介があります!)
  https://www.556health.com/archives/2005/07/post_5.html
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