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婚難(3)|恋愛ドクターの遺産第3話

第三幕

「失礼します。」そういってドクターが入ってきた。髪は短めにさっぱりとまとめているが、それほどおしゃれではない。白衣を着て、眼鏡を掛けている。眼鏡は縁の細いおしゃれな眼鏡だ。

「遅れてしまって申し訳ない。どうしても外せない用事がありまして。先に色々質問をしてもらってたんです。」ドクターが言った。
「いえ。なつをさんと楽しくお話しさせて頂きました。」かおりが答えた。
ドクターはなつをの方を見た。
「いえ、ふつうに質問票にある質問をしていただけです。わたしのとちりキャラが面白かったみたいで・・・」少し焦りながらなつをは言った。
「そうですか。楽しんで頂けたようでなによりです。」少しニヤニヤしながら、ドクターはかおりに向かってそう言った。

そして、急に真剣な顔になって、ドクターはなつをの記録した質問票を手に取った。「なるほど。」

「美人なのはいつからですか?」
「へっ?」
「あぁ、唐突な質問、失礼しました。でもこれは、まじめな質問です。おそらく、顔立ちからして、子供の頃から整った顔をしていらっしゃったのだと思うのですが。」
「・・・はい。わりと『綺麗だ』とか『美人だ』と言われることは多かったと思います。私自身は親しみやすい『可愛らしい』顔に生まれたかったのですが。」
ドクターは、分かる分かる、といった風に、ゆっくりと何度かうなずいた。
「なるほど。やはり子供の頃からですか。」やはり美人顔がいつからなのか、それは気になるらしい。

「先生、それ、彼女の問題と何か関係あるんですか?」
「ありますよ。おそらく。まだ聞きたいことがあるので、なつを君は少し静かにしてもらえますか?」
「すいません。」

ドクターは再びかおりの方を向くと、質問を続けた。
「えぇと、肩書きというか職業が『司法書士』さんだと言うことですが・・・」
「はい、以前からお世話になっていた経営コンサルタントの方のオフィスで、会社設立の登記などの法律業務を担当させて頂いています。」
「なるほど。ちなみに資格を取られたのはいつ頃ですか?」
「ちょうど7年前ぐらいです。」そう言ってかおりはハッとした表情になった。
「7年前は、色々ありました。彼と別れたのもその頃でしたし、資格試験で大変だったのも、その頃でした。」
「色々大変だったんですね。そして、7年前というのは、何か重要な転換点にはなっていたようですね。」
「はい、そう思います。」
「なかなか彼氏ができない理由。まずひとつは見つかりました。」
「はい。それは何でしょうか?」
「かおりさんが美人だからです。」

「えっ?」
「えっ?」
なつをとかおりが同時に声を上げた。

なぜ、美人だと彼氏ができないのだろう。不細工だと出来ない、というのなら、失礼な話ではあるが、話は分かる。なつをは思った。でも、いま、先生は明確に「美人だから」と言った。それにかおりさんは実際に美人だ。それが彼氏ができない理由とは・・・先生は時々私に理解できないことを言うが、今回もそうだ。

(つづく)

婚難(2)|恋愛ドクターの遺産第3話

第二幕

「えぇと・・・かおりさん。」
「はい。」
「こんにちは。」ややぎこちない感じで、なつをが挨拶をしている。
「こんにちは。」様子見をするような感じで、かおりも挨拶をする。
「今日は、ドクターAは、少し用事で出ておりまして、ご連絡しましたとおり、一般的な質問につきましては、私なつをがさせていただきます。」
「はい、伺っております。」
そう、今日は先生が多忙のため、私が予めいくつか質問をして、事前に情報収集しておくように言われているのだった。ある意味、カウンセリングの一部を任されているわけで、とても緊張している。

