「その体験は、今この場で話せますか?大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫だと思います。」
その後、まいくんが話した内容は、かなり生々しかった。曰く、まいくんは小学生の頃、少し気が弱くて、クラスの女子からもあれこれ命令されるような、そんな児童だったのだそうだ。6年生ぐらいの頃、近所の、ちょっと不良っぽい中学生の女子グループに、下校中によく話しかけられるようになって、始めのうちはからかわれたりするぐらいだったのだが、あるとき、公園の裏の、ほとんど誰も来ない工場跡地に呼び出されて、裸にされて観察されたのだそうだ。
女子の方も、ひとり上半身裸になり、露わな胸でまいくんを抱きしめた・・・もちろんこれは、まいくんの反応を見て楽しむためだったのだが・・・という、当時小学生だったまいくんは、衝撃的な体験をしたのだった。
「その先輩(まいくんはそう呼んでいた)の、私から見て左側だから、右の鎖骨のところに、くっきりと大きなほくろがあったんです。」
「なるほど。ところで、今思い出した、その過去の出来事の中で、その『先輩』に対して感じた感覚と、最近不倫相手に対して感じた感覚、あるいは奥さまと出会った頃に少し感じた感覚・・・えぇと、「吸い込まれそう」とおっしゃってましたっけ・・・それは、似ていますか?」
「はい。全く同じです。」
「なるほどね・・・では、どうやら、まいくんのほくろフェチの『ほくろに吸い込まれるような感覚』の正体は、その、小学生の時の出来事から来る、未解決の感情だったようですね。」
「なるほどですね。こうやって解明してもらえると、納得です。確かに同じ感覚です。」
「その時のことを、誰かに話しましたか?」
「いえ、当時は恥ずかしくてとても言えませんでした。」
「じゃあ、ずっと、胸にしまって生きてきた?」
「いや、大学生ぐらいの時に、男子同士の飲み会で話したことがあったんですけど・・・」
「もしかして『お前うらやましいぞ』的な扱いだったとか?」
「そう!そうなんですよ先生!私としては、凄く恥ずかしかったし、ちょっと怖くもあったし、それでもその・・・アソコが勃ってしまった自分が情けなくてアホみたいで・・・そういうことは言えませんでした。」
「そうですよね。ずっと抱えていて、苦しかったですね。」
「今思うと、そうだったのかもしれません。」
「その苦しさを、フタして分からないようにした・・・無意識にですが・・・そのストレスが、ほくろフェチという形で表に現れてきたのだと思いますよ。逆に言えば、そこをちゃんと治してあげると、ほくろフェチの問題も、収まっていくはずです。」
「先生、これで治るんですかね?」