植物はなぜ、土壌の「酸性」「アルカリ性」が大事なのか?

園芸や農業をしていると、
土壌のpHを意識することになります。
あ、ちなみに今は普通、ピーエイチ、と英語読みします。

土が酸性になっているか、アルカリ性なのか。
細かく見る人は酸性度がpHで表してどの程度なのかまで、管理します。

ちなみにバジルは、
バジル 育て方 アルカリ
グーグル検索すると、「地中海生まれなのでアルカリ土壌を好む」とか、知ったようなことが書いてあります(たぶん、そういうサイトは、実際に育てたことのない人が書いたものだと思います)。

実際に土のpHを測定してみると、日本の園芸用土は弱酸性で、多少苦土石灰を入れたからといって、そんなに簡単にアルカリ性になるわけではなくて、多少酸性が弱くなる程度です。pHで言うと、6.0が、6.5になる、という程度です。
ちなみにpHは化学実験では0から14ぐらいまで数字としては出てきます。ど真ん中の中性が7.0。土のpHの場合は、日本だと5から6.5ぐらいまでの、弱酸性の範囲しか出てこないと思います。
つまり6.0が6.5になる、というのは、元々弱酸性だが、更に弱酸性になるって話。
消石灰とかを、ガンガン入れて、地中海地方の石灰岩質の土壌に近づけてみるぞー、ってやれば、変わるのかもしれませんが、まあ、土中の微生物だって酸性度に好みがあるだろうし、単にpHだけ変えたら解決、って話にはならないと思うんですよね。

それに、pH6.5なら、バジルは元気に育ちます。
自分でpHメーターで土を測定して、その土で育てましたから。
ちなみに「元気ないなー」って思ったときに測定するとpH6.0ってことはありまして、そこに苦土石灰を入れてpH6.5ぐらいまで戻すと、元気復活、ってことも起きました。バジルのこの変化がpHの変化によるものと断定はできませんが、少なくとも、バジルは、pH6.5なら元気に育つ、ということはハッキリしています。

 

さらに脱線しますが、色々見ていると、「弱酸性」「弱アルカリ性」などの用語が、ブログによって使い方が違う気がしています。
「化学」の視点から言えば、植物が育つpHは弱酸性から弱アルカリ性までの範囲です。だってpH0から14を扱うのが化学だから。でも園芸や農業の視点から言えば、pH5から8ぐらいしか出てこないから、pH5を強酸性、pH8を強アルカリ性と呼びたくなる気持ちも分かります。なので、言葉に惑わされないよう、「このブログは、pHいくつのことを言っているんだろう?」って読み解く必要があります。

 

前置きが長くなりましたが、そもそも、なぜそんなことが大事なのか、という話。

これは既に、園芸の知識の範囲を若干超えて、植物生理学の領域になるような気がしますが、

まず、バジルの苦手な「酸性土壌」では、何が起きやすいのか、ということから書いていきますと、

色々あるようなのですが、最も考慮すべきなのは、アルミニウムの毒、のようです。植物にとって、アルミニウムイオンは細胞毒で、
しかし、アルミニウムなんて、地球上のどこにでも、たっぷり存在します。

ではなぜ、大丈夫な場合があるのか。

それは、酸性度が弱い土壌や、アルカリ性の土壌では、アルミニウムイオンの溶解度が小さいため、「そこにいるが、溶け出てこない」状態だからです。
一般に、アルミニウムイオンに限らず、金属イオンは、酸性で溶解度が高くなり、アルカリ性で溶解度が低くなります。(一部、酸素との結合が特に強い金属などで例外はありますが)

つまり、酸性土壌による問題というのは、
アルミニウムが溶出してきて、それを植物が吸収してしまう、ということです。
酸性土壌に強い植物は、根にアルミニウムの吸収を防ぐ機構を持っていたり、細胞内に入ってきたアルミニウムイオンをクエン酸やシュウ酸などでキレート化(包む)し無毒化する機構を持っているようです。ちなみにバジルは元々アルカリ土壌出身ですから、その機構を、ほとんど持っていないのでしょう。

酸性土壌による問題についての参考ページ:(論文や研究のページです)
酸性土壌で発現するアルミニウムストレスに植物はどう応答するか
酸性土壌とアルミニウムストレス
アルミニウムストレス
アルミニウム集積植物に関する研究

 

では今度は、アルカリ土壌では、何が起こるのでしょうか?

こちらも、色々あるようですが、アルカリ土壌の問題としてまず考慮すべきなのは、鉄欠乏です。

上に書きましたが、一般に、金属イオンはアルカリ性になるほど溶解度が低くなります。つまり、鉄が「そこにいるが、溶け出てこない」と、吸収も出来ないわけです。
鉄は、葉緑素を作るのに必要な微量元素だそうで、鉄がないと光合成ができないわけです。なお、葉緑素「クロロフィル」の中心には鉄ではなくマグネシウムが存在するので、おそらく鉄は、葉緑素を合成する途中の大事なステップで、酵素の活性中心などとして働いているのでしょう。

アルカリ土壌に強い植物は、鉄が溶解してこない条件でも、根に何らかの機構を持って、鉄を溶解させて吸収することができる、と考えられているようです。

アルカリ土壌による問題についての参考ページ:
微量要素欠乏対策
アルカリ性不良土壌の緑地化研究と鉄イオン吸収メカニズムの解明研究
鉄欠乏ストレス

まあとにかく、
酸性でないと育たない、とか
アルカリ性でないと育たない、とか

定性的に捉えるのではなくて、

植物によって、
酸性の害が出るpHが違う
アルカリ性の害が出るpHが違う
ということで、
育つのに適正なpHの範囲がある、

と、捉えるのが正しいと思います。

そして、バジルの場合、日本の土で、中和でアルカリ性にするのは難しいので、アルカリ側はどこまで耐えられるのか分かりませんが、少なくとも酸性側は、pH6.5だとOK、pH6.0あたりから微妙、ってしきい値が存在するように、経験的には感じています。

趣味のバジルの場合、
まあ、元気に育てばそれでいいや、とか、苦土石灰を入れて調整すればOK、とかって、軽く考えられますが、

植物生理学の研究室のホームページなどを見ていると、世界の土壌には、耕作に適さない土壌がたくさんあって、酸性すぎるとか、アルカリ性すぎるとか、なんですね。
そういう土壌をどう改良するのか、あるいは、そういう土壌でも育つ植物ってどういうものなのか、など、かなり社会的にも重要なテーマなのだと感じました。
研究者の皆さんには、頑張ってほしいです。

ではでは!

植物はなぜ、土壌の「酸性」「アルカリ性」が大事なのか?」への1件のフィードバック

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