「えぇと・・・かおりさん。」
「はい。」
「彼氏がなかなかできない、という問題だと伺っておりますが、いないのは何年ぐらいになりますか?」
「7年ほどです。」
私は、ドクターから受け取った質問票に書き込みながら質問をしていった。
質問をしながら思った。いつも、先生はとくにメモをするわけでもなく、どんどん質問をして、どんどん話を進めていくけれど、それでも、ポイントを外すことは、ほぼない。それがいかに難しく、すごいことなのか、自分で相談者を前にして話を聞いてみるとよく分かる。メモを取るペンが、指先のイヤな汗で少しぬるぬるしている。
私は頑張って質問を続けた。
「その後、恋人を作るための取り組みなど、何かしてみたことはありますか?」
「えぇ、何人かの友達や同僚、男性も含めてですが、意見を聞いてみて、どうやら私は女らしくしていないというイメージらしかったので、ファッション雑誌を買うようにして、服の選び方とか、お化粧の仕方とか、女性らしくするように努力しました。」
「そうなんですね。いまはお綺麗ですよ。」
「ありがとうございます。」かおりは少し照れながら言った。「でも以前はざっくりとした洗いざらしのシャツにGパンにすっぴん、て感じで、スカートをはくようにしたのも、その頃からなんです。」
「・・・そうなんですね。」なつをの受け答えがまだぎこちない。メモを取っているとどうしても間がおかしくなってしまう。

「ご自分で、この問題について、原因を考えたり、解決のための取り組みをしたことはありますか?」やや棒読みになりながら、質問票にそってなつをは質問した。
「はい。先ほども申し上げたとおり、女らしくないことが原因だと、知人から指摘されましたので、その点については、女性らしい服装や振る舞いをするように、努力をしてきました。ただ、それでも、その後、恋人ができないので、最近ではインナーチャイルドの課題が何かあるのかな、と考えることもあります。」
(えと・・・本人が分析を述べたら、「もう少し詳しく教えてください」と言って、さらに聞き出すように・・・と書いてあるな・・・)なつをは質問票にある、先生からの指示を黙読して、次の質問を心の中で準備した。
「そのことを、もう少し詳しく教えてください。」
「はい。」かおりは話し始めた。
「先生のご著書や、ほかの心理学の本を読んだりして、色々勉強させていただいているのですが、そうすると、恋愛でうまく行かない背景には、子供時代の生育環境の影響がある、と、大抵書かれています。私自身も、子供時代に、両親が商売をしていまして共働きでしたので、寂しかった思い出はかなりありますし、何か、いまの恋人ができない問題と関係あるような気がしまして・・・」
「なるほど。そういうことなんですね。」なつをはメモを取るのに必死だった。
(とても頭の良い方のようだ・・・そして、しっかりと考えていらっしゃる。私、ちゃんと記録できているのだろうか・・・)なつをは理路整然と自分の問題について話すかおりに気押されて、また体中にイヤな汗をかいていた。

