呪い(1)|恋愛ドクターの遺産第9話

第一幕 のろいってなぁに?

今日は幼稚園がお休みで、娘のさくらと二人で家に居る。さくらはおとなしい子で、そういう意味では手がかからなくて助かっている。ときどき色々ママにアピールしてきたり、質問してきたりするが、ひとり遊びも上手に出来る。
「ママ、のろいってなぁに?」突然さくらに訊かれた。
「え?のろい? 何がのろいの?」
「えーとねー。カイ君のおうちで、女の人ののろいで、ママがおふとんの中で動けなくなっちゃったんだって。」
どうやら、さくらは、幼稚園のお友達・・・カイ君はゆり子と仲の良い香澄の家の子だ・・・が話していた「呪い」のことを一生懸命伝えようとしていたらしい。しかもお布団の中で動けなくなったというのは、金縛りのことのようだ。つまり、翻訳すると、香澄が呪いのために金縛りに遭った、という話なのだろうか。香澄はあまり呪いなどを信じるタイプではないようだったが、そういう信念とは関係なく金縛りになることもあるらしいので・・・ちょっと心配になった。

「ねーねー、のろいってなぁに?」さくらは気になって仕方ないらしい。さて、どう答えたものか・・・
「あのね、昔の人は、誰かをものすごく嫌ったり、死んでほしい、って思ったりすると、その相手が病気になったり、本当に死んじゃったりする、って信じてたんだよ。」
「えー、そうなの?」
「ママは信じてないけどね。」
「でも、カイ君が、ママがのろいで、おふとんの中で動けなくなった、って言ってた。」
「うーん、(香澄がねぇ・・・)どうなんだろう・・・今度会ったときに聞いてみるね。」
「うん・・・あのさ、さくらものろいでおふとんから動けなくなる?」さくらが心配そうに訊いた。
「大丈夫。大丈夫よ。さくらは皆と仲良しだもの。さくらのことを呪うお友達はいないよ。だから、大丈夫。それに、もし、おふとんの中で動けなくなったら、ママが治してあげる。」
「ほんとに?」さくらの目が急にキラキラしてきた。子供は分かりやすい。
「うん。ほんとだよ。だから、さくらは大丈夫。いつも通りご飯をちゃんと食べて、よく寝て。」
「トイレと歯磨きもね!」
そう、呪いとは何の関係もないが、すでにさくらの頭の中ではきちんと生活することが大事、という話になっているようだ。
「そうそう、トイレと歯磨きもしっかりして。」
「うん、分かった。」

 

その数日後、また例の面々でランチをすることになった。
香澄、順子、ゆり子の三人だ。最近この三人に合流することの多い結菜は、今日は来ていない。話題は当然、香澄が金縛りに遭ったかどうか、という話になった。
「いや、カイの奴が変なこと広めたもんだから、皆から『金縛りに遭ったの?』って訊かれて大変よ、もう。」香澄は苦笑しながら言った。
「え!?じゃあ、アレはデマなの?」私はつい声が大きくなってしまった。
「いやいや、デマじゃなくてね、実際に金縛りに遭ったのは、私の姉なの。彼女、ちょっと霊的なことを信じていて・・・まあちょっと面倒くさいんだけど・・・実際彼女に呪いをかけた知人がいたらしいのね。」
「呪いなんて本当にあるの?」順子が冷静に訊いた。
「いや、本当かどうかは、私もよく分からないよ。でもね、とにかく呪いをかけるほど恨みか何かを持っているらしいのね。姉にそういう知人がいるのは事実。そして、その人は呪いとか金縛りとか信じている人。姉もそうなんだけど。」
「なるほど・・・話がなんとなく見えてきた・・・」と順子。
「そう、つまりね、姉を恨んでいる知人が、たぶん、呪いの儀式か何かを実際に行って、それをしたよ、ということを、わざわざ姉に伝えてきたわけ。髪の毛だとか、儀式に使った鳥の羽だとか、気持ち悪いものが送られてきたらしいし。」
「えー、やだーそういう人ー。」順子と私は同時に声を上げてしまった。
「そのことがあってしばらくして、姉が金縛りに遭った、というわけ。」
「ああなあるほど。まあそれだけ精神的なストレスを受ければね・・・」私はついうっかり口を滑らせてストレス説を言ってしまった。
その瞬間、香澄の表情が曇った。「いや、まあ、そうなんだけど。私もそうだろうって姉に言ったんだけど、彼女、かなり激怒して『呪いをかけられたことがないからそんなこと言えるんだ!』って。もう面倒くさいから、うちでは呪い、ってことにしてるんだ。」
「ああなるほど。そういうことか。それでカイ君が・・・」そう言いかけたところに、香澄がかぶせてきた。
「そうなのよ。大人同士の話を聞きかじって、色々誤解して、それを幼稚園で話して回った、というのが、事の顛末なわけ。」
「あーなるほどねー。少し安心した。私、香澄が金縛りに遭ったのかと思って・・・呪いと関係なく、そうなることもあるらしいし・・・少し心配してたんだ・・・」
「ゆり子、ありがとね。心配してくれて。でも、私じゃないから。」ちょっと苦笑い気味の表情で、香澄がそう言った。

