第三幕 呪いを解いて下さい
翌朝。
「おはようございます。」溌剌とした笑顔で、ドクターがみんなに挨拶した。
「おはようございます。」溌剌とした顔もあり、眠そうな顔もあり、といった感じだったが、みんな揃って、二日目のカリキュラムが始まった。
「少し遅れましたが、てっちゃんが参加します。」ドクターが紹介した。てっちゃんの本名は清水哲男。カウンセラーではないが、ドクターの教えを受けて、仕事に活かしている経営コンサルタントだ。
「清水哲男です。てっちゃんと呼んで下さい。よろしくお願いします。」てっちゃんが挨拶した。てっちゃんは溌剌としているグループだ。
「さて、昨日話に出た『呪い』について少しお話ししようと思います。これからお話しする内容は、本物の呪いについての話ではありません。私は本物の呪いがあるのかどうか、判断する材料は持ち合わせていません。ただ、当事者に『呪い』と見える現象について、心理学的に説明可能なものもある、というお話をしたいと思います。言い換えると、心理学的に解決できる『呪いもどき』が存在する、というお話です。」
「『呪いもどき』面白い表現ですね。」ナタリーが楽しそうに言った。ナタリーはどちらかというと呪いを信じていそうなタイプだが(占い師だし)、意外にもドクターの科学的な姿勢は好きらしい。
「湯水ちゃんは知っていますよね。」ドクターが訊いた。
「はい。あのときはどうなることかと・・・心配になりました。」
そう、先代の助手、湯水ちゃんがまだ先生のオフィスにいた頃、「呪われたので解いてほしい」というクライアントが来たのだった。
・・・遡ること5年。当時のオフィスにて・・・
ノックの音がして、クライアントが入ってきた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
ドクターも今日のクライアントののりこも、二人とも着席した。湯水ちゃんも、先生にいつも言われているとおり、クライアントに合わせて着席した。
「さて、今日のご相談というのは、『呪い』だとか。」ドクターが不思議そうな顔をしながらそう聞いた。
「はい。先生!お願いします!私、呪いをかけられたんです。いや、こんなこと非科学的だと分かってます。でも、呪いじゃなければ何なのか、もう分からないんです。とにかく、呪いとしか思えない何かをされました。これを何とか解決して頂きたいのです!」のりこは切羽詰まった様子でドクターに訴えた。
「分かりました。私は実は呪いそのものはあまり信じていないのですが、心理学的に解決できる道があれば、何か解決の糸口ぐらいは見つけられるかもしれません。」ドクターはあくまで冷静に応えている。
のりこは不安そうだ。
そこでドクターは付け加えた。「以前、呪いとか、憑依とか、そういう霊的なことについて、まあ専門ではないのですが、周辺知識として学んだことがあります。そこで知ったことは、心理的に不安定だと入り込まれやすい、と考えられていることでした。つまり逆に言えば、心理的に安定する方向を目指せば、『呪い』の影響を受けにくくなる、ということでもあります。」
「先生、ぜひお願いします。」のりこは先生に今にもすがりつきそうな様子でそう言った。
「では、具体的にその『呪い』はどんな症状として表れるのか、それを教えて頂きたいのですが。」
「はい、大体こっちの方から」そういいながらのりこは自分の左手を自分の左前、水平より少し上に掲げた。「呪いはやってくるんです。」
「いつも、左前方、ちょい上の方からやってくるんですか?」
「そうです。渦を巻いています。ギューッと巻いているんです。」
「ほうほうなるほど・・・ギューッと渦を巻いていると」メモを取りながらドクターは聞いている。
(つづく)
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