ふう。先ほどの質問に関するメモを取り終えると、なつをが深呼吸をして、次の質問に移った。
「お仕事は、何をしていらっしゃいますか?」
「仕事は、企業コンサルタントの会社で、司法書士をしています。コンサルティングは主に社長を始めとしたメンバーが行っていて、私は会社の設立登記などの法務を主にやっています。」
なつをは、メモを取りながら上目遣いにかおりをちらっと見た。
(結構やり手なんだ・・・キャリア系女子かぁ)
そんなことを思いながらメモを取るペンを走らせる。
「あ・・・なるほど、そうなんですか。お仕事はお忙しいですか?」
「そうですね。ずっと忙しかったんですけど、最近少し、後輩に仕事を任せたり、適度に手を抜いたりすることを覚えまして、少し自分の時間もとるようになりました。」
「えぇと・・・先生から、仕事が忙しい人の場合質問して下さい、と言われているんですが・・・」
「先生、なかなか先読みする人ですね。」かおりはそう言ってクスッと笑った。
「いや、ほんと、そうなんですよ。先に何でも分かっているような、そんな雰囲気で、でも実際、本当によく分かっていることも多くて、どこまでが本当でどこまでがハッタリだか分からないことも・・・あ、すいません、しゃべりすぎました。」
あー、これ、先生が聞いてたら怒られるだろうな。なつをは思った。クライアントが自分の話をするのがカウンセリングの時間。カウンセラー側は関係ない自分の話をしてはいけない、といつも言われていたのに、つい余計なことを口走ってしまった。
「なつをさんって、面白いですね。」かおりは一気に表情がほころんで、楽しそうな笑顔になった。
(まあ、緊張はほぐれたし、結果オーライかもしれない)なつをは思った。
「ご質問は、なんでしたっけ?」
「あぁ、すいません。ふたつあって、ひとつ目が、『仕事が忙しくなった頃と、彼氏ができなくなった頃は、同じ頃ですか?』もうひとつが、『お姉さまに頼りたい年下男子、みたいな男性が寄ってくることは、ありますか』です。」
「えぇっ」かおりは笑いながら言った。「お姉さまに頼りたい年下男子・・・って、確かにそういう子が寄ってくること、割とありましたよ。学生時代からかな。でも私、そういうの趣味じゃないんで、いつも断っていました。」
「はい。」なつをは必死でメモをしていた。
「なんか、なつをさんって、かわいいですね。あ、失礼だったらすみません。」
かわいいと言われて、なつをはなんだか恥ずかしくてからだが熱くなった。さきほどから緊張がほぐれて、やっと乾いてきた指先も、また少しぬるぬるしてきたような気がした。
「ええと、もうひとつ、なんでしたっけ?彼氏ができなくなった時期と、仕事が忙しくなった時期・・・ですよね?」
「えぇ。お願いします。」
「社会人になってから、わりとずっと忙しかったので、時期が一緒かどうかはよく分かりません。学生時代につき合っていた人と、27歳頃に別れてからは、その後ご縁がなくて、今に至る、という感じですね。」
「はい。メモメモ・・・っと」

忙しくなった時期と、恋愛のパターンが変化した(この場合は彼氏ができなくなったという変化だ)時期が同じかどうかを聞くのは、専門用語では「共変関係」と言う。ふたつの出来事が共に起きるようになり、また、共に起きなくなるとしたら、そのふたつには関連がある、と考えるのだ。恋愛相談の場合、好きとか嫌いとか、感情の話が多く、結果、論理的にあいまいな話が多いため、明確にAとBが相関しているかどうか、ということを見つけることが難しい。そんな中で、ドクターが苦心して考えたのが、出会いと別れの時期(これは本人が明確に覚えていることが多い)を訊く、というやり方だ。
但し、こうした、明確に答えられる事実を質問するだけでは、恋愛の問題は解決しない。
ロジカルシンキングは車で言えばハンドルみたいなもの。ロジカルのないカウンセリングは迷走する。但し、アクセルではない。感情、気持ちを扱う部分がアクセル。だから、ロジカルなだけのカウンセリングは、まったく先に進まない。いつか先生が言っていた。

ひととおり、なつをがかおりに質問をし終えたところで、ノックの音が聞こえた。ドクターが帰ってきたのだ。

(つづく)

婚難(1)|恋愛ドクターの遺産第3話

【登場人物】
(現在の人物)
ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
なつを ドクターの助手
かおり 相談者。彼氏いない歴7年 個性派の女性

 

第一幕

「はぁ。幸雄さんの気持ちわからないなぁ。」ゆり子はつぶやいた。
そう、恋愛ドクターの遺産(レガシー)。そのノートを読んでいろいろ考えていたのだった。
そして今、もう、一度は離婚しかないと決めた決意がまた揺らいでいるのだった。

これまで幾度かノートを開いて、ゆり子はそこに登場する女性たちの勇気がある姿に心動かされてきた。「この人たちはなんて強いんだろう」とゆり子は自分の結婚生活への向き合い方をもう一度考えてみようと思った。
「あー、今恋愛ドクターのおじいちゃんが生きていたらなぁ。カウンセラーに相談しながらだったらもっと私も勇気を持てたのかもしれない。」ゆり子がそんなことを考えていた。

「おじいちゃん」独り言のようにゆり子は言った。おじいちゃん生きていたらなぁ。。ゆり子が急におじいちゃんに会いたいそんな気持ちになった。
「またノートを開いてみようかな。」
ゆり子はノートの束を手に取り(父から段ボール箱でノートをたくさん受け取っていたのだった)、その中から1冊のノートを手に取った。そしてまたゆり子はそのノートを開いた。

