「では、彼の中の『感情を大切にして決める』という個性ですが、これをユミコさんが自分の中に根付かせるための行動課題を最後に決めましょう。」
「はい、お願いします。」
「いくつかやり方があるのですが、一番シンプルなのは、彼がどんな風に考えていたか、それを見習うという方式ですね。」
「見習う・・・と言いますと・・・?」
「ユミコさんが、彼と出会う前に使っていた思考パターンと、彼がよく使う思考パターンは、もちろん、違っているわけです。彼がよく使っている思考パターンを、必要に応じて呼び出せると、問題は一番スッキリ解決するんですが。」
「呼び出す・・・ですか・・・?」
「たとえば、彼がよく使っているひとりごとなんてありますか?」
「感情を大切にして決めるときに、ということですよね?」
「もちろんそうです。」
「あ、そう言えば彼はよく『そのまんまでいいんだよ。』って言ってました。『まん〜ま』にアクセントがあって『そのまん〜までいいんだよ。』という感じで。」
「『そのまん〜〜〜〜までいいんだよ』ですか!」ドクターはわざと「まんま」の「ん」をかなり長く伸ばして発音した。その言い方が面白くて、カウンセリングルームは笑いに包まれた。
「だから、これを利用して、何か判断に迷ったりしたときには『そのまん〜まで決めてみようかな』とか『そのまん〜まの自分だったら、どっちを選ぶかな?』とか、そんな風に使ってみて、彼が使っていた考え方を、自分の中に取り込んでみましょう。
「はい、これならできそうな気がします。」
「そして、こうして、彼に期待してきた要素を、自分の中にしっかり根付かせていく取り組みが進んで、気持ちの上で自信が付いてきたら、きっと、ああもう離れても大丈夫かな、と踏ん切りが付くと思いますよ。」
「はい、そうなりたいです。」
「では、今日はここまでとしたいと思います。ありがとうございました。」
「先生、ありがとうございました。」
第六幕
ゆり子はノートを閉じた。
今回のノートは、夢の中の話が展開していて、なんとも言えない不思議世界だった。ゆり子自身もいま夢から醒めたような気持ちがしていた。
「夢の中のセッションで問題が解決していくことがあるのかぁ・・・心の底には、本当はどうしたいのか、その気持ちが始めからあるのかもしれないなぁ・・・」ゆり子はつぶやいた。
そして、理想人間と感情人間の話。ゆり子夫婦は、明らかに夫が理想人間で感情を軽視する傾向、ゆり子が感情人間で、夫の堅苦しい価値観の話などが苦手なタイプだ。
「相手に期待していた要素を自分に根付かせる・・・夫の堅苦しい価値観・・・そんな風に一面的な見方をしてはいけない、とドクターに注意されそうだが・・・を自分に根付かせる・・・」なんだか、あまり乗り気のしない方針だと思えた。
「覚悟を決めるといっても、どっちに向かって覚悟を決めるのか、そこが定まらないと、決めようがないのかもしれない・・・」ゆり子は、自分自身に、何かを決めるときの軸がないことを、改めて痛感していた。
(第七話 おわり)
(つづく)
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