恋愛ドクターの遺産(5)セッション−2

今日のクライアントは、なつをが前回のセッションの時に「愛情飢餓」ではないのか、と先生と議論になった、その、こばやんだ。でも先生は愛情飢餓説には全く興味を示さない。そして、初めて積極的に質問をしたのが・・・つまり先生が「食いついた」ということなのだが・・・会社の危機からくる仕事ストレスの話だった。

「いえ、特に何も・・・仕事でいっぱいいっぱいで、気晴らしや運動など、本当にする時間も余裕も無かったですから。」

「そうですか。こばやんは、会社で、次第に、些細なことに過敏になったり、あるいは、周りの人から『最近扱いづらくなった』みたいに言われる事はありませんでしたか?」

「えっ!? どうして分かるんですか? 確かに、会社の危機が続いて、仕事に没頭して・・・とやっている頃、だんだん、周りの人がデスクで立てる音が気になって注意したり、それでも気になって、耳栓をしたり・・・周りの人から『最近変だよ』とは時々言われてました。」

「そうですか。なるほどね・・・やはり、仕事上のプレッシャーというか、会社がどうなるか分からない、どうにかしなくてはいけない、という危機感、責任感、重圧、そして、焦りみたいな物も感じていらっしゃったかもしれませんね。」

「いや、その通りです。焦りです。重圧もありましたが、自分がこの状況を打開できるだろうかという不安と、打開できなかったら会社はどうなってしまうのだろうという焦り・・・今思い出しても気分が悪くなります。」

「本当に大変でしたね。家族を守るためのお仕事で、神経をすり減らすことに・・・そして会社まで守らなければならないという重圧・・・お察しいたします。」

なつをの目から見ても、この瞬間、クライアントがふっと肩の力が抜けていくのが分かった。表情が急にゆるんで、目にうっすら涙が浮かんだ。こんな変化があったときは、クライアントの問題は一気に進展していくことが多い。今日も先生のセッションはスゴいのひと言だ。やはり核心は幼少期の愛情飢餓問題ではなかったのだ。仕事からのストレスにパッと光を当てて、簡単な質問で、クライアントの「分かってもらいたい」ポイントにたどり着く。

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