脱オレサマを目指す女子(8)|恋愛ドクターの遺産第8話

「はい、では、次、なつを君!」

「えっ!? は、はい!」私は急に話を振られてあたふたしてしまった。

 

気を取り直して、私は話し始めた。「そうですね。先日イタリアンレストランに行ったとき、隣のグループが、とても汚く食べ残しているのを見て、嫌な気分になりました。まるで『お前の料理はこうしてやるのが丁度いいぐらい、ひどいものだった』と暗に言っているようで・・・私は普通に美味しく頂いたので、何でそんなことするのかな、って思いました。」

 

「なるほど、それは嫌ですね。私がシェフなら出入禁止にしたい気持ちになっているかもしれませんね。」ドクターは少し眉間にしわを寄せて・・・私にはあえてしかめっ面を作っているようにも見えたのだが・・・そう言った。

「では次、淑恵さん。どうでしょう?」

 

「・・・あの・・・あまり思いつかないんですが・・・」淑恵は居心地悪そうにそう言った。

「そうですか。淑恵さんの周りには、あまりマナーの悪い食べ方をする人は居なかったということでいいのかな?」ドクターが確認した。

「あの・・・そうではないと思うんですが・・・よく覚えていなくて・・・」そう言って淑恵はお茶を濁した。

 

「ではここで、このワークの真意を発表します。」

 

淑恵は少し不安そうな表情をして、ドクターの話を聞いている。

ドクターはそれには構わず、ワークの意味を語り始めた。「実は先ほどのワークには、ふたつの意味を込めていまして、ひとつは、『マナーの良し悪しを判定する』というテーマは、交流分析でいうとCP(しーぴー)という心の働きと関係しています。スムーズにCPが出せるかどうかを見ました。なつを君はスムーズに出ましたね。」

 

「えっ、あ、そうですね。」私なつをは少し照れた。

「そして、」ドクターは続けた。「もうひとつの意図は、こうして会話をしているときに、何に意識を向けているか、それを自己観察してほしかったんですね。」

 

淑恵は首をかしげている。そりゃあそうだ。会話をしているときに何に意識を向けているか、なんて普通は考えたこともないはずだ。私なつをも、以前先生にこの話を詳しく説明されるまでは、全く考えたことがなかった。

 

ドクターは続けて言った。「ちょっと初めてだと馴染みがない話だと思います。では、私からレポートしますね。私は、自分が話しているときには、例の居酒屋での出来事を思い浮かべていました。その時の店内の雰囲気、例の一団がどんな様子だったか、など。主にその時のシーン、映像を思い出して、それを想像しながら、話をしていました。ただ、思い出す方に意識を100パーセント使っていたかというと、そうではなくて、『この話、ちゃんと伝わってるかな?』みたいなことを気にもしていて、私の話を聞いてくれているなつを君や、淑恵さんのリアクションを気にしていました。思い出す方が80%、気にする方が20%、という感じだったと思います。」

 

先生は私の方を見た。私が次に言うわけですね、分かってますよ。「私は、先生よりちょっと気にしぃなのかな、と思います。レストランの中のことを思い出しているのが60%ぐらいでした。私の場合、映像も思い出しますが、匂いもよく思い出します。そして、先生や淑恵さんの様子を気にするのが40%ぐらい、のように思います。だから私が話しているときに先生がご自分の髪に何回か手を持っていったこととか、なんとなく気になって、覚えています。」

 

それを聞いてドクターは苦笑いした。

「では、淑恵さん、こんな感じで、淑恵さんの場合はどうだったか、振り返ってみて下さい。」

(つづく)

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