シングルを卒業(6)|恋愛ドクターの遺産第5話

ここまで色々質問をしてきたドクターが、ここでハッキリと意見を述べ始めた。
「ええと、みさおさん。」
「はい。」
「少し、残念なお知らせをしなければいけません。」
「恋人、できなさそうな人、てことですよね?実際そうですから、覚悟は出来ています。」
「まあ、広く捉えれば、そういうことになりますが、もう少し細かく見てポイントをお伝えしようと思っています。」
「あ、失礼しました。お願いします。」
「ここで、『優しい人』を具体的にどんな人か言葉を足してもらったら『暴言を吐かない人』『暴力を振るわない人』『大声を出さない人』と、ネガティブな項目の否定形が並びました。」
「あ、そうですよね。」
「これを、我々は『卒業ポイント』と呼んでいます。こういうネガティブなイメージは卒業すべき、という意味を込めて、そう呼んでいます。」
「友達にも言われました。ポジティブに考えることが大事だ、って。」
「ポジティブに考える、といういわゆるポジティブシンキングは、お勧めしません。」
「え、そうなんですか?」
「ちょっと説明が難しいのですが、ポジティブシンキングというのはポジティブな方に『意識』を向ける、というような取り組みのことです。しかし、恋愛が絡むときは『表層意識』ではなく『潜在意識』がどちらを向いているかが大事になります。」
「潜在意識、ですか。」
「平たく言えば、『男性をイメージしてください』とだけ言われたときに、温かい感覚と共に男性を想像するのか、それとも何か冷たい印象や、怖い印象と共に想像してしまうのか。どちらの印象が自動的に出てきやすいのか、というような部分です。」
「あ、私はネガティブな方ですね。怖いイメージが出てきます。」
「そう、その、自動的に想像するイメージこそが『潜在意識』レベルで、みさおさんが持っている男性のイメージです。」
「先生、私のこの、ネガティブな男性イメージが、これまでずっと、恋人が出来なかった原因、ということですか?」
「ええ。その原因だけ、かどうかはまだ分かりませんが、かなり重要な要因になっていることは、間違いないと思います。」
「こうなってしまったのは、父親の影響だと思うのですが、それって治せるんでしょうか?」
「えぇ、治せますよ。」

相変わらず、問題解決力には自信がある受け答えだ。なつをはこういうときの先生の、軽く「できますよ」と言ってしまうときの口調が好きだ。重いテーマなのだが、軽く言われる事でかえって希望が湧いてくる。

「どうやって・・・」
「まあ、どうやって取り組むかは、あとでじっくり考えたいのですが、もう少し質問させてください。」
「あ、はい、すみません。」
「『尊敬できる人』を詳しく説明してもらったときに出た項目も、『人をバカにしたり見下したりしない人』という『何々でない人』になっていますが、これもお父様みたいな人は嫌だ、という感じなのですか?」
「はい。父は人のことをバカにした発言が多い人で、いつも私や母、あと、弟もいるのですが、家族のことを見下した発言が多かったです。だから、つき合うならそういう人だけは絶対に嫌だ、と思っているんです。」
「なるほどね。お父様は約束をよく破る人だったんですか?」
「はい。その場の気分だけで約束をして、結局守ってくれないことが、しょっちゅうありました。どこどこに連れて行ってくれる、と約束しては、結局なんだかんだ言って行かなかったり、買ってくれる約束をしたものも、買ってもらえなかったことの方が多かったです。そのくせ、次は本当に買ってくれるの?みたいに言うと起こるので、嘘でも喜ばなければならないのが、いつも辛かったです。」
「なるほどね。嘘が嫌なのに、自分の気持ちには嘘をつかなければならない。これは苦しいですね。」

そう言われたとき、みさおの両目からは、大粒の涙がぽろぽろっとこぼれた。

「五分ぐらい休憩を入れましょう」ドクターが提案した。「なつを君、すみませんが、お茶を淹れてくれますか?」

お茶を淹れたあと、なつをは考えていた。このまま「運命の相手メソッド」を実践していっても、ネガティブな影響を受けすぎていて、まだ十分癒されていないみさおさんは、理想のパートナーを見つける行動にまで進むのは難しいだろう。先生もきっと、そう考えているに違いないけれど、どこでそのような提案をするのだろう、そして、先生は一体、どんな解決策を提示するのだろうか。

なつをがふと先生の方を見ると、先生はただ、お茶を味わっているだけで、ぼうっとしていて何も考えていないように見えた。

・・・

「そろそろ、再開しましょうか。」ドクターが提案した。
「はい、お願いします。」

「さて、少し提案があるのですが。」
「はい。」
「先ほどまでのワークで、卒業ポイントがとても多いことが分かりました。」
「はい、私にもよく分かりました。」
「休憩前にはあまり話しませんでしたが、ほかにも『私のひとり時間を大切にしてくれる人』という項目があります。これは、ひとりの方が安全、と感じている人がよく出す項目なのです。」
「確かに、そうですね。同じ部屋に男性と一緒にいたら、いつも邪魔される、というような感覚があります。」
「そうですよね。その感覚を潜在意識が持っているうちは、恋人を作る取り組みがうまく行かないと思います。」
「・・・先生、ハッキリおっしゃいますね。」
「ええ、私は事実はハッキリ言うべきだと思っていますので。」
「その感覚を潜在意識が持っているうちは、ということは、その感覚を潜在意識が持たなくなったら・・・」
「そう、持たなくなったら・・・つまり、卒業できたら、その時は、理想のパートナーを見つける行動を起こす時だ、という意味です。」
「どうやったら、卒業できるのでしょうか。」

「そうですね。そろそろ、今必要な取り組みについて話し、決めていきましょうか。」
「はい、お願いします。」
「まず、現状の分析ですが、みさおさんは、自分がこの世界で『安全ではない』と感じていらっしゃる。」
「はい、とても不安です。」
「自分の中に、安全の感覚を育てていくことを、最優先課題として取り組みましょう。」
「はい・・・どうすればよいのでしょうか?」
「具体的な方法の前に、ちょっと取り組みの全体像を説明させてください。」
「あ、はい、お願いします。」
「まずは、安全の感覚を心の中に育てる。」ドクターはホワイトボードに板書しながら説明していく。
「はい。」
「安全の感覚が育ってくると、『アレが好き』『これが嫌い』『アレはやりたい』『コレはやりたくない』といった、自分本来の好き嫌いの感情が自由に出るようになってきます。」ドクターは先ほど書いた「安全の感覚を・・・」の方に①と番号を振り、その下に「②好き嫌いの感情に敏感になる」と書き、矢印で①→②とつないだ。
「へええ、そうなんですか?」

(つづく)

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