 

ランチは、そんな感じの会話で、ほどなくして解散になり、ゆり子は帰宅した。幼稚園が終わるまでにはまだ少し時間がある。
(まさか、今ノートを抜き出したら、ドクターが呪いに立ち向かう巻が出てくるなんて都合のいいことはないよね・・・)

そう思いながら、ゆり子は段ボールに無造作に突っ込んであるノートの中から、一冊を抜き出して開いてみた。そして思わず小さく「あっ」と声を上げてしまった。なぜなら、そこには確かに「呪い」の文字が書かれていたからである。

(つづく)

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脱オレサマを目指す女子(15)|恋愛ドクターの遺産第8話

第六幕 ゆり子の変化

ゆり子はノートを閉じた。
「はぁ・・・ダンナがオレサマなのは、私が引き寄せているのかなぁ・・・。」
何だか今回はノートを読んでいて疲れた。今まで、色々あったけれどノートを開けばそこに救いがあった。でも、今回は救われたというより、内面を変えなければいけないという、恋愛ドクターの教えをずっと突き付けられていたように感じていた。そして、読み終えた今、その緊張感からか、疲れがどっと出たのだ。

今からでも、自分を変えたらダンナとの関係は変わるのだろうか。
それとも、出会いの段階ですでに道を間違えてしまっているので、今から関係を変えるのは無理なのだろうか。
そのようなことを考えるだけでも頭がいっぱいになって、余計疲れてきた。
「今日はもうよそう・・・」ゆり子は考えるのを止めた。恋愛ドクターの遺産ノートを読むようになってから、ぐるぐる思考を切り上げることだけは早くなった、と思う。

その翌日、また例の面々と、一緒にランチをすることになった。
結菜は相変わらず、オレサマなダンナに気疲れする毎日を過ごしているらしい。例によって香澄は「そんなのキッパリ言ってやんなよ、『もうアンタのメシは作りたくない』って。」などと言っている。順子は静観している。
そんな、今まで通りの光景の中で、ゆり子の中で変化が起きていることに気づいた。
自分の外側で起きている出来事と、そのときに、自分の内側で起きている出来事を、同時に観察できるようになったことだ。
たとえば、こんな感じだ。
香澄の先ほどの言葉に、結菜が不安げな表情を浮かべ、黙り込んでしまった。
こんなことが起きた時、「あーあ、また香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ。まあ、正論ではあるんだけど。」と今までは考えていた。今も考えているのだけれど、違うところは、そう考えているんだなぁ、と自分を観察するもうひとつの目が、同時に持てるようになったこと。
まとめると、こんな感じだ。
(かつて)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。
(今)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。→あ、自分って、そういう事考えているな、と自分の考えにも気づいた。
さらに、自分の考えだけじゃなくて、感情にその場で気づく力も上がったように思えた。先ほどの例に続けて書くと、
(かつて)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。→なんかもやもやする気持ちがあったが、その場では明確に自覚できず、家に帰ってからも、もやもやし続けていた。
(今)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。→あ、自分て、そういう事考えているな、と気づいた。→香澄に同情してちょっと悲しくなった。同時に、自分もオレサマ的なダンナとの関係を整理できないでいることを、間接的に責められているような気がして、気が重く(罪悪感かな)なってきた。→そして、そういう感情が湧いてきたことを、その場で自覚している!!!

結論の出る話ではないので、その日のランチはその後、話があっちに行ったり、こっちに行ったりしつつ終了した。ゆり子はその時間の中で、自分自身の変化を確かに感じているのだった。

娘のさくらをお迎えに行って、今日もいつものルーティーンをこなし、夜一人になってから、ふとゆり子は考えた。
「恋愛ドクターの遺産って、漢方薬のように、じわじわと考え方や気づき力などを変えていくノートなのかもしれない。」と。

(第8話おわり 第9話につづく)

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脱オレサマを目指す女子(14)|恋愛ドクターの遺産第8話

「あのあと、仲のいい職場の友達は、私が困っていると助けてくれることが多くなりました。何か頼んだわけではないのに、向こうから助けてくれるんです。」淑恵は少し目を潤ませながら言った。
「そうですか。それは良かったですね。」
「職場に、ちょっと高圧的・・・というか女性の方なんですけど、色々押しつけてくる人がいるんですけど、いつも色々言われて『この人苦手だなぁ』って思っていたんですね。これまで、『ちゃんとNOが言えないとダメなのかなぁ』って思ってアサーティブの本を買って勉強したりもしたんですけど、なかなかうまく言えなくて・・・でも、先生に頂いた課題をやって、自分の感情に意識を向けるようにしたら、自分から何もしていないのに、S子ちゃんを始めとして、職場の仲良しの人たちが私の味方をしてくれて、そのお局的な人から守ってくれたんです。」
「まさに、分かりやすくなった、ということなんでしょうね。お友達も、淑恵さんが困っていたら助けたかったのだと思いますよ。」ドクターはニコニコしている。

