踊るセラピー(1)|恋愛ドクターの遺産第4話

今日から新しいシリーズです。題して「踊るセラピー」。「踊る」とは何なのか?一体恋愛ドクターは何をするのか?そのあたりは読んでみてのお楽しみ・・・

【登場人物】
(現在の人物)
ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
なつを ドクターの助手

小宮山英子 彼との関係で苦しい 言葉が出ないクライアント
高田和義 英子の恋人。義務感が強く「べき」で英子を縛る傾向がある。

 

第一幕

(どうして幸雄さんとは通じ合えないのだろう。)ゆり子は、まだ悩んでいた。
これまで、色々悩んで、本も読んで、そして、「恋愛ドクターの遺産」のノートも読んで、色々勉強になったし、色々気づきもあった。けれど、やっぱり、問題が解決するようには思えなかった。
(とにかく、話が通じないんだけどなぁ)ゆり子はそんなことを考えていた。
心理学系の本を読むと、アダルトチルドレンの夫、みたいな話が書いてあったりする。確かに、彼の実家の様子を見ると、少し「私は私、あなたはあなた」的な空気を感じて、それと、夫の個人主義的なものの考え方は、関係あるようには思う。
ただ、子供時代に、のびのびと子どもらしく過ごすことができなくて、周りに気を使いすぎる心理的傾向のまま、大人になってしまって、という説明には、相当の違和感があった。
(むしろ、相手の気持ちを考えない、悪い意味での子供っぽさを持ったまま、大人になってしまったように思えるんだけどなぁ)ゆり子はいつも、そう思うのだった。

現在別居中の夫と、今日は久しぶりに「話し合い」のために会うことになっていた。
お互い、感情的にならないため、という理由で、外で話し合うことにしている。今日はファミレスだ。ファミレスなんて、まわりの人の耳があるから、大事な話が出来ないと思うかもしれないが、一度やってみて分かった。周りの人の耳が一切ない「密室」で話すより、よほどマシだと。
ゆり子は、一度誰かの講座で聞いたことがあった。その講師はこんな風に言っていた。
「夫婦関係がこじれたときは、少し距離のある『他人』が聞いている、そんな場所で話し合うといいですよ。人は、誰も見張っていないと思うと、傍若無人になるものです。感情的になったり、自分の主張ばかり押しつけて、相手の立場に一切立たない、などの行動に出たり。」
その意見を思い出して、話し合いの場所をファミレスに決めたのだった。そして、その講師はこうも言っていた。
「本来、人は生きる上で、自分の中に、たとえ誰かに見張られていなくても、曲がったことはしない、というような正義感、もう少し大げさに言うならば心の中に『神』を持って生きるべきだと思います。その『神』は、自分にだけ都合が良いルールを作ったりもせず、逆に、他人にだけ都合が良いルールを作って自己卑下したりもせず、上から、公平に人を見ている。そんな感覚であるべきです。しかし、そういう『神』を持っている同士が夫婦になったのだったら、自分のことも、相手のことも公平に見ているわけですから、お互いに不満があることは、当然あるでしょうが、話し合いがこじれるほどにはならないはずです。つまり、こじれた夫婦の場合、自らを律することができない、そう考えて、対応策を考えるべきなのです。」
そうなのだ。私にも反省すべき点はあるけれど、幸雄さんは、かなり独善的で、彼に都合が良いルールを押しつけてくることが多かった。あの講師の先生の言葉を借りて言うならば、「自分の中に公平な『神』が育っていない」ということになる。もちろん、その先生は、こうも言って釘を刺していた。「この話を聞いて、あなたの夫(または妻)が、自分の中に公平な『神』を育てていない人だと感じた方も、多いと思います。しかし、その結論を出すのは、完全に夫婦修復、または離婚のどちらかが成立して、1年以上たってからにしてください。」
どうしてですか、という受講生の質問に対してさらに「それは、そのような『話の通じない夫』も、職場ではしっかりコミュニケーションが取れていて、仕事はきちんとこなしている、というケースもよくありますし、一方的に相手だけの問題、というよりは、二人で問題を作っている、という要素が、かなり大きいことが分かっているからです。」そう答えていた。質問者はぐうの音も出ない感じだったのを、ゆり子は今でも鮮明に覚えている。もう2、3年も前に受講した講座のことなのに。

・・・

ゆり子は約束の時間よりも10分ほど早くファミレスに着いていた。席に着き、おかわり自由のコーヒーを注文してから、周りを見ると、20代前半ぐらいの恋人同士、作業服を着た仕事の休憩時間と見受けられる数人の男性、小さい子どもを連れた母親、女性の数人のグループ、という感じに、様々な人が利用している。幸いすぐ隣のボックス席には誰も居ない。
(今日はちゃんと「話し合い」になるのかな・・・)ゆり子はそんなことを漠然と心配しながらコーヒーをすすった。あまり味がしなかった。そんなことをしているうちに、幸雄がやってきた。

「おう。元気だったか。」幸雄は相変わらず、感情のこもっていない挨拶をした。
「まあ、ふつう。」ゆり子は、あのお馴染みの、気持ちがしぼんでいくような感覚を感じながら淡々と答えた。

この日の話し合いは、それぞれが離婚に向けて動きたいのか、それとも、修復に向けて動きたいのか、そんな、これからの「基本方針」について話す、ということになっていた。この「基本方針」という言葉は幸雄が言った言葉だ。
「で、おまえは、どうしたいの?」早速「基本方針」の確認をしてくる幸雄。しかし、会社の事業計画じゃあるまいし、こんな突き放した言い方をされて、まともな答えが言えるわけがない。
(つづく)

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