「ところで、こばやん、もし、タイムマシンに乗って当時・・・つまりストレス度がマックスだった頃に戻ってやり直せるとしたら、元気補給や、健康維持のための、どんなことをしたいですか?」
「そうですね・・・食べ歩きですかね。」
「食べ歩き!?」
こばやんは、絵に描いたような中年太りのおじさんだ。決して不健康そうではないが、少し小太りだし、あごもうっすら二重あごだ。そのこばやんから、健康のために食べ歩きをする、と聞いて、なつをは心の中で「おいおい」とツッコミを入れた。
先生も同感らしく、ちょっと驚いている様子だった。
「いや、そうですよね。ウォーキングの方がいいですよね。でも、ただ歩くだけ、と思うとモチベーションが続かないので、しっかり歩いたら、美味しい物を、食べ過ぎないようにしながらですけど、食べる。それを『食べ歩き』と称して、彼女とつき合っていた頃・・・あ、彼女というのは今のカミサンですけど・・・よくやっていたんですよ。」
「ああ、なるほど。終わったあとに美味しい食事のごほうび付きの、ウォーキングね。」
「そういう言い方をすると、心身に良さそうに聞こえますね。」
ふたりは楽しそうに笑った。
「いいと思いますよ。あ、でも、奥さまと一緒にされていたんですよね? 新婚当初とか?」
「はい。でも、カミサンと険悪になってからは、次第にやらなくなりましたね。たべある・・・いや、ごほうび付きのウォーキングは。」
「今からまた、美味しいごほうび付きのウォーキングを再開することは出来ますか? 奥さまを誘うのは今すぐだとハードルが高ければ、お一人でも、お友達を誘ってもいいと思うので。」
「はい。結婚後もそうやってひとりで歩いたりしたこともありました。本当は気持ちよかったんですが、いつの間にか忘れていました。ええ、またやってみます。」
「では、今回はこんなところで・・・ご相談ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
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