少しだけ沈黙があって、ドクターが口を開いた。「ああ、そうそう。私の好きな言い方で、『テーブルの上に誰の感情が載っているか』という話をしたいと思います。」
「テーブルの上に・・・感情ですか・・・?」
「ええ、淑恵さんと、まあ誰かが会話していたとしますね。そのとき、話した話題をテーブルの上に載せていく、とイメージしてみます。」
「はい。」
「事実に関する話、解釈に関すること、そして気持ち、感情ですね。色々な要素が会話の中では出てくると思いますが、特に、感情の部分ですね。どちらの人の感情が多く出てきたか。どちらの人の感情が多くテーブルの上に載ったか。そんな風に考えてみます。」
「はい。」
「そのときに、良い友達関係というのは、お互いの感情が半々ぐらいで載る感じなんです。」
「ああ・・・今まで私の場合、友達でも相手の感情がほぼ載っていた感じです・・・あ、でも、S子ちゃんは私の気持ちをよく聞いてくれるので、S子ちゃんとの会話の時は、私の感情も載っているかもしれません。」
「なるほどね。そうやって、お互いの感情が両方載るのが、心地よい関係の基本なのです。そういえば、このご相談は、オレサマタイプの男性によく言い寄られて困る、という話から始まったわけですが、オレサマの場合は・・・」とドクターが言いかけたところで淑恵がかぶせてきた。
「彼の感情が100%載っていました。」
「ですよね。」

「ああ、なんだか分かってきました。オレサマタイプを避けようとするのではなくて、一生懸命自分の要求を伝えようとするのでもなくて、ただ、自分の感情を感じること。そのことで既に、テーブルの上に自分の感情を載せていることになるんですね!」
「おっ!いいところに気づきました!そういうことなんです。もちろん、必要に応じて感情を改めて言葉にして伝えたり、要求を言葉にして伝えることも、必要だと思いますよ。でも、その前に、その前提として、自分の感情を自分でちゃんと感じること。ちゃんと意識すること。それができると、会話のテーブルに、あらかじめ自分の感情を載せておくことが出来るわけです。逆に会話のテーブルに載っている感情がなくて、テーブルが空だと、そこに感情を載せたい人が寄ってきてしまうわけです。典型的にはオレサマな男性とか。」

「なるほど!!! 分かってみると納得です! でも、今までこんな大事なことに気づかず他人と関わっていたなんて、知ってみると何だか怖いです。」淑恵は身震いした。
「そうですね。これを知らないで生きていくなんて、分かってみると怖いことですね。」

 

こんな風に、この日のセッションは、もう、ドクターはほぼ解決と考えているのだろう。特に突っ込んだ質問が投げかけられる訳でもなく、淑恵の疑問にドクターが答えるという形で淡々と進んでいった。

「では、この辺で、卒業としていいと思いますよ。」ドクターが穏やかな調子で言った。
「先生!ありがとうございます。」今日一番の、嬉しそうな声で淑恵が言った。

「では、お元気で。多分もう大丈夫だと思いますよ。もし同じような問題がまた起きた時は、この一連のセッションで課題になったことを思いだして下さいね。」
「はい、とても勉強になりました。ありがとうございました。」淑恵は深々と頭を下げて、帰っていった。

(つづく)

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自分を好きになる心理学 愛と陽子の物語

今日は、ワークショップの内容に関連して、
愛ちゃんと、陽子さんに登場してもらいましょう・・・

 

陽子さんの物語・・・

「ケイたん、インナーチャイルドって知ってる?」
「あぁ、なんか、家庭環境がひどいと、心の中の小さな子供が
傷ついたままになってしまう、っていうあれのこと?」
「そうそう。それでね、こないだ、カウンセラーのK先生の
ところに行ってきたんだ。」
「えっ?そうなの?陽子、何か悩んでたんだ?」
「そうなの。実は、彼とのことで悩んでいて・・・ひどい人なんだよね・・・」

・・・(彼との悩みの詳細は今はナイショ)・・・

「えー、それはつらいね・・・」

「それで、そのことでK先生のところに相談に行ってきたんだ。」
「うんうん、それで?」
「そうしたら、私はインナーチャイルドが傷ついていて、
アダルトチルドレンだって言われたの。」
「へー。そうなんだ。」

