呪い(17)|恋愛ドクターの遺産第9話

・・・そして5分後・・・
最初に戻ってきたのはナタリーだ。なんだか目が輝いている。続いててっちゃん、そして、重苦しい空気をまとって最後に戻ってきたのがなつをだ。
「あのね、あのね、やっぱり頭痛だと思うの。」ナタリーが興奮気味の声で言った。
「何が分かったの?」てっちゃんが訊いた。
「まず、緊張が高まって、それが少しゆるんだときに、偏頭痛が出やすいらしいのね。偏頭痛は脳の血流が増えることによって起こるらしいので、緊張がゆるんで、血管が拡張して、それで起きることは多いらしいの。」
それを訊いて私なつをはほっとした。やっと原因が分かった、と。やっぱり頭痛なんだ。
「へぇー。で、紫色のぐるぐるはどう説明するの?」てっちゃんが訊いた。
あ、そうだ、それは説明できていないじゃない。なつをはまた不安になった。
「えーとねー。メモしてきたんだけど、『閃輝暗点(せんきあんてん)』という症状があるらしいのね。偏頭痛の前兆みたいな症状で、光の点などが見えたりするらしいの。紫色のぐるぐるとして表れるのは彼女の特徴だと思うけど、伯母さん家に行くとストレスがかかって、その頃から閃輝暗点が出て、緊張が解ける頃に、頭痛と吐き気が襲ってくる、と考えると、わりと説明が付くと思うんだけど。」
最も感覚派だと思っていたナタリーが、最も論理的に症状を説明したのが意外だったが、完全に辻褄が合っているし、それで、私なつをもてっちゃんも、深く感心して、しばらく言葉が出なかった。
「どうやら、頭痛説で全部説明が付きそうだね。」てっちゃんが言った。
「正確には、偏頭痛ね。閃輝暗点付きの。」ナタリーが得意げに付け加えた。

「コーヒー入ったよ。」ドクターと湯水ちゃんが戻ってきた。
議論に使った紙を一瞥してドクターが言った。「お、何か結論が出たみたいですね。発表はコーヒーでも飲みながら聞きましょうかね。」
セラピストチームの三人は、閃輝暗点が出て、そのあとに頭痛と吐き気がするという、偏頭痛の症状で全て説明が付くこと、その症状が伯母の家に行くというストレスが引き金になって起きていること、緊張のピークの少し後、少しゆるんだときに症状が出る点もよく合っていることなどを説明した。
「では、頭痛薬が効かなかったことは、どう説明するのでしょうか?」ドクターが訊いた。
私なつをは、はっとした。まだ見落としていたのか・・・
「ええと、偏頭痛の場合、前兆の段階で薬を飲んだ方が効くことが多いんです。私も以前頭痛持ちで、薬を飲んでいたことがあったんですが、頭痛が激しくなってからだと、効きが悪いんですよね。」ナタリーが言った。今回ナタリーが最も原因究明に力を発揮した。
「なるほど、うまく説明できていますね。」ドクターはゆっくりと数回うなずいた。「では、どういう解決策を提示しますか?そして、推定原因と合わせて、クライアントののりこさんに、なんと言って説明しますか?湯水ちゃんを前にして、どう伝えるのか、それを実践してみましょう。相談タイムを20分差し上げます。」

「あたしなら、『あたしも頭痛持ちだったから、ほんと、おんなじ症状が出たことあるよ』ってストレートに言っちゃうかな。それで・・・早めに頭痛薬を飲むように言うのと、やっぱり伯母様の家にはなるべく行かなくて済むように作戦を考えるかな・・・えっと、先生が使われていた『けのろい』を使い続けるとか。」ナタリーが言った。ナタリーは正直で率直だ。
一方、クライアントに正直に言いすぎて契約を切られた経験があるコンサルタントのてっちゃんは、真実を告げることに対して慎重だ。「ただ、彼女の場合それが『呪い』だと信じているわけですよね。頭痛薬もあまり効かなくて、だから『一般的な頭痛ではない』と信じている。彼女の信念を覆して、頭痛だと説得しなければいけないのは、やりづらいですね。」
「なつをちゃんは、どう思うのさ。」ナタリーが訊いた。
「ええと・・・私は・・・その・・・真実を告げるべきだとは思うんですが、ちゃんと受け止めてくれるかどうか分からないし、また地雷を踏むことになるかもしれないし・・・その・・・」なつをはしどろもどろになってしまった。
「いいじゃん、言えば。そんなこと気にしてたら、何も言えないよ?」ナタリーはあくまで思ったことは言う、を貫く方針らしい。
ここでチーム外から湯水ちゃんが横やりを入れた。「ナタリーはさ、占い師じゃん?結構叱ってほしい女子、よく来るでしょ?ズバッと言ってほしい、という人が多いんだよね。占い師の先生のところって。ナタリーもビシッと言ってくれる先生、てことで定評を得ているしさ。だから、ナタリーが、いつもの感じで、占い師としてこの問題に関わったら、そのままストレートに言う、が正解だよね。一方、コンサルタントの場合、割と信念を持ったら中々曲げないような頑固な社長さんも相手にして仕事をするから、真実を告げるというよりは、少しずつ情報提供して、クライアントに気づいてもらう、クライアントに結論を出してもらう方がソフトでスムーズですよね。だから、てっちゃんの慎重に言う、もコンサルタントとしては正解だよね。で、なつをは、どういう姿勢でクライアントに向き合うの?自分の姿勢を決めないと、方針決めれないよ?」
その時ドクターは「その通り」と言うかのように、深く数回うなずいた。

(つづく)

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