「ではみさおさん、みさおさんもステキだと思う男性から告白されてOKした。これを100点としましょう。彼氏ができるところからほど遠い、最も遠いところにいるのを0点としますね。いま、何点ぐらいのところにいますか?」
しばらく考えて、みさおはゆっくりと答えた。「そうですね。20点ぐらいだと思います。」
「なるほど。20点。それは、何があるから20点なのでしょうか。」
「何があるから・・・そうですね。先生のところに通って、だいぶ、世界に対する緊張感がなくなりましたし、ずいぶん楽になって、希望も出てきたことですね。でも、あんまり男友達もいないし、まだまだ先が長い、の20点です。」
「なるほど、分かりやすい説明ありがとうございます。では、その20点が、30点に上がったとします。今と何がどんな風に違っていたら、30点だと思いますか?複数回答可能です。」ドクターは最後の複数回答、のところだけ、少しおどけた調子で笑いながら言った。
「そうですね。男性の友達が出来たら、ですかね。」
「なるほど・・・」ドクターは少し考え込んだ様子になった。そしてゆっくりと質問をした。「男性の友達が出来たら、本当に30点ですか?」
「あ、いや、そうですよね。そこまで行ったら50点ぐらいかもしれません。」
「ですよね。ちょっと先走ったかな? では改めて、『30点』になったとしたら、どんな状態なのでしょうか。」ドクターは「30点」のところを強調して言った。
「ええと、親しい友達、というほどでなくても、たとえば、何かのサークルとか習い事で、男性とも一緒に食事に行ったり、連絡先を交換したり出来たら、30点ぐらいかな・・・」
「それは、今から『よしやるぞ』って思ったら、できそうなことですか?」ドクターは真顔でそう聞いた。
改めて質問されて、みさおはしばらく考え込んでいた。おそらく、実際にやれるかどうか頭の中でシミュレーションしてみているのだろう。そして、ようやく口を開いた。「いや、ちょっとハードルが高いかもしれません。」
少し暗い顔になって、みさおは言った。「すみません、先生。私、行動できないんですよね。だからダメなのかなぁ・・・」
「いま出来ることを課題として設定すれば良いんですよ。ただそれだけです。」ドクターは淡々と言った。
「いま出来ること・・・」
「たとえば、そうやって男性と知り合うチャンスがあるサークルの候補をみっつ見つけてみる、とか、今の職場で、今まで断っていた飲み会(ですよね?)に一時間だけでもいいから参加してみる、とか、最初の一歩は、本当に小さくて、簡単な課題を設定するのがコツなんですよ。」
「なるほど!あ、そういえば、先日4D(みさおが好きなロックバンドの略称だ)好きの集まりで、飲み会に誘われて、まだ返事をしていませんでした。いつもは、そういう会には参加しないですぐに帰ってしまっていました。今度参加してみようかな・・・」
「それは、やろうとしたら、できそうなことですか?」
しばらく想像してみて、みさおは笑顔になって答えた。「はい。そこなら知っている女性もいますし、男性の方も何回か顔を見ている人ばかりなので、今なら参加できそうな気がします。」
「お!いいですね。そうです。そうやって、今の自分に無理なく出来る背伸びをする。これが、物事をうまく行かせるコツなんです。」
ここで、助手のなつをが割って入った。「みさおさん、いま、うまく課題設定できましたよね。」
「はい。」
「いま、みさおさんがうまく課題設定できたのは、一旦課題を作ったあと、出来そうかどうか想像してみて、無理そうなら、少し課題を小さくして再設定する、ということをやったからです。」なつをは優しい調子でそう言った。
「ああ、なるほど。今までは、自分には無理な課題を設定して、いざやってみて、その場に行って『無理・・・』となって落ち込んで帰ってくる、みたいなことが多かった気がします。」
「課題設定がうまく出来た、今の感覚をしっかり覚えておいて下さいね!ここ、大事なところなんで!」今度は力強く、なつをは言った。
ドクターは「そうそう」とでも言いたげに、ゆっくりうなずいていた。
「では、今日はこの辺にしましょうか。いい課題も設定できたことですし。」
「はい、ありがとうございます。やってみます!」
(つづく)
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