踊るセラピー(7)|恋愛ドクターの遺産第4話

「二人の関係が、もう少し『こんな風に』なったらいいな、と思っています。そうしたら楽しく、長続きする関係になると思います。英子より。」
この「こんな風に」のところには、二人の針金人間が描かれていて、手足が波打っている。見ているだけでも吹き出してしまいそうだが、描かれている本人(?)もいかにも楽しそうだ。ふたりのコンニャクたこ踊りをしている針金人間。

「いいじゃないですか。私も視覚派の人間ですが、何が言いたいのかものすごくよく伝わってきますよ。」ドクターが言った。

「あぁ、よかった。コミュニケーションって、言葉以外にも色々あるんですね。ここに相談に来て、それが分かったのがよかったです。」英子は心底ほっとしたような、朗らかな笑顔を見せてそう言った。

「そうですね。まあ、言葉にする、というのが基本ではあるのですが、あまりそこにこだわりすぎると、かえって本質を見失ってしまいますから。本質はとにかく『伝わる』ということですから。この絵入り文章は、言いたいことがよく伝わってきますね。」
「はい。先生にそう言っていただけると自信が出てきました。」
「さて、簡単に今日のまとめをしておきますが、」ドクターは少し真面目な声に戻って言った。
「はい、お願いします。」
「人間には、視覚派、聴覚派、体感覚派がいます。そして、英子さんは体感覚派。彼は視覚派ですね。」
「はい、そうでした。」
「前回やったように、まず、自分が得意なチャンネルを上手に使って表現する、これが第一ステップ。英子さんの場合は踊って表現する、というのがそうでした。」
「はい。」
「そして、次のステップは、今度は、相手の得意なチャンネルに訴えかける、ということ。」
「はい。」
「その、ひとつの案として、絵入りの文章で伝える、ということを英子さんが考えてくださいました。」
「はい。そうですね。」
「他の方法も、もし思いついたら、やってみてもいいと思いますよ。但し、あなたが体感覚派、彼が視覚派ということを念頭に置いて、発想するのがポイントです。」
「そうですね。」英子は、メモを取りながら返答した。

「そして、まあ、これは、若干蛇足かもしれませんが、これまでうまく行かなかった理由。」
「えっ!? あ、それ、知りたいです。」
「それは、お互いに聴覚は苦手分野なのに、お互いの苦手分野である聴覚、つまり言葉だけに頼ってコミュニケーションしようとしていたからです。」
「あっ!」英子は、ハッとした表情になった。「そうですね!確かに、私も彼も、どっちも苦手な方法でコミュニケーションを取ろうとしていたんですね!それじゃあうまくいかないですよね!今すごく腑に落ちました!」

「先生、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。うまく行くといいですね。」

お互いに深々と頭を下げて、セッションは終わった。
(つづく)

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