第六幕 ゆり子の変化
ゆり子はノートを閉じた。
「はぁ・・・ダンナがオレサマなのは、私が引き寄せているのかなぁ・・・。」
何だか今回はノートを読んでいて疲れた。今まで、色々あったけれどノートを開けばそこに救いがあった。でも、今回は救われたというより、内面を変えなければいけないという、恋愛ドクターの教えをずっと突き付けられていたように感じていた。そして、読み終えた今、その緊張感からか、疲れがどっと出たのだ。
今からでも、自分を変えたらダンナとの関係は変わるのだろうか。
それとも、出会いの段階ですでに道を間違えてしまっているので、今から関係を変えるのは無理なのだろうか。
そのようなことを考えるだけでも頭がいっぱいになって、余計疲れてきた。
「今日はもうよそう・・・」ゆり子は考えるのを止めた。恋愛ドクターの遺産ノートを読むようになってから、ぐるぐる思考を切り上げることだけは早くなった、と思う。
その翌日、また例の面々と、一緒にランチをすることになった。
結菜は相変わらず、オレサマなダンナに気疲れする毎日を過ごしているらしい。例によって香澄は「そんなのキッパリ言ってやんなよ、『もうアンタのメシは作りたくない』って。」などと言っている。順子は静観している。
そんな、今まで通りの光景の中で、ゆり子の中で変化が起きていることに気づいた。
自分の外側で起きている出来事と、そのときに、自分の内側で起きている出来事を、同時に観察できるようになったことだ。
たとえば、こんな感じだ。
香澄の先ほどの言葉に、結菜が不安げな表情を浮かべ、黙り込んでしまった。
こんなことが起きた時、「あーあ、また香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ。まあ、正論ではあるんだけど。」と今までは考えていた。今も考えているのだけれど、違うところは、そう考えているんだなぁ、と自分を観察するもうひとつの目が、同時に持てるようになったこと。
まとめると、こんな感じだ。
(かつて)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。
(今)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。→あ、自分って、そういう事考えているな、と自分の考えにも気づいた。
さらに、自分の考えだけじゃなくて、感情にその場で気づく力も上がったように思えた。先ほどの例に続けて書くと、
(かつて)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。→なんかもやもやする気持ちがあったが、その場では明確に自覚できず、家に帰ってからも、もやもやし続けていた。
(今)結菜が不安げな表情になった→「香澄、ズバッと言い過ぎちゃったよ」と考えた。→あ、自分て、そういう事考えているな、と気づいた。→香澄に同情してちょっと悲しくなった。同時に、自分もオレサマ的なダンナとの関係を整理できないでいることを、間接的に責められているような気がして、気が重く(罪悪感かな)なってきた。→そして、そういう感情が湧いてきたことを、その場で自覚している!!!
結論の出る話ではないので、その日のランチはその後、話があっちに行ったり、こっちに行ったりしつつ終了した。ゆり子はその時間の中で、自分自身の変化を確かに感じているのだった。
娘のさくらをお迎えに行って、今日もいつものルーティーンをこなし、夜一人になってから、ふとゆり子は考えた。
「恋愛ドクターの遺産って、漢方薬のように、じわじわと考え方や気づき力などを変えていくノートなのかもしれない。」と。
(第8話おわり 第9話につづく)
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