・・・さらに次の日・・・
「恋愛を一旦休む、という話になりましたが、それでいいですか?」ドクターが訊いてきた。
「はい。それが今の私に必要なことかな、と思います。」
「彼・・・コウジさんとは別れるということですね?」
「・・・そうですね。」
「同棲を解消する、ということですね?」相変わらずドクターは、まだ私が答えていないことを「すでに知っていて」、それを前提として質問をしてくる。
「・・・そうですよね・・・でも・・・」
「でも、すぐに解消するのは、色々段取りがあって大変ですよね。」
「そう、そうなんですよ。」
「本当は、もうほとんど、気持ちは決まっていて、彼とは別れるし、同棲も解消したい、そう思っているんですよね?」
「・・・はい。」
「ただ、どうしても・・・・ということなのですよね?」
細部は音声としてはよく聞こえなかった。ただ、私には先生が何を言ったのか、明確に分かっていた。つまり、先生はこんなことを言ったのだ。「ただ、どうしても、引っ越したり、自分の側の段取りが色々あるので、それまで今の家に居させてほしい・・・大体、2、3か月ぐらいかな? その頃には完全に同棲を解消するけれど、一緒に住むのはしばらくお願いする、という形で、彼に甘えさせてほしい、ということなのですよね?」
もちろん私は、よく聞こえなかったが、先生が何を言ったのか、それは完璧に分かっていた。そう、完璧に、分かっていたのだ。分からないはずがない。当然、分かるのだ。
そして、流れのほとんど感じられない時間の中で、私も返答をした。
「そういうことです。」
「なるほど、すると、何か良心がとがめるということでしょうか。」また、私の気持ちを先取りして、ドクターは質問を投げてきた。
「はい。そういうことです。」
「彼にあなたの意図を伝えましたか?」
「いいえ。言いづらくて。」
「これから、伝えますか?」
「・・・あの。」
「伝えますか?」
「・・・ええと。」
「伝えますかっ!」最後は一昨日と同じような大音声で問い詰められた。
ここで暗転した。何も見えない。何も聞こえない。ただ、心臓の鼓動だけを感じている。ドクターの最後の詰問は厳しかった。まだドキドキしている。胸が押しつぶされるかと思った。
ふと見ると、また、先ほどのシーンに戻っている。
「ただ、どうしても・・・・ということなのですよね?」
よく聞こえなかったが、先生が何を言ったのか、それは完璧に分かっていた。そう、完璧に、分かっていたのだ。分からないはずがない。当然、分かるのだ。
そして、私も返答をした。
「そういうことです。」
「なるほど、すると、何か良心がとがめるということでしょうか。」また、私の気持ちを先取りして、ドクターは質問を投げてきた。
「はい。そういうことです。」
「彼にあなたの意図を伝えましたか?」
「いいえ。言いづらくて。」
「これから、伝えますか?」
「・・・あの。」
「伝えますか?」
「・・・ええと。」
「伝えますかっ!」また大音声で問い詰められた。
また同じ詰問を受けた。まだドキドキする。
ここでまた暗転して・・・このシーンは二度と戻ってこなかった。そしてここで、記憶が途切れている。
(つづく)
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