「それで、機能不全家族で育ったんでしょ、って言われたの。」
「えっ!? だって、陽子のご両親、すごくいい人だよね?」

「私もそう思うんだけど、K先生は
『みんなそうやって否認するんだ』って・・・」
「・・・なんか怪しくない?その先生。」
「そう思うよね?で、そのあとの話は適当に聞いて帰ってきたんだけど、
妙に気になってしまってね・・・」
「そっか。気にしなくていいのに、そんなこと。」
「うん・・・でもね、感情があまり出ない、って言われたことが、
気になってしまって・・・」
「ああ、確かに陽子は感情的な方じゃないよね。」
「うん。それは前から自覚していたけれど、
それがアダルトチルドレンの典型的な症状だ、って言われたの。」
「えっ?そうなんだ。」
「うん・・・それで、何か私に問題があるのかな・・・って。」
「うーん・・・私には分からないな・・・あ、でも、恋愛ドクターっていう
カウンセラーが、枠に囚われないカウンセリングをするっていう噂を
聞いたことがある。そっちの先生のところに行ってみたら?」
「そっか。そうだね。何か分かるかもしれないし・・・」

 

愛ちゃんの物語・・・

「ねぇねぇケイたん、インナーチャイルドって知ってる?」
「えっ!?(なんか昨日も聞いたような・・・) うん、まぁ。」
「私、インナーチャイルドが傷ついているように見える?」
「えっ!?突然言われても
・・・もしかしてどこかのカウンセラーに言われたとか?」
「何で分かったの?ケイたんすごい!」
「いや・・・この前も別の人から似たような話を聞いたものだから・・・」
「そうなんだ。カウンセラーのK先生。」
「・・・あ、やっぱり。」
「そうなんだ!あの先生、結構決めつけるんだよね。」
「そうみたいだね。何を決めつけられたの?
というか、愛は何か相談に行ったんだ?」
「そう、実は彼とのこと・・・というか私自身の恋愛傾向のことで
悩んでいて、それで相談に行ったんだけど・・・」

・・・(相談内容は今はヒミツ)・・・

「うんうん、それで?」
「あなたは、アダルトチルドレンで、だから恋愛依存症になっているんだ、
って言われちゃったの。」
「そうなんだ。それで、もしかして、
家庭環境がひどかったとか言われた・・・?」
「えっ?もしかしてそれもお決まりなの? そう!そうなの!家庭環境が
ひどくて、そこで傷ついて育ったアダルトチルドレンだから、
恋愛依存になるんだ、って言われたの。」
(やっぱり・・・誰にでも言うんだ・・・)「もしかして、アダルト
チルドレンの人はそうやって否認するんだよね、とかも言われた?」
「えっ?それもお決まりなの?」
「どうやらそうみたいだね・・・」
「あー、なんか色々心配して損しちゃった。誰にでも同じこと言う人
だったんだ、なんかガッカリしちゃった。」
「恋愛ドクターって知ってる?」
「えっ?いや、初めて聞いたけど。誰それ?恋愛のお医者さん?」
「そう、そんな感じ。実際に会ったことはないんだけど、一人一人を
ちゃんと見て、解決策を決めてくれるカウンセラーの人みたいだよ。
愛も行ってみたら?」
「そっか。考えてみる。」
「行ったらどんなだったか、あとで教えて!」
「うん、分かった。」

 

・・・もしかしたら一部差し替えるかもしれませんが、
自分を好きになる心理学 ミニワークショップでお話しする、
ふたりの女性の物語です。

感情があまり出ない、理性的すぎる陽子と、
感情があふれてしまう、感情豊かすぎる愛。

ふたりの物語を対比しながら、

個性とは何か。
そして、
アダルトチルドレン原因説の問題点

などを学んでいきます。

 

★8/27(日)「自分を好きになる心理学」ミニWS。
テーマは個性問題です。自分の個性、好きですか?
第一部 恋愛ドクターの遺産 番外編(新作)
「感情豊かすぎる 愛ちゃんの物語」
「理性的すぎる 陽子さんの物語」
第二部 第一部の物語に出てきたワークの実習等
第三部 オープンカウンセリング

お申し込みはこちらから。
http://bit.ly/2wtLfLs

 

脱オレサマを目指す女子(13)|恋愛ドクターの遺産第8話

第五幕 テーブルの上に載せるもの

前回のセッションから数週間経った頃、今日も淑恵のセッションの日がやって来た。ドクターの意向で、しばらくひとりで他人とのコミュニケーションを取ってみる方針だった。特に、前回のセッションでテーマになった「他人が目の前にいると、目の前の人のことばかりに意識が向く」という傾向を、少し直して、「他人が目の前にいるときにも、自分の感情に一定の意識を向ける」という方向に努力する、という課題をやることが、主題であった。