・・・

「今日のテーマは、インナーチャイルドの課題と、恋愛の問題についてです。」
ホワイトボードを前にして、ドクターが語り始めた。恋愛ドクターの異名を取るAは、恋愛や結婚生活など、男女問題専門のカウンセラーだ。男女問題は心理のデリケートな動きが大きく影響する分野で、専門家でも原因の推定が難しかったり、誤解に基づいてアドバイスしてしまったり、という間違いの多い領域だ。
その分野で、専門家として有名なドクターの恋愛講義である。多くの人が貴重な話を聞こうと聴講に訪れている。会場にはざっと150名以上の聴講生・・・ほとんどが大人、それも40代以上に見える面々だ・・・おそらくはカウンセラーだろう・・・が座って講義を聴いている。

「恋愛の問題は、表面的に捉えると、本質を見失うことがあります。たとえば、ある女性が、恋人からの暴力を受けている、というケース。法律的にいえば暴力を振るった側に責任があります。もしあなた方が警察なら、彼を逮捕しなければなりません。そこには全く異論はないのですが、では、恋人を逮捕したらこの問題は解決するのかというと、そうではありません。このような女性は、その彼と別れてもまた、別の暴力的な男性と交際するというパターンを繰り返すことがあります。そして、その大もとをたどっていくと、子供時代に、家庭環境が暴力的であったことに行き着くことも、少なくないのです。」

今日もいつも通り絶好調だな、なつをは最前列右端で先生の話を聴きながらそう思った。先生は大抵、生々しい話・・・それが本題なのだが・・・から入る。あまり、前置きなどの工夫はしない。今日も、講義開始早々、核心に触れる内容に入っている。講座の出席者たちも、真剣な顔で聴き、また、メモを取っている。

「このように、子供時代の生育環境の影響がベースになり、大人として生きていくのに支障があるとき、『インナーチャイルド課題がある』と表現します。そして、恋愛は、非常に軽いインナーチャイルド課題・・・そうですね、仕事や知人との付き合いなどの、少し距離のある人間関係では問題として表面化しない程度の、軽いインナーチャイルド課題でさえ、問題の原因となることがあります。だから、恋愛の問題を考える時には、必ず、慎重に、インナーチャイルド課題について扱う必要があるのです。」

「たとえば、先ほどの、暴力的な男性との交際を繰り返してしまう、という女性のケースでいえば、子供時代に自分をしっかり守ってくれる両親の存在、そして、この世界に正義の原則がある、ということを教えてくれた存在・・・これも両親や先生などですが・・・が希薄だった場合に、こういう問題が起こりやすいことが知られています。」

先生の話は、いつも正確だ。なつをは話を聞きながらそんなことを思っていた。「言葉は正確に使う」が先生の理想だし、公言もしている。先生は言葉を象徴的、あるいは比喩的に、拡大解釈して使うやり方を「文学的表現」と称して、やや見下している嫌いがある。先生の言葉の使い方は、むしろ、科学者のそれに近い。先生の話は続いている。

「自分を守ってくれる存在を、身近に体験できずに育った場合、自分の中に正義の基準・・・たとえば、相手の気持ちを踏みにじって自分の主張を通すのは良くないこと、というような道徳観などがそれに当たりますが・・・そういうものが十分育たないで大人になってしまう、ということが起こります。すると、そのような女性がモラハラ傾向がある相手に出会っても、『その言動、おかしい!』と、自分の正義の基準に照らして判断することが、うまくできないのです。そして、なんとなく、その場の空気を壊さないように、その場が荒れないように、相手の機嫌を取って、という行動をしてしまう。その結果、暴力的な、問題のある相手に好かれてしまったりするわけです。自分の好き、嫌い、そして自分の中にある正しい、正しくないの基準を、きちんと相手に表現できないと、自分はいやだと思っているのに、相手からは好かれている、というようなひずみが生まれてしまうのです。」

「このような、インナーチャイルド課題を解決せずに、法律的な見地のみで問題解決を図るならば・・・即ち、暴力を振るったという『事実』だけを見て、相手の『行動』だけに責任を求めるという意味ですが・・・本当の意味で、問題は解決しないのです。」

