・・・再びカウンセリングルームにて・・・
「先生、こんな風になるんです。呪いはあると思います。」
「なるほど・・・私自身は、呪いについてはまだ半信半疑なのですが、伯母さまから何らかの影響を受けていることは、確かなようですね。」
「解決できますか?」
「ええ、何とかしてみせます。」
(先生、大丈夫だろうか)湯水ちゃん(湯川みずほ・・・当時のドクターの助手)は思った。だって、呪いなんて解く力は、先生にはないはずで、そもそも、呪いかどうかも分からなくて、そんな、原因不明の症状を「何とかする」なんて、私なら怖くてとても言えない、そう思った。
「先生、よろしくお願いします。」のりこは期待を込めた目でドクターを見た。
「はい。私の方で少し、効果的な解決策が何かあるかどうか、調べておきます。本格的な解決のための対策は、次回以降、準備万端整えて行いたいと思います。」
「はい、お願いします。」のりこはすがるような目をしている。
「それで、今回はまず、おばさまに近づかなくて済むような作戦を考えましょう。つまり、根本対策ではなくて、対症療法的なのですが、まずは、近づかないようにする、という作戦です。」
「今でも、なるべく行かなくて済むようにしているのですが。」
「そうですよね。ところで、お母様はその『呪い』のことはご存知なのですか?」
「はい。母は呪いではないと考えているのですが、私がそういう症状に襲われることは知っています。」
「なら話は早い。仮病ならぬ仮呪い(けのろい)を使ってみたらいいと思いますよ。」
「けのろい・・・って一体どんな・・・」のりこはあまりに意外な提案を受けて、何を言われたのか分からなかった。
「ああ、『けのろい』というのは私が今作った言葉なのですが」ドクターは笑いながら言った。「呪いにかかったフリをする、ということです。」
「えぇっ!?・・・それで、フリをして、どうするのですか?」
「たとえばこんな感じです。お母様からお使いを頼まれて、準備を始めます。ハナから行く気はないわけですけれども、行く準備を始めるわけです。そして、玄関先でその呪いの症状に襲われるわけです。もちろん『けのろい』です。行きたいけれど、今日はおばさまの呪いが強くて行けない、ということにするわけです。」
「でも、母から『本当に呪いなの?』とか、割といつも言われるのですが。」
「そのとき、どう言っているのですか?」
「『お母さんは本当に呪いを受けたことがないから分からないのよ。』と言っています。もちろん母は呪いを信じていませんけど。」
「なら簡単ですよね。いつも通り、呪いだと言い張ればいい。そしてこう付け加えればいいんです。『お母さんは、呪いなんてないない、と言うけど、全然自分でおばさまの家に行こうとしない。本当は自分が呪いにかかりたくないから行かないんでしょう? 呪いなんて平気、というなら、お母さんがおばさまの家に行けばいいじゃない。』とね。」
「それ、一度言ったことがあります。」
「そのときは、どうなりましたか?」
「母は、しぶしぶ自分で伯母の家に行きました。」
「まあ、解決までの間、このセッションを続けていく間は、その作戦で行きましょうよ。よく、手術の前に『患者の容態が安定するのを待って、手術をしましょう』なんてこと、言いますよね。ドラマでしか知りませんけど。それと同じように、本当の解決策を実践する前に、のりこさんの『心の容態』を安定させないといけないわけです。しばらくは、そうやって、自分に負担を、なるべくかけないようにする、ということを、やってみませんか?」
「そうですね。それならできそうです。」
「では、今日はここまで、ということで。次回また、本腰を入れて解決するための作戦を、話し合いましょう。」
「はい、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。お大事に。」
(つづく)
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