「先生、そろそろ淑恵さんがいらっしゃる頃です。」なつをが言った。
「ああそうか。ありがとう。」ドクターは椅子に真っ直ぐ座り直しながら答えた。

ノックの音がして、淑恵が入ってきた。
「こんにちは、先生。」
「こんにちは。淑恵さん。なんだか、活き活きしているように見えますね。」ドクターは早速コメントした。
「あ、ありがとうございます。友達にもそう言われました。あ、なつをさん、こんにちは!」
「こんにちは。今日もありがとうございます。」なつをは丁寧にお辞儀をして答えた。

「どうそ、おかけになってください。」ドクターが自分の席に着席しながら言った。「さて、なんとなくそのご様子から、問題はずいぶん解決に向かっていそうな感じがするのですが・・・」
「はい、そうなんです!」

「・・・では、今日は、どのようなテーマでお話しすればよろしいのでしょうか?」ドクターは丁寧に質問した。
(始まりは丁寧だなぁ)なつをは思った。話が始まるとざっくばらんに語ることの多い先生だが、セッションの始まりは丁寧に、というのは大事な基本方針なのだ。私も先生からそうするように指導されている。

「あの・・・今まではわりと仲のいい友達からも、『よく我慢できるよね〜』みたいに言われることが多かったんですね。忍耐強い、我慢強いと思われていたみたいです。」
「なるほど。」
「でも、先生に頂いた課題を実践するようになったら、友達から『分かりやすくなった』と言われました。今までは、友達も私が何を考えているのかよく分からなかったみたいです。」
「なるほどそうですか。それは納得です。」

「そこが、私はなんだかよく分からなくて。だって別に、相手に要求を伝えたわけでもないし、取り組んだのは、相手が目の前にいるときに、自分の気持ちをちゃんと感じるようにした、ということだけです。実際、感じただけで、伝えてもいないんですよ。」
「それなのに、『分かりやすくなった』と言われたと。」
「はい。そういうものなんですか?」

「そういう場合もあるし、そううまくは行かないこともあります。ただ、お友達は、相手の気持ちを察するのが上手な人なのでしょう。だから、淑恵さんの変化にすぐ気づいたのだと思いますよ。」
「あ、そうです!すごくよく気がつく友達なんです。でも今まで、私は本当は我慢したくなんかないのに、『我慢強い』とか『よく我慢できるね』とか言われるのが、なんだか釈然としなかったんですが・・・」淑恵は考え込んでいるような表情でそう言った。

ドクターはにっこりして、ゆっくり口を開いた。「では、少しそのへんの仕組みを説明しましょうか。」
「はい、お願いします。」
「それは、今まで淑恵さんはそれだけ『分かりにくかった』ということなんだと思います。」
「そうなんですね・・・」
「だって、自分でも、自分の感情を感じていないわけでしょう? よほど鋭い人じゃない限り、本人がまだちゃんと感じることができていない感情を、先取りして感じるなんてできませんから。」
「・・・ですよね・・・そう言われてみれば・・・」
「私も、こういう職業をしていますが、そしてカウンセリングの時には、クライアントの感情に集中しています。それでも、本人がまだ感じていない感情を先取りできるかと言うと、まあ、五分五分ぐらいですね。」
「なるほど・・・そうですよね・・・」
「私も、仕事以外の時はそこまで相手の感情に意識を集中していませんから、そうなると、ほぼ分かりません。」
「先生でもそうなんですか?」
「私を超能力者か何かと? 私は普通の人間ですよ。知識と経験は少しはあると思いますが。」ドクターは笑いながらそう言った。「そもそも感情というのは、自分の中で起きている事を、相手に分かりやすく伝えるためのメッセージのようなものです。感情があるから、『ああ今、この人は喜んでいるのだな』とか『これは嫌なんだな』とか、相手に分かる訳です。」
「なるほど・・・」
「だから、相手に言葉で助けを求めるとか、頼み事をするとか、そういう目に見える行動をする前に、『自分の感情を感じている』という状態がまず大事なんです。」

「あのあと、仲のいい職場の友達は、私が困っていると助けてくれることが多くなりました。何か頼んだわけではないのに、向こうから助けてくれるんです。」淑恵は少し目を潤ませながら言った。
「そうですか。それは良かったですね。」

(つづく)

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自分を好きになる心理学 ミニWS

こんにちは。あづまです。

インナーチャイルド、癒してますか?
あ、いやいや、今日はその話じゃありませんでした。

むしろ、インナーチャイルドの課題かと思っていろいろ取り組んでいるけれど、解決しないアナタに、それ、直そうとすると余計こじれるかもよ? というお話をしようと思ったのでした。

個性の問題。

生まれつき、自分がそうである、という話。

その場合、幼少期の家庭環境で傷ついて育ったからそれを癒して【治して】良くなろう、というアプローチとは、ほぼ、真逆のアプローチが必要になります。

なぜなら、個性を「治そうとする」というのは、むしろ自分を殺すことだからです。

個性を活かすとはどういうことか。自分を好きになるとはどういうことか。それを体験的に理解して頂けるワークショップを開催いたします。少し具体例を交えて説明しているページがこちらです。

興味のある方はぜひどうぞ。
ではまた!