(つづく)

性癖を直す(9)下|恋愛ドクターの遺産第2話

なつをが過去の思い出に浸っている間に、みきさんは、質問に答えていた。
「そうですね。実は、私にとって主人は大切な人で、だから今は、こうして取り戻すことが出来て幸せだと感じているのですけど、でも、ここに至るまでは、とてもつらかったです。友達にも色々相談して「なんで別れられないの?」「なんで『浮気はやめて』って言わないの?」と、色々言われました。私の友達は、主人のほくろフェチのことを知らないので、十分状況が分かった上でのアドバイスではないのですが、でも、キッパリ言えない、自分の主張が出来ない、怖くて別れられない、みたいな部分は、私自身の課題だと思います。」

「なるほど。結果的に別れずに夫婦がやり直せていることは、良かったことだけれど、でも、ここに至った理由の中に『ご主人さんが大切だから頑張った』以外の、『キッパリ言えない』『自分の主張が出来ない』『怖くて別れられない』といった、ネガティブな動機、というか・・・一般的な言い方で言うと消去法的な感じ? があったことが、気になっていらっしゃる、ということなのですね?」

「さすが先生。そうなんです。」

少し沈黙があったあと、ドクターは質問した。

「結果オーライ、ではありますよね?」
「はい。」
「ということは、今回の一連の『事件』というか、夫婦問題に関して、何か後悔しているわけではなさそうですね。」
「・・・たぶん、そうだと思います。」

「では、このタイミングで、わざわざ、ご自分の心のクセに取り組もうと思われたのは、どうしてですか? あ、いや、聴き方が分かりにくかったですね。えぇと、ご自分の心のクセに取り組んで、それが良くなったとしますね、そうしたら、生活や夫婦関係、仕事など、実際の生活で、何が良くなると思いますか?」

来た!なつをは思った。多くのカウンセラーは、自分の内面に向き合うのが好きだ。だから、内面に向き合って成長したい、変わりたい、というクライアントが来ると喜んで食いついてしまう。先生は少し違う。以前も、カウンセリングの技法を教わっていたときに、先生からこう言われた。「クライアントの中には、自分の内面的な問題をしっかり分析して、これを治したい、というような相談の仕方をしてくる人がいます。でも、それを鵜呑みにしてはいけません。」「えっ?間違っているからですか?」「いえ、大抵そういう人の分析は、かなり合ってます。」「ではどうして・・・」「それは、自己分析が趣味になってしまっている危険性があるからです。」そう、心理分析が趣味の人につき合うと、ずっと、延々、あんな問題もあった、こんな問題もあった、とやりつづけて行くことになるのだ。「まあ、そうやって趣味の人につき合うことで商売を成り立たせているカウンセラーもいるので、彼らを批判するつもりはないんですけどね。」と先生は言っていた。先生はあくまで、実際の生活の中で、何かが良くなる、ということに責任を持ちたいのだ。

みきさんは、しばらく考えて、こう答えた。「そうですね。友達関係とか、あと、最近少しずつ仕事を始めているのですが、職場の人間関係などで、ハッキリものを言えなくて、言いたい放題言われて、あとで悔しくなることがあります。主人は・・・色々ありましたけど、例のこと以外は、じっくり話を聞いてくれるし、とてもありがたいので・・・」

「なるほど。夫婦関係よりは、それ以外の人間関係で、自己主張ができるようになりたい、そんな方向性ですね。」

「はい。そうです。」

「では、その方向で、一緒にとり組んでいきましょう。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いいたします。」

「早速ですが、みきさん、自分の言いたいことを言えない傾向は、いつからですか?」
「小学生の頃は、わりと思ったことを口にする子でした。」
「そうなんですね。」
「はい。あぁ、思い出しました。中学校の頃に、父親が失業して、色々ありまして、その頃から、言えなくなったような気がします。」
「なるほど。」

先生さすがだ、なつをは思った。「(その症状・問題は)いつからですか」と問うのは、原因を探る質問の中でも、基本中の基本だ。そして今回も、もう問題の原因にたどり着いた。話し始めてまだ5分ほどしか経っていない。それでもう原因の当たりがついているのだから、今日も先生の質問の切れ味は最高だ。

