なつをとドクターのセッションは続いている。(といってもこれは2年前の話)
「そうですか、辛いことがあったのですね。厳しくも愛情のあるお友達、ありがたいですね。」
「はい、本当にそう思います。」
「それで、最近はそういう『オレサマ系』の男性は避けているのですね?」ドクターが尋ねた。ドクターは相手の話から推測できることや、もう当たり前と思えるようなことでも、言葉に出して確認することが多い。「言葉に出して確認してみると、意外とよく考えていなかったり、ディテールの部分(=細部)で違っていることを本人が言い出したりすることがあるのです。そういう部分が、カウンセリング上、意外と大事だったりするのです。」とはドクター本人の談だ。
なつをは少し考えてから答えた。「はい、ただ、そういう男性がなぜか寄ってくることが多くて。交際はお断りしているのですが、何か私の中からオレサマに好かれるフェロモンでも出ているのではないかと思うんですよね。」
「フェロモンですか。なるほどおっしゃりたいことは分かります。」ドクターは少し笑いながらそう言った。
「例えば、先ほどの話に出てきた恭子は、あまりオレサマに言い寄られたりしないんです。『なんでなつをはオレサマに好かれるんだろうね〜。なんかオレサマホイホイみたいな、好かれる匂いでも出てるのかね〜』なんて言うんです。」ちょっと不満そうな表情をしながら、なつをが言った。
ドクターはくすっと笑ってから、真顔に戻った。「匂いは知りませんが、心理学的には、その理由はわりと明快に説明できますよ。」
「えっ!? ぜひ教えて下さい!!」
「ええ、もちろんです。まず、答えから言うと、意識の使い方にポイントがあるのです。」
「意識の・・・使い方・・・ですか?」
「ええ、そうです・・・そうですね・・・たとえば・・・」ドクターは自分の頭の中から何かを探るかのように、上方を見上げ、目を左右に動かした。頭もつられて左右揺れた。「たとえば、今日なつをさんは、湯水ちゃんが咳き込んだとき、もう自分の話はそっちのけで、湯水ちゃんのことが気になっていましたね?」
「えっ!? あ、確かにそうでした。大丈夫かな、って。」
「そう、そこなんです。確かに咳をした人がいたら、少しは気になります。でも、カウンセリングというのは意識を自分の内側に向ける時間です。なつをさんのカウンセリングなら、なつをさんが自分の内側に意識を向けることが、必要なこと、というわけです。」
「えと・・・気が散っていたということですかね?」
「別に、責めたいわけではありません。人によっては、そのような雑音は気にせず、自分の内側に意識を向け続け、話を続ける人もいます。」
「・・・すみません。」
「いえ、何度も申し上げているように、責めたり、咎めたりしているわけではありません。ただ、なつをさんは、目の前の人をつい気遣ってしまう。目の前の人を察したり、気遣ったりする方に意識を向けてしまう、そういう意識の使い方をしてしまう。そのような、意識の傾向がありますね、ということを確認したかったわけです。」
「あ、はい。ようやく分かりました。確かに、先生のおっしゃるように、私は、常に目の前の人に意識を向けて生きていると思います。それで人といると気疲れするんですかね。」
「ええ、そうだと思いますよ。」
「あっ!? そのことと、オレサマな人が寄ってくることと、関係あると言うことですか?」なつをはひときわ大きな声で言った。
「そう、そこなんです。」ドクターはどこか得意げだ。「そこなんですよ。匂いなんて出てはいないのですが、相手に意識を向ける、常に相手を気遣うスイッチが入っている、という意識の使い方をしているとオレサマタイプを引き寄せてしまうんです・・・おっと、そうそう、説明するよりも、実際にワークをしてみた方が深く理解できると思います。ちょっと、ワークをしてみましょう。」ドクターは手早くワークをするためのスペースを作った。椅子がふたつ、向かい合わせに置いてある。
(つづく)
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