脱オレサマを目指す女子(12)|恋愛ドクターの遺産第8話

「あの・・・先生が『焼肉』とおっしゃったので、もう『ああ焼肉を食べたいんだな』『お腹が空いているのかな』と、目の前の相手の考えにしか、意識が向かなくなっていました。二回目の方は、先生が目で合図して下さったのもあって、そのときに、自分の胸のあたりがすごく悲しくてきゅーんって感じでしぼむような感じになっていたことに気づきました。」
「そう、私はそこに気づくところまでを課題として出したのですが、結果的に、気づいたら『焼肉と聞いてがっかりしています』としっかり伝えるところまで出来ていましたね!」
「そうなんです!自分でもびっくりしました!」
「つまり、今まで、自分の感情に意識を向けないように、向けないようにしてきた、ということなのかもしれませんね。だから今後、意識の使い方を、自分の体の感覚にも意識を向ける、という風に変えていくと、今みたいに自分の利益についても、ちゃんと言えるようになりそうですよ。」
「ありがとうございます!そうですね。実は、アサーティブとか、自己主張のトレーニングを受けたことはあったのです。」
「おっ!そうなんですね!そういう努力、素晴らしいと思います!」
「ありがとうございます・・・でも、結局ちゃんと言えるようにならなくて、何でダメなんだろう、ってずっと思っていました。」
「ああなるほどね。そもそも感じてないんじゃ、伝えようがないですからね。」
「そうそう!そうなんです!今日やっと、大事なポイントが分かりました!先生、ありがとうございます!」
「いえいえ。どういたしまして。ちなみに、自己主張のトレーニングをしたことは無駄ではなかったと思いますよ。」
「えっ?そうなんですか?」
「そう思います。だからこそ、伝えるべき感情が自覚出来た瞬間に、ちゃんと言えたのだと思います。」
「あっ、そうか。そうですね!無駄ではなかったということですね。安心しました。」

 

「さて、コツが分かったところで、では、実際の生活や仕事の中で、今の取り組みをどうやって行っていくか、その辺りを考えておきましょうか。」
「あ、はい。お願いします。」
「では、比較的今の取り組みがやりやすい相手、というのは誰ですか?」
「よく休日にランチに行くお友達のS子ちゃんです。」
「なるほど。ではまず、その子の前で実践する、というのを最初のステップにしましょう。自分の気持ちを伝えるところまで、もし出来なければ、それはそれでOKとしましょう。」
「まずは、感じてみるところまで、ですね?」
「そうです。それなら出来そうですよね?」
「はい、出来ると思います。」
「そして、次のステップとしては、職場の中で、やりやすい相手はいますか?」
「ええと。割と面倒見が良くて、色々こちらの意見を聞いてくれたり、希望を聞いてくれるちょっと年配の女性の方がいらっしゃるんですけど、その方の前ならたぶんできると思います。」
「おお、いいですね!次のステップとしてはそんな感じで行きましょう。」
「はい。」
「で、もし、結構簡単だな、と思えたら、もう少し緊張する相手の前でどこまでできるかとか、それほど親しくない人と会話しているときにも、どこまで自分の体の感覚を意識出来るかとか、ちょっとずつチャレンジしてみて下さい。」
「はい。相手に伝えることは、しなくていいのですか?」
「うーん。なんとなく、どっちでもいい気がしているのですが・・・あ、すいません。なんか無責任なことを言っているように聞こえますよね? ええと、今日も、自分の気持ちが分かった途端、ちゃんと言えたじゃない? だから、言えそうな気もするし・・・なので、まずは、感じるトレーニングだけしてみて、それでもしも、言うところがすごく抵抗があって大変そうなら、その時にまた、対策を考えればいいかな、なんて思っているんです。」
「あ、なるほど。そうですね。取り越し苦労しても仕方ないですね。」
「そういうこと。」

少し沈黙があったあと、ドクターが言った。「では、今日はここまで、ということで。」
「はい、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」

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脱オレサマを目指す女子(11)|恋愛ドクターの遺産第8話

「そんな状況の中、淑恵さんのように、彼に合わせてくれる女性に出会ったら、どう感じると思いますか?『お前だけがオレのことを分かってくれる!素晴らしい女性だ!』って思うわけですよ。」
「ああっ!実際それ、言われました。」
ドクターは数回深くうなずいてから静かに言った。「というわけなのです。」