(つづく)

性癖を直す(3)|恋愛ドクターの遺産第2話

そろそろ今日も、まいくんが来る時間だ。

・・・

「こんにちは、先生。」
「まいくん、こんにちは。」

お互い穏やかに挨拶をして席に着いた。

「まいくん、今日はまいくんの『フェチ』・・・つまり現在夫婦問題の中心課題になっているそれですが・・・それについてお話をしたいと考えているんですが・・・」
「はい。私もそうして頂きたいと思います。」
「ですが、その前にひとつ、確認したいことがあるんです。」
「何でも聞いてください。」
「それは、もしまいくんが、女性の鎖骨にあるほくろに興奮するのでしたら、奥さまの鎖骨にもほくろがある、ということなんでしょうか? だとしたら、なぜ奥さまのほくろには反応しなくなったのか。逆に、ほくろがない、ということでしたら、じゃあどうして、奥さまのことを好きになったのか、という疑問が湧いてくるわけです。」

なつをはちょっと赤面してしまった。いきなり生々しい会話が始まった。ほくろに興奮するかどうかの話だ。なんだか、自分の鎖骨も見られているような気がして恥ずかしくなってしまった。もちろん白衣を来ているし、その下にも色々着込んで隠れているので、実際には見られるはずがないのだが。

「実は先生、妻の鎖骨には、結婚前にはほくろがあったんです。でも、いつの間にか薄くなっていって、今ではほとんど見えません。その頃からですね。他の女性を求めたくなってしまったのは。」
「なるほど。まいくんが魅力を感じていた「ほくろ」を、奥さまは、かつては持っていた。でも、次第に消えてしまった。なかなか悩ましい展開ですね。」
「そうなんですよ。自分でも、こんな風になるなんて、想像もしていませんでした。」
「奥さまは、まいくんがほくろフェチであることをご存知なのですか?」
「はい、知っています。知っているからこそ、自分のほくろが消えてしまったことに責任感を感じてもいるようで・・・でも、ほくろなんて頑張っても濃くできるものでもありませんし、責任を感じる必要はないのですが・・・」
「そうですね。でも、現実問題、ほくろがないと、まいくんが自分に・・・この表現が適切か分かりませんが・・・『女』を感じてくれない。その事実は、重くのしかかっているわけですよね。」
「はい。お互い辛いけれど、どう解決していいのか分からないんです。」

なつをがここで割って入った。
「つけぼくろをしてもダメなんですか?」
ドクターとまいくんが同時になつをの方を見た。

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性癖を直す(1)|恋愛ドクターの遺産第2話

第一幕 メール

ゆり子は、手元にプリンターから出力した「資料」を1センチメートルぐらいの厚みに積み上げていた。夫との関係を修復するために、インターネット上から情報収集したもののうち、役に立ちそうだと思った記事をプリントアウトしたものだ。

(厳選したけれど・・・それでもこんなに沢山あるのか・・・)

この「資料」は、A4サイズの紙で、脇から色とりどりのふせんがはみ出ている。ゆり子は、一度は「もう無理」と思って夫との関係改善をあきらめたけれど、恋愛ドクターのノートを読んでいるうちに、ふと心が軽くなって、夫にしがみつく気はないけれど、やるだけやってみるかな、という気持ちになっていた。

ゆり子は、夫宛に、久しぶりに長いメールを書いた。これまでは「ごはんいる?」「何時?」みたいな、メールと言うよりチャットのような短文や挨拶文だけのメッセージが多かったので、少し時間がかかった。

