暴言が原因、怒りが結果、は本当か?

あづまです。こんにちは。

心理的な問題をいつも扱っていると、
物理的、化学的な話などとは、ちょっと違う感じがする場面にもよく遭遇します。

もっとも違うのが、因果関係の推定に関するロジックです。

物理や化学で言えば、
ものを落とした(原因)→壊れた(結果)
物質AとBを混ぜた→溶けた、反応したなど(結果)

と、因果関係は、比較的ハッキリしています。
原因と結果の順番を間違うことは、あまりないんですね。

ところが、心理的な問題だと、そうはいかないことが、多々あります。

たとえば、職場の面倒くさいAさんから、暴言を吐かれた。
それに対して、怒りを覚えた。

基本的に、その瞬間のことだけを言えば、
暴言(原因)→怒り(結果)
と、言えるのですが、

ここからが、心理の難しいところです。

ここから、言われた方の人をBさんとして話を進めます。
たとえば、Bさんは、日頃からイラッとすることがあると、とりあえず呑み込む(抑圧)という心の生活習慣を持っている人だったとします。

すると、いくつかの経路で、この溜め込んだ怒りが他人に影響を与えることが知られています。

(1)逆転移
これは、Bさんのそばにいるだけで、Aさんを始めとした周りの人は、なんとなくイライラしてくるんですね。ジャイアンの「のび太を見ていると、ムシャクシャするんだよ!」というせりふの、2割ぐらいは、(のび太は日頃怒れないので)このパターンではないかと思います。

(2)悪い態度
のび太には当てはまらないですが、怒りを抑圧していると、相手に対して不親切になります。仕事でも、絶対に義務で必要な報告は、嫌いな人にもしますが、お得な情報とか、耳寄りな話は、嫌いな人にはしないですよね。これは誰でも分かる話ですが、こうした「嫌い」「嫌だ」が高じてくると、どんどん(本人は無自覚なのだが)態度が悪くなっていって、結局それが、Aさんの怒り(暴言を言われたとBさんは解釈している)を誘うわけです。

(3)(相手による)投影
「のび太を見ていると、ムシャクシャするんだよ!」の8割はこの要因です。のび太はキッパリものを言わない(ジャイアンの前では特に)性格。一方ジャイアンはそういうのは男らしくないと考えていて、ウジウジしたキャラは嫌いなんですね。がしかし、もう少し掘り下げてみると、母ちゃんの前では、ジャイアンがこのウジウジキャラになっています。
そう、実は、ジャイアンの中にもある、ウジウジキャラを、ジャイアン自身が嫌っているために、それと似ているのび太を嫌う、というのが(相手による)投影なんですね。
Bさんが、Aさんの嫌っているキャラになっている場合(たぶん、そうなってますよね)、相手による投影が起きて、相手の「暴言」を誘いやすくなります。

さてここまで考えていくと、
「暴言を吐いた責任は誰にあるか」という法的な責任の話、社会通念の話をするなら、暴言を吐いた本人(この例ではAさん)にあるに決まっていますが、

自分の身の回りで、責任の所在云々は抜きにして、こういう出来事が起きないように、人間関係をマネージメントしたい、自分自身の心のあり方を整えたい、という目的で考えるなら、

原因の一端は、自分が抑圧している感情にもあるかも。
と、考えることは、非常に大事になります。

こんな風に、心理的な問題では、
因果関係が、必ずしもハッキリしないところが、難しいところであり、
それゆえに、研究しがいがある、取り組みがいがある、奥深いところでもあります。

ではまた。

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