言われたことをしばらく咀嚼(そしゃく)している様子に見えたが、やがて淑恵は口を開いた。「ということは、相手の望むように振る舞うことが、必ずしもプラスになるという訳ではないのですね?」
「そうですね。残念ながら、そういう結論になります。」
少し沈黙があった。
沈黙を破ったのはドクターだった。「相手が望むように振る舞う、淑恵さんの側は良いとして、淑恵さんに不快な思いをさせ続けている、その相手、オレサマの側には、問題がありますよね? でも、本人が気づかないのなら、その状況は変わりようもない。だから、淑恵さんの側から働きかけることも大事なことなのです。」
「働きかけるって、どういうことなのでしょう?」
「働きかけるといっても、まず始めにやるべきことは、きちんと自分の望みや自分の感情に意識を向ける、という内面的な作業になります。」
「ああそれ、私が苦手な部分ですね。」
「そうですね。少し一緒に練習してみましょう。では・・・そうですね。淑恵さんと私が友達同士だったとしましょう。今日は休日。一緒に遅い朝食、というかブランチを取ることになっていたとします。淑恵さんは今日は行きたいカフェがあるとします。そして私の方は、なんと朝から焼肉を食べたい、という設定で行きますね。あ、そうそう、私のことは、このロールプレイでは『あっくん』と呼んで下さい。」
「はい。」
「あのさ、淑恵ちゃん、今日のブランチ、ちょっとお腹空いていて、焼肉を食べに行きたいんだけど。」
「え?焼肉?そ、そうだね。今日はお腹空いているの?」
「はい、ストーップ。」ドクターが急に会話を止めた。そして続けて言った。「いま、何を考えていましたか?」
「えと、焼肉食べたいのかな?お腹空いているのかな?って。」
「そうだと思っていました。もう一度、今のロールプレイを最初からやってみます。でも、今度は、次の点を努力してみて下さい。私が意見を言ったあと、自分の体の感覚を感じるようにしてみてください。『あっくんは焼肉食べたいのかな?』とか考えてもOKですから、そのあとに、『一方自分は、どう感じているのかな?』と、体に意識を向けて、自分の感情を探ってみてください。」
「はい。頑張ってみます。」
「では、テイク2(笑)行きましょう。」
「あのさ、淑恵ちゃん、今日のブランチ、ちょっとお腹空いていて、焼肉を食べに行きたいんだけど。」
「え?焼肉?そ、そうだね。今日はお腹空いているの?」
ここでドクターは目で合図して、うなずいて、(今自分の体の感覚を探るんだよ)という無言のサインを送った。
「あの・・・」
ドクターは、淑恵が先を続けるのを待っている。
「あの・・・私、本当はカフェでおしゃれにブランチするのを楽しみにしていて、だから焼肉って聞いてちょっとがっかりしています。」
「はい、ここで一旦止めましょう。」ドクターが再度会話を止めた。
「さて、今度は、体に意識を向けて、感情を探ることにチャレンジしてもらったわけですが、先ほどと、何がどう違いましたか?」
「ええと、先ほどは、先生・・・いやあっくん・・・」そう言いかけたところでドクターが「いや、どちらでもいいですよ」と笑って言った。
「あの・・・先生が『焼肉』とおっしゃったので、もう『ああ焼肉を食べたいんだな』『お腹が空いているのかな』と、目の前の相手の考えにしか、意識が向かなくなっていました。二回目の方は、先生が目で合図して下さったのもあって、そのときに、自分の胸のあたりがすごく悲しくてきゅーんって感じでしぼむような感じになっていたことに気づきました。」

(つづく)

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脱オレサマを目指す女子(10)|恋愛ドクターの遺産第8話

淑恵はその言葉を聞いて、ぱあっと表情が明るくなった。「あ!先生!分かりました。相手も、私に合わせようとしてくれていると、心地よい会話になるのだと思います!」
「はい。かなりいい線行きました。それで90点ぐらいです。もうちょっと説明しましょうかね。」
「はい、お願いします。」
「合わせようとしているかどうかは、本質ではないのですが、結果的に、会話をしている二人の頭の中に同じ事柄があるかどうか、ということが本質だと私は考えています。」
「ふたりが・・・同じことを考えている、ということですか?」
「まあ、大体そんな感じです。考え方や意見は違うことはあると思いますが、少なくとも、『同じことについて』考えている、ということですね。」
「ああなるほど、それで分かりました。話していて疲れる相手というのは、こちらが話していることを全然受け取ってくれず、自分の話したいことばかり話す人で、こちらからとにかく、相手の話題に合わせ続けていかなければいけない相手です。」
「そうですね。淑恵さんの頭の中に何があるか、そんなことお構いなしに、どんどん自分のペースで話す人。そういう人といると疲れるわけです。」
「でも、つき合ってしまうのは、そういうタイプの人が多いんです。前の彼とは趣味が同じだったので、趣味の話をしているときは心地よく話せたかな、と思うんですが、そういうのはダメなんですか?」

「ええと、少し整理しましょう。まず、淑恵さんにとって、どんな人が心地いいのか、という話と、相手の男性にとって、淑恵さんとの会話は心地いいのか、という話に分けましょう。」
「はい。」