幸雄さん
こんにちは。最近会話がなくなってしまったから、こうしてメールを書くのも少しヘンな感じです。今日もお仕事大変ですね。お疲れさま。いつも、家族のため、そして社会のために働いてくれてありがとう。
今日は、さくらが、お友達と一緒に遊ぶときに、上手にリーダーシップを発揮していた、とリナ先生に褒められました。親にとってはいつまでも小さい子ども、と感じるけど、少しずつ成長しているみたいです。
ごはんは、いつも通り用意しておきます。体に気をつけて、今日も頑張ってね。
さくらは幼稚園児。ゆり子たち夫婦の一人娘だ。ゆり子はこのあとさらに、過去の楽しかったこと・・・具体的には幸雄さんと一緒にディズニーランドに行った思い出や、一緒に行った温泉の話など・・・を続けて書いていたのだが、なんとなく違和感があって、今回は送らないことにして削除した。ネット上の「男女関係修復のテクニック」の中には、「ふたりが楽しく過ごした頃の思い出の話をする」というアドバイスもあった。そのページには何枚もふせんが貼られ、蛍光マーカーで線が引かれていた。
(でも・・・)ゆり子は、マニュアル通りに行動することに、なぜか違和感を感じていて、結局今現在の、夫への感謝の言葉と、さくらの近況報告だけを送ることにしたのだった。

幸雄からは、1時間ほどして返事が返ってきた。

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愛とロマンスが広がるーワークショップ ソッコー満席に。

あづまです。

愛とロマンスが広がる! 飽きないパートナーシップを手に入れる方法 ミニワークショップ@広島

広島初開催ということで、色々心配もしていたのですが、過去最速かという勢いで売り切れました。これまたびっくりですね。

これであとは、(やりたい内容の概要はもう決まっていますが)細かい講座内容の詰め作業ですね。いい講座にするために、がんばります。

広島行きは楽しみになってきました♪

ではでは!

愛とロマンスが広がる!飽きないパートナーシップを手に入れる方法 ミニワークショップ

来る8/9(火) 広島でセミナーをやります。

題して、
「愛とロマンスが広がる! 飽きないパートナーシップを手に入れる方法」
ミニワークショップ。

「飽きない」の「あき」と広島の「安芸」が実はかけ言葉になっているという工夫を入れたタイトルになっている、というのはきっと地味すぎて誰も気づいてくれないので、自分で言ってみました(笑)

今までも開催してきて、好評を頂いております、三部構成のミニワークショップ。
第一部が知識、第二部が設問に応じて自分で考えたりちょっとしたミニワークを行って、知識を自分事に落とし込むパート、そして、第三部ではオープンカウンセリング形式で、具体的な悩みを扱います。これでさらに、知識という骨格に、血肉が付くことになるでしょう。

カップル参加はお得になっています。

詳しくは、こちらのページを御覧ください。

ではでは!

珠帆美汐さんの写真集を制作しています。

珠帆美汐さんの家に来て、写真撮影を行いました(5/9)。
キレイな庭ですね。一番いい時期だそうです。

生と性、美、傷、死までをテーマとして扱った写真集を作る予定なんです。
なんと、写真集の編集者&カメラマンを私がやるなんてね。
でも、既にいいカットが何カットも撮れているので、以外と自分、ヤルじゃん、って思ってます。

今の時点で、見せていいヤツだけそっと公開。
あー、もっとスゴイやつあるんだけどなー。でも全部ネタバレしたら面白くないですからねー。
早く見せたくてウズウズしちゃいます。

エゾエンゴサクの花です。IMG_58410001

背景にたまちゃんのおうちが見えています。IMG_58290001

美しいです♪ IMG_57630001

エゾエンゴサクがいっぱい咲いてました。 IMG_56370001

庭木・・・と言うには生えすぎ。林みたいですね(笑)IMG_57170001

ではまた!

GW中のできごとと、結婚相手の選び方

あづまです。
GW中は、実は、家の片付けを、主にやってました。

結婚10年。
時代の重みが(うそうそ)、溜まった不要品が山のように出てきました。

結婚相手に求めるものは、色々あると思うんですが、
こういうときに、一緒に同じことにとり組んで、終わったら一緒にガッツポーズ(というか「お疲れ!」)ができる相手、と言いますか、チームメイトですね。

そういうことが大事なんじゃないかと、改めて思いました。

明日は、運命の相手にだけ出会う恋愛心理学ワークショップ@札幌。

未来のベストパートナー探しを目指している方のサポートのお仕事です。
気合入れていきます!

(写真はビジネスホテルの部屋で鏡に映った自分を自撮り)