「これ、このパターンではよくあるのですが、淑恵さんは相手のことを特になんとも思っていなかったり、あるいはむしろ面倒臭い人だと思っていたりするのに、相手から好かれてしまったり、相手が淑恵さんとの時間を心地よいと思ってしまう、ということが、結構あったのではありませんか?」
「はい。本当に、そういうことばかりです。」
「なるほど・・・やはりそうですよね。つまり、相手にとっては淑恵さんとの時間は心地よいものなんです。でもそれは淑恵さんの不快感という犠牲の上に成り立っているわけです。」
「私が不快に思っていることを、相手は分からないのでしょうか?」
「そう、そこがポイントです。基本、オレサマタイプの人は、分からないと考えた方がいいと思います。」
「そうなんですね。」
「そうなんです。自分の快・不快のみで行動しているわけです。」
「それで、社会でやっていけるのでしょうか?」
「微妙ですよね。確かに。だから、多くの女性からは白い目で見られたり、要注意人物扱いされて、距離を取られたりと、冷たいあしらいを受けているものなのです。」
「・・・はい。」
「そんな状況の中、淑恵さんのように、彼に合わせてくれる女性に出会ったら、どう感じると思いますか?『お前だけがオレのことを分かってくれる!素晴らしい女性だ!』って思うわけですよ。」
「実際それ、言われました。」
ドクターは数回深くうなずいてから静かに言った。「というわけなのです。」

(つづく)

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脱オレサマを目指す女子(9)|恋愛ドクターの遺産第8話

「では、淑恵さん、こんな感じで、淑恵さんの場合はどうだったか、振り返ってみて下さい。」
「ええと・・・あの・・・私の場合、どんな話をすればいいのか、どんな話をすれば先生やなつをさんのお眼鏡に適うのか、そんなことをすごく考えていました。先ほどのように表現するなら、気にしぃな部分が100%だったかもしれません。」

ドクターは黙って何度かうなずいた。
(これは、絶対、最初から予想してました、ってことだな)私なつをはそう思った。これまでも、先生は分かっていてもあえて本人に気づいてもらうために、こうやって軽くワークをやってみるようなことが何度かあった。今回もほぼ、当たりはついていたのだろう。

「淑恵さん。」椅子に深く座り直しながら、ドクターが言った。
「はい。」
「あなたの場合、目の前の人にとても意識を使っていますね。」
「そうですね。使いすぎですかね?」
「使いすぎかどうかは、時と場合によりますが、オレサマタイプの彼氏が寄ってきてしまう原因の一端は、この、相手に意識を使う、という意識の使い方にあると、私は考えています。」
「そうなんですか? 相手に気を遣うと、オレサマタイプが寄ってくる、ということですか?」
「まあ、単純化して言うとそういうことです。」

淑恵さんの顔を見ると、かなり意外だという顔をしている。それはそうだ。私なつをも、初めて先生からこの仮説を聞かされたときは、にわかには信じられなかった。ただ、その後、セッションの助手を務めるようになり、この原因推定が当てはまっているケースをたくさん見てきたので、今では、基本的なパターンの一つとして納得している。

「先生、おっしゃることは分かったんですが、まだちゃんとのみ込めていない気がするので、説明して頂けますか?」淑恵はそう言った。(やっぱりな)私なつをはそう思った。

「そうですね。説明が必要だと思います。まず、心地よい会話と、そうでない会話、ありますよね? 普通に会話しているときの話です。」
「はい。普通に話せる人もいますし、話しているとなんだか疲れる人もいます。」
「その違いって、何だか分かりますか?」
「えっ? 改めて言われると、考えたことなかったです。単に相性がいいとか悪いとか、そういうことかな、と思っていました。」
「そうですよね。普通はそんな風に解釈するものです。では、相性がいい・悪いは何で決まっていると思いますか?」
「えっ?そこまで考えたことは・・・」
「そうですよね。まあ今日は、淑恵さんをテストするわけではありませんから、これからお話ししますが、改めて考えてみると、心地よい会話が続く条件と、そうでない条件、意外と考えたことがないですよね?」
「そうですね。うまく相手に合わせて、相手が不快にならないように気をつけるぐらいで・・・」
「はい、そこです!実は今の中に、答えがあります!」ドクターは力強く言った。
「えっ?今の中に答えがある・・・相手に合わせる・・・ということですか?」
「そうです。但しそれは、相手にとって、心地よい条件です。」
淑恵はその言葉を聞いて、ぱあっと表情が明るくなった。「あ!先生!分かりました。相手も、私に合わせようとしてくれていると、心地よい会話になるのだと思います!」
「はい。かなりいい線行きました。それで90点ぐらいです。もうちょっと説明しましょうかね。」
「はい、お願いします。